「科学にすがるな!」宇宙と死をめぐる特別授業

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編集部だより
「科学にすがるな!」宇宙と死をめぐる特別授業


■ 編集部からのメッセージ

 「宇宙研究の最前線を切り拓いてこられた先生が,「死ぬ意味,生まれてきた意味」についてどうお考えになっているのか,お話をお聞きしたいと思い,このようなお手紙を差し上げました」――このたたかいは,著者である艸場氏から佐藤氏へのこの一通の手紙からはじまりました.
 「物理では人間はわからない,宇宙に死の答えを求めるな,死の意味を自分に問うな」と,自身の科学論や学問論で答える宇宙物理学者に対して「それでも死をどう考えるかを聞きたい」と食い下がり,質問し続ける女性.3・11をはさんで約1年間,この厳しい苦闘は続きました.
 さて,どこまで行っても平行線のような二人の議論.その先に何が見えるでしょう.ご期待ください.


■ 本文からの抜粋

©佐藤文隆
 「さて,あなたは『死』をどう考えればよいかと思った.そして,宇宙を考えている人は,ふつうの人が測り知れないようなことを語るかもしれないと思って,ぼくの所にやってきた」
 たぶん,そうだ.
 「しかし,ぼくは原子力にあこがれて大学に入った」
 学問の出発点が原子力へのあこがれだったことを,いままでと変わらず淡々と口にした.
 「原子力は,当時の野心ある若者を『これこそが志すべきものだ』と惹きつけた,人類のフロンティアを開拓する夢の科学だったのです.ぼくの場合は,それが宇宙にスライドしていった.宇宙に関する新しい発見がつぎつぎ展開して,それはワクワクして面白かったからね.この時代は物質とか素粒子の研究が進んで,相対性理論との関係でぼくも夢中になった.宇宙そのものを探求したかったわけじゃないし,あまつさえロマンを感じたわけじゃない」
 前もそう聞きました.
 「そういう道を経てきたぼくと,あなたが遠くからぼくを見て期待していたこととのギャップが,一種の学問論だな.学問は何のためにあるのか,というね」
 学問論……? いきなり出てきた言葉に当惑したが,先生はかまわず続けた.
 「まずは,あなたが知りたがっていることを片づけよう」


■ 著者略歴

佐藤文隆(さとう ふみたか)
1938年山形県生まれ.1960年京都大学理学部卒業.
現在,甲南大学教授,京都大学名誉教授.
専攻は,理論物理学,一般相対論.
著書に『職業としての科学』『宇宙論への招待』(岩波新書),『宇宙物理への道』『アインシュタインが考えたこと』(岩波ジュニア新書),『夏はなぜ暑いのか』『雲はなぜ落ちてこないのか』『火星の夕焼けはなぜ青い』(岩波書店),『物理学の世紀』(集英社新書),『破られた対称性』(PHPサイエンス・ワールド新書),『アインシュタインの反乱と量子コンピュータ』(京都大学学術出版会),『量子力学は世界を記述できるか』(青土社)ほか多数.

艸場よしみ(くさば よしみ)
1958年京都市生まれ.1982年京都府立大学文学部卒業.
現在,フリー編集者.
著書に「おしごと図鑑シリーズ」(フレーベル館),『映画カントクは中学生!』(汐文社),『お産婆さんの智恵で安らぎのお産を』(学陽書房),編著書に「地球を救う仕事 全6巻」(汐文社)ほか.


■ 目次

プロローグ

第一章 死は科学で解明できるのか?

第二章 宇宙と人間の関係は?

第三章 私たちはどこから来たのか?

第四章 私たちは世界をどう見ているのか?

第五章 死の永遠性は物理の時間で解けるのか?

第六章 宇宙のはじまりの解明と科学の役割

第七章 学ぶ意味,生きる意味

エピローグ




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