深海,もうひとつの宇宙

しんかい6500が見た生命誕生の現場

有人潜水艦による世界一周航海の一一カ月間.血湧き肉躍る冒険と驚異の発見の数々.写真多数,カラーあり.

深海,もうひとつの宇宙
著者 北里 洋
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 宇宙・地球
刊行日 2014/12/12
ISBN 9784000054690
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 190頁
在庫 品切れ
地球に残された最後のフロンティアで,「アトランティス大陸」の発見者は何を感じた? 有人潜水艦の世界一周航海で目にしたのはホネクイハナムシや巨大ヨコエビだけじゃない.世界各地の研究者とともにした,一一カ月間の血湧き肉躍る冒険と驚異の発見の数々.海底地形図や写真(カラーあり)を見ながら臨場感たっぷりに語る.


■編集部からのメッセージ
 「『しんかい6500』,伝説のアトランティス大陸の痕跡を発見か?」
 2013年5月上旬,メディアを騒がせたニュースを覚えていますか.本書の著者は,この「アトランティス大陸の痕跡」の発見者です.
 (独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)は研究の一環として,2013年に潜水調査船「しんかい6500」による1年がかりの研究航海を行いました.太平洋,インド洋,大西洋(カリブ海)の生態系の,地球的規模の調査・研究です.深海には400℃を超える熱水,メタン・硫化水素を含む湧水,1万mを超える超深海海溝域などの極限的な世界が広がり,それぞれの場所に適応して特殊な機能をもつ「常識はずれ」の生物が生息しています.初期生命の特徴を残したものもおり,深海生物の研究によって生命進化史をたどることが期待されています.「アトランティス大陸の痕跡の発見」は,科学的には,アフリカ大陸と南米大陸が1億年前に分裂したときの「大陸のかけら」かもしれない花崗岩の発見でした.
 本書では,横須賀港を出港した2013年1月5日から11月30日までの,血湧き肉躍る冒険と数々の発見を,そのときの興奮とともに,地図や豊富な写真を見ながら臨場感たっぷりに追います.なぜこのプロジェクトを思いたち,そこにはどんな思いがあったのでしょうか.この大航海の実現に至るまでの,諸外国の研究者との熱い議論や交渉の裏話,船内や寄港地での心温まる異文化交流のエピソードなどもユーモラスに語ります.
 深海は地球に残された最後のフロンティア,もうひとつの宇宙です.6500mの深海に潜航したことで感じた地球と生命の息吹,新たに見えてきた地球観・生命観,将来の研究への希望を,貴重なカラー写真とともにお届けします.
はじめに――奇跡から必然へ


Ⅰ 出発からインド洋中央海嶺まで
1 旅立ちまで
大勢に見送られての船出/地球の大きさを感じたい/日本の海洋調査観測/技術を世界に/2010年10月@ロンドン/そうだ,南半球の深海に行こう――ブラジル・ニュージーランドの研究者との熱い一夜/ドリーム・カム・トゥルー‼ しかし金の切れ目が縁の切れ目?
コラム1 「しんかい6500」を研究に使うには?
2 インド洋の極限環境生物
インド洋中央海嶺の熱水活動域/生命の起源は深海熱水環境にあるのか?/カイレイツノナシオハラエビとスケーリーフット/スケーリーフット空輸作戦


Ⅱ ブラジル沖航海
3 大洋を分ける岬――喜望峰とケープタウン
大洋を分けるもの/喜望峰/ケープタウン
4 南大西洋に潜航する――ブラジル沖航海調査
ケープタウン出航まで/金比羅/1時間半の自己紹介/サプライズ/南大西洋の歴史と特徴/リオグランデ海膨八景/サンパウロ海嶺遠望/潜航しなければわからない
5 鯨骨生物群集とホネクイハナムシ――サンパウロ海嶺
地球深部の岩石が崖をつくる?/サンパウロ海嶺に潜航する/第3の化学合成生態系/鯨骨生物群集発見!/4000メートルの水深を超える伝言ゲーム/クジラの頭骨化石発見!
6 「アトランティス大陸発見⁉」――リオグランデ海膨
リオグランデ海膨にもどる/首席研究員はオーケストラがお好き/夜明けの密談/「深海サンゴ」の森/ポックマークにうなぎにょろにょろ⁉/アトランティス大陸⁉
7 リオデジャネイロ入港――ダーウィンのビーグル号体験とブラジルの研究者に学ぶ
さあ,リオだ!/リオで待っていたもの/記者会見,そしてアトランティス騒ぎ/リオデジャネイロのダーウィン/ブラジルの研究者たち/航海を組み立てる
8 メタン湧水に群がる生物を夢見て――サンパウロ海台調査
メタン湧水を探そう/スペシャリスト集団/なぜか「ベタ凪」/新しいハビタットの発見⁉/グランドフィナーレ@サントス・サンパウロ・ブラジリア
コラム2 深海生物研究ことはじめ


