確率論の基礎

新版

確率論において輝かしい業績を残した著者が初めて書いた教科書が甦る! 初学者におくる教科書の決定版.

確率論の基礎
著者 伊藤 清
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 数学
刊行日 2004/05/26
ISBN 9784000051941
Cコード 3041
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 150頁
在庫 品切れ
本書は,60年前に著者がコルモゴロフの起こした新しい確率論および確率過程論の基礎を体系的に紹介することを目的として書いた教科書である.予備知識がなくても理解できるように配慮がなされている.新版にあたって現代かな遣いとし,さらに歴史的な歩みを述べた解説も付して学習の手引きとした.すべての確率論を学ぶ人に向けた入門書である.


■著者からのメッセージ
 このたび、たまたま機会があって、60年前に著した『確率論の基礎』が、漢字や仮名遣いを現代表記に改めた新版として、同じ岩波書店から刊行されることになった。この分野におけるその後の大きい発展を知る数学者の一人として、また、その発展の一端を担ったことを自負する者として、このような旧著が如何なる意味を持ち得るかは、はなはだ心許ないところである。
しかし、いわゆる戦中戦後の出版事情を反映した装丁の旧版を座右にして確率解析を学び、その後の発展を共に担った方々から、新版発刊の提案をいただき、このたびの機会を得たことは、著者として稀有の幸せと考えざるを得ない。(中略)装い新たな本書が、近年のより広範な関心に応え、何がしか資するところがあれば望外の喜びである。


■編集部からのメッセージ
 著者の伊藤清先生の業績についてはあらためて言うまでもないと思います。「伊藤の公式」として知られる確率微分方程式の公式は、数学のみならず、物理や経済・統計をはじめおよそ時系列データを扱う世界では必須のものですし、それ以外の先生のお仕事に対する評価もますます国内外で高まるばかりです。
  本書の旧版は、1944年11月15日に刊行されました。まさに戦火の下での出版です。この年がどんな時代であったかと言いますと、この年の7月、岩波書店は非常時対策委員会を設け、店員や家族の疎開のほか、出版の命とも言える用紙紙型の疎開などさまざまな非常時対策を決めました。また10月には用紙不足(割り当てなし)をおもな理由に『思想』が休刊となり、さらに暮れにかけては、『法学』『文学』『科学』などがやはり休刊となりました。
 そのような時代に、本書のような新しい学問の息吹を伝える出版がなされたわけです。あらためて伊藤先生への感謝と、またそれを実現させた社の先輩諸氏への敬意のことばを述べたいと思います。こんどの新版にあたっては、どういう背景のなかで、本書が書かれたかという詳細な解説を池田信行先生にご執筆いただきました。重ねて感謝します。


◆お詫びと訂正
 本書の旧版である伊藤清著『確率論の基礎』(1944年刊)において,第3刷(1949年発行)以降の奥付に記載された第1刷発行日に間違いがあることがわかりました。お詫びして以下のように訂正いたします。

 (誤)昭和11年4月14日 第1刷発行
 (正)昭和19年11月15日 第1刷発行
第1章 確率論における基本概念
 1  確率空間の定義
 2  確率空間の実際的意味
 3  確率分布の簡単な性質
 4  事象,条件,推定
 5  確率変数の定義
 6  確率変数の結合,確率変数の函数
 7  確率変数列の収斂
 8  条件付確率,相関関係,独立
 9  平均値
第2章 実確率変数およびその確率法則
 10  実確率変数による表現
 11  R確率分布の表現
 12  R確率分布の距離
 13  R確率分布の集合の位相的性質
 14  R確率分布の特性量
 15  独立な確率変数の和,R確率分布の重畳
 16  特性函数
 17  R確率分布とその特性函数との位相的関係
第3章 確率空間の構成
 18  確率空間構成の必要
 19  拡張定理1
 20  拡張定理2
 21  マルコフ連鎖
第4章 大数の法則
 22  大数の法則の数学的表現
 23  ベルヌイの意味の大数の法則
 24  中心極限定理
 25  大数の強法則
 26  無規則性の意味
 27  無規則性の証明
 28  統計的分布
 29  重複対数の法則,エルゴード定理について
第5章 確率変数列
 30  一般的なこと
 31  条件付確率法則
 32  単純マルコフ過程と遷移確率系
 33  エルゴードの問題の簡単な例
 34  エルゴード定理
第6章 確率過程
 35  確率過程の定義
 36  マルコフ過程
 37  時間的にも空間的にも一様なマルコフ過程(I)
 38  時間的にも空間的にも一様なマルコフ過程(II)
 39  一般のマルコフ過程,定常確率過程

 付録1 記号
 付録2 文献
 付録3 表記について
 【解説】概要と背景(池田信行)
伊藤 清(いとう きよし)
1915年三重県北勢町生まれ。1938年東京大学理学部数学科卒。内閣統計局をへて、 1943年から52年まで、名古屋帝国大学理学部助教授。1952年から79年まで、京都大学教授。その間、プリンストン高等研究所研究員、コーネル大学教授、京都大学数理解析研究所所長を歴任。現在、京都大学名誉教授。朝日賞、ウルフ賞など受賞。著書に、『確率論』(岩波書店刊)ほか多数。
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