科学者の本棚 『鉄腕アトム』から『ユークリッド原論』まで


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編集部だより
編集部からのメッセージ

 自身の人生においてもっとも心に残っている本,研究への道を拓くきっかけとなった本,後世に残したい,あるいは後輩に伝えたい本のことを書いてください――63人の科学者,あるいは科学に深いかかわりのある方々にこのようなお願いをして,できたのがこの本です.雑誌『科学』の連載,その名も「心にのこる一冊」.故・戸塚洋二氏が大場秀章氏とともに植物を語るという,異色の特別対談も収録しています.
 標題の『鉄腕アトム』など少年・少女時代に読みふけった本から,青年期の学びを支えた『力学』や『理工系物理学』といった教科書,専門書,新書,SF,はたまた宮沢賢治や『鼻行類』,そして,人生を通して礎となる『ユークリッド原論』のような古典まで,愛着をもって語られる書物は本当にさまざまです.
 特筆すべきは,理系の研究者に対して一般に抱かれる(であろう)イメージとは裏腹に,じつに人間くさく,また胸に響くいい話が多いということ.一冊の本が,文字通り人生を変えるほどの威力をもって,科学者の生きかたに影響をあたえていることに,驚かれる方もきっと多いのではないでしょうか.たった一冊の本が,決定的に進路を変えもするし,霧が晴れるような発想の大転換をもたらしもする.あるいは,まったく歯がたたない本との悪戦苦闘は,科学者たちにこれ以上ない,学ぶことへの鍛錬の機会を与えもする…….
 さらに,随所で描かれる著者との邂逅や,本を契機とした他の科学者とのめぐりあいの経緯などは,それ自体,貴重な時代の証言でもあります.本への,あるいは本をめぐる人々への思慕が,思わず愛おしくなるような言葉で紡がれる.宝物のような一冊です.


目 次

1 夢――すべてのはじまりはここに
手塚治虫著『鉄腕アトム』郡司隆男柴山雄三郎著『驚異の科学』阿部龍蔵L.M.オルコット著『若草物語』戸恵美子G.ガモフ著『1,2,3,…無限大』廣田勇小松左京著『果しなき流れの果に』福江純

2 学ぶ――この一冊に育てられ
M.Born 著『ATOMIC PHYSICS』佐藤文隆鐸木康孝著『理工系物理学』天羽優子G.Nelson & N.Platnick 著『Systematics and Biogeography』三中信宏伊福部昭著『管弦楽法』伊東乾L.D.ランダウ,E.M.リフシッツ著『力学』小磯晴代E.マッハ著『マッハ力学』横山順一R.C.Tolman 著『The Principles of Statistical Mechanics』樺島祥介

3 転機――出会ってしまったばかりに
中尾佐助著『栽培植物と農耕の起源』山本紀夫G.バシュラール著『科学的精神の形成』金森修澤瀉久敬著『「自分で考える」ということ』植木雅俊A.クラインマン著『病いの語り』柘植あづみ廣重徹著『近代科学再考』瀬戸口明久平山諦著『和算の歴史』鳴海風バナール著『歴史における科学』竹内敬人東京国立文化財研究所光学研究班著『光学的方法による古美術品の研究』三浦定俊A.Koyré 著『Études Galiléennes』伊東俊太郎

4 縁――めぐりあわせの妙
宮沢賢治著『鹿踊りのはじまり』大貫昌子K.Aki (安芸敬一),P.G.Richards 著『地震学』蓬田清片山正夫著『分子熱力学総論』大野公一鈴木尚著『化石サルから人間まで』奈良貴史宇井純著『公害の政治学』原田正純R.エイブラハム,Y.ウエダ編著『カオスはこうして発見された』西村和雄高木貞治著『解析概論』川合眞紀岩波 生物学辞典(第一版)古谷雅樹大塚弥之助著『日本の地質構造』杉村新N.マイアース著『沈みゆく箱舟』長谷川博

  特別対談 大場秀章著『植物学のたのしみ』 戸塚洋二×大場秀章

5 衝撃――目眩がするほどに
C.ターンブル著『ブリンジ・ヌガグ』篠田謙一オカザキ ツネタロー著『コンチュー700シュ』藤田恒夫R.ドーキンス著『神は妄想である』三浦俊彦織田正吉著『絢爛たる暗号』団まりなC.シェーファー,E.フィールダー著『シティ・サファリ』浜口哲一S.ゼキ著『脳は美をいかに感じるか』大隅典子G.ベイトソン著『精神の生態学』池上高志T.Winograd & F.Flores 著『Understanding Computers and Cognition』玉井哲雄松本元著『愛は脳を活性化する』霜田光一Philip Morrisonほか著『Powers of Ten』徳田雄洋H.シュテンプケ著『鼻行類』今泉みね子

6 敬慕――先達をあおぎみる
高木仁三郎著『市民科学者として生きる』小野有五湯浅年子著『パリ随想』山崎美和恵神田左京著『ホタル』矢島稔H.ヴァイル著『シンメトリー』伊藤由佳理P.レヴィ著『一確率論研究者の回想』舟木直久米沢富美子著『猿橋勝子という生き方』高薮縁森毅著『数の現象学』瀬山士郎武谷三男著『戦争と科学』吉村功E.キュリー著『キュリー夫人伝』石井志保子Shun-Ichi Amari (甘利俊一)著『Differential-Geometrical Methods in Statistics』江口真透上原六四郎著『俗樂旋律考』徳丸吉彦C.ダーウィン著『ミミズと土』新妻昭夫朝永振一郎著『日記・書簡(新装版)「滞独日記」』佐々木閑

7 礎――いくつになっても読み返す
C.ダーウィン著『種の起原』八杉貞雄プラトン著『パイドン』納富信留C.Linnaeus 著『Species Plantarum』大場秀章D.O.ウッドベリー著『パロマーの巨人望遠鏡』黒田武彦渡辺格著『人間の終焉』島次郎寺田寅彦著『寺田寅彦全集』高橋裕E.フッサール著『現象学の理念』竹田青嗣ユークリッド著『ユークリッド原論』砂田利一




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