Ⅲ カリブ海・トンガ海溝・ケルマディック海溝航海
9 世界最深の熱水活動――カリブ海,ケイマン海膨
カリブ海とはどのようなところか/カリブ海の熱水生物群集はなにが面白いのか?/「しんかい6500」潜航同時中継
10 オハラエビ――赤外線センサーをもつハイテクエビと熱水生物地理
オハラエビ/カリブ海のオハラエビはどこのオハラエビと近縁か?/東太平洋との類似性は? 研究の進展は?
コラム3 真の深海生物研究ことはじめ
11 古代生物の隠れ家?――世界で1番深いマリアナ海溝チャレンジャー海淵
太平洋にもどる/太平洋の地形/マリアナ海溝チャレンジャー海淵/なぜ海溝を研究するのか?/チャレンジャー海淵でわかっていること/チャレンジャー海淵で生物活性を実測する/超深海は古代生物の隠れ家?/いざ,トンガ海溝へ
12 トンガという国と深海資源
トンガとは/在トンガ日本大使/トンガ海溝調査/トンガの海/トンガ海溝はどうしてこんなに深いのか/ランダーによる観測/ホライゾン海淵の地形調査/二つのランダーは何を見てきたか?/採ったぞーっ‼/トンガ海溝の成因に迫る/ヌクアロファでの一般公開
13 新しくできた海山と熱水生態系――ケルマディック海溝に沈み込む海山群
海溝を分けるルイビル海山列/海山の生態系/ケルマディック海溝付近の海山をどう攻めるか?/天候との戦い/海山生態系とEBSAs/ニュージーランドの海洋生物資源保護/オークランドでの一般公開/「よこすか / しんかい6500」帰国
コラム4 日本の深海研究


Ⅳ エピローグ
14 深海の多様な生物たちは何を語ってくれたか
4万キロの航海で見えてきたもの/同一環境には同じ機能をもった生物が/距離の離れた同一環境にまったく同じ種はいない/地球の歴史が生物の分布に関係する/景観としての生息場所/深海生物生態系は壊れやすいのか?――EBSAs 再び
15 改めて,日本の海と生物を見直す
活動的な縁辺海域であること/日本近海はよく調査されている/景観としての日本の海と生物
16 血沸き肉躍る冒険的な航海が必要だ!――フルデプス有人潜水船で世界を先導する
「しんかい6500」世界一周航海を引っ張ったもの/「しんかい6500」から「フルデプス有人潜水船」へ/ハイテク時代でも五感は大事だ/「フルデプス有人潜水船」


おわりに
北里 洋(きたざと ひろし)
1948年東京都生まれ.1976年東北大学大学院理学研究科博士課程修了.静岡大学理学部助手, 助教授,教授,(独)海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 領域長を経て,現在,同機構東日本海洋生態系変動解析プロジェクトチームプロジェクト長.専門は地質学,地球生命科学,深海生物学,海洋微古生物学.2010年日本古生物学会賞(横山賞)受賞.著書に『日本の海はなぜ豊かなのか』(岩波書店),共編著書に『地球の進化・生命の進化』(裳華房),『古生物の総説・分類』(朝倉書店),『地球生物学』(東京大学出版会),『古生物学事典(第2版)』(朝倉書店)などがある.

書評情報

としょかん通信〔中高校生版〕 2015年7月号付録
聖教新聞 2015年2月18日
読売新聞(夕刊) 2015年2月16日
公明新聞 2015年2月16日
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