ゲームとしての確率とファイナンス

「賭けゲーム」の考察から大数法則,Black--Scholes公式など確率論や金融工学における諸法則を導き出す.

ゲームとしての確率とファイナンス
著者 G.シェイファー , V.ウォフク , 竹内 啓 , 公文 雅之
ジャンル 書籍 > 自然科学書
書籍 > 自然科学書 > 数学
刊行日 2006/07/28
ISBN 9784000053211
Cコード 3041
体裁 A5 ・ 上製 ・ 450頁
在庫 品切れ
確率論の基礎付に必須の測度論を用いずに,コインの裏表当てをはじめとしたさまざまな「賭けゲーム」の考察から,大数法則,Black--Scholes公式など,確率論や金融工学の諸定理を導く.本書の考え方は基礎から応用まで有意義な発展の可能性を秘めている.確率論の起源とも言える賭けの数理に新たな展開を見出した画期的一冊.

■編集部からのメッセージ

2001年に刊行された『Probability and Finance 』(Wiley Inter-science)の日本語抄訳です.確率の数学的考察の始まりは,フランスの数学者,Blaise PascalとPierre de Fermatの間で交わされた1654年夏の往復書簡による「賭けゲーム」についての考察にまで溯るといわれます.しかし確率の概念が公理体系として満足のいくかたちで基礎づけられるまでにはその後300年近くかかりました.Kolmogorov は1933年に出版されたその著書『確率論の基礎概念』において,測度の概念を用いて,6つの公理系で確率を基礎づけることに成功しました.その後数学的確率論に測度論は必須のものとして今日にいたっています.本書はその測度論を用いずに,「ゲーム」の考察から,確率論の大数法則や,ファイナンスにおけるBlack-Scholes公式などの諸定理を導きます.いわば確率の起源に立ち戻ろうという試みです.といっても決して昔に戻るというだけではありません.ゲーム論を基にすることで不自然な前提が必要となくなるなどの利点があるだけでなく,基礎的分野では確率の概念の意味づけ,応用面では金融工学の実務などまで,有意義な発展の可能性を秘めています.まさに温故知新の1冊といえます.

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編集部からのメッセージ冒頭の「Probability and Finance」は斜字
訳者はしがき
著者あいさつ――日本語版へ寄せて
序文


第1章 序論:ゲームとしての確率とファイナンス
 

1.1 世の中とのゲーム
1.2 確率ゲームに対する規約
1.3 基本解釈仮説
1.4 確率のさまざまな解釈
1.5 ファイナンスにおけるゲーム論的確率

第 I 部 測度なしの確率


第2章 歴史的脈絡におけるゲーム論的枠組
 

2.1 KOLMOGOROV以前の確率
2.2 KOLMOGOROVの測度論的枠組
2.3 実現ランダム性
2.4 マルチンゲールとは何か?
2.5 賭けシステムの不可能性
2.6 新主観主義
2.7 結  論


第3章 有界な大数の強法則
 

3.1 公正なコインゲーム
3.2 有界な変数の予測
3.3 誰が価格を設定するか?
3.4 非対称で有界な予測ゲーム
3.5 付録:戦略の計算


第4章 KOLMOGOROVの大数の強法則
 

4.1 KOLMOGOLOVの強法則の2つの主要部分
4.2 SKEPTICの戦略
4.3 REALITYの戦略
4.4 非有界な上予測規約
4.5 マルチンゲールの強法則
4.6 付録:MARTINの定理


第5章 弱法則
 

5.1 BERNOULLIの定理
5.2 DE MOIVREの定理
5.3 片側中心極限定理
5.4 付録:GAUSS分布
5.5 付録:確率的放物型ポテンシャル論


第6章 LINDEBERGの定理
 

6.1 LINDEBERGの規約
6.2 定理の主要部分と証明
6.3 定理の諸例
6.4 付録:古典的な中心極限定理


第7章 確率ゲームの一般性
 

7.1 測度論的極限定理の導出
7.2 コイン投げ
7.3 ゲーム論的価格および確率
7.4 開放的な科学規約
7.5 付録:VILLEの定理
7.6 付録:JEAN VILLEの小伝

第II部 確率なしのファイナンス


第8章 ファイナンスにおけるゲーム論的確率
 

8.1 株式市場価格の挙動
8.2 確率的BLACK-SCHOLES公式
8.3 純粋にゲーム論的BLACK-SCHOLES公式
8.4 情報効率性
8.5 付録:BLACK-SCHOLESモデルの微調整
8.6 付録:確率的理論について


第9章 離散時間でのオプション価格付けのゲーム
 

9.1 離散時間でのBACHELIER価格付け
9.2 離散時間でのBLACK-SCHOLES価格付け
9.3 Sに対する相対変動を用いたBLACK-SCHOLES


第10章 連続時間でのオプション価格付けのゲーム
 

10.1 変動スペクトル
10.2 連続時間でのBACHELIER価格付け
10.3 連続時間でのBLACK-SCHOLES価格付け
10.4 √dt 効果のゲーム論的起源


第11章 ゲーム論的価格付けの一般性
 

11.1 利子のあるBLACK-SCHOLES公式
11.2 BLACK-SCHOLESに対する改良商品
11.3 ジャンプのある価格過程に対するゲーム


第12章 アメリカ型オプションに対するゲーム
 

12.1 市場規約
12.2 金融商品の比較
12.3 価格の弱および強概念
12.4 アメリカ型オプションの価格付け


第13章 拡散過程に対するゲーム
 

13.1 ゲーム論的拡散過程
13.2 伊藤の補題
13.3 付録:関連する確率的理論


第14章 ゲーム論的効率市場仮説
 

14.1 証券市場に対する大数の強法則
14.2 証券市場に対する弱法則
14.3 リスク対リターン
14.4 効率市場仮説の他の形式


参考文献
G. シェイファー(Glenn Shafer)
ラトガース大学経営学大学院教授
V. ウォフク(Vladimir Vovk)
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェー計算機学科教授竹内 啓(たけうち けい)
東京大学名誉教授
公文 雅之(くもん まさゆき)
統計数理研究所プロジェクト研究員

書評情報

数学セミナー 2007年6月号
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