想像するちから チンパンジーが教えてくれた人間の心


著者からのメッセージ
著者紹介
目次
本書で紹介した画像と動画
参考文献
緑の回廊プロジェクト


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編集部だより



著者からのメッセージ

人間とは何か.それをずっと考えながら,日本で,アフリカで,チンパンジーと寄り添うようにして研究を続けてきた.彼らには人間の言語のようなことばはない.けれども,彼らなりの心があり,ある意味で人間以上に深いきずながある.
人間の体が進化の産物であるのと同様に,その心も進化の産物だ.人間にもっとも近い進化の隣人を深く知ることで,人間の心のどういう部分が特別なのかが照らしだされ,教育や親子関係や社会の進化的な起源が見えてくる.
この本では,チンパンジーの研究を通してたどりついた「人間とは何か」の答えをお話ししよう.
チンパンジーの親子(撮影:落合知美)

この本の印税は,野生チンパンジーの保全活動「緑の回廊プロジェクト」に全額寄付されます.プロジェクトの紹介がにあります.


著者紹介

松沢哲郎(まつざわ てつろう)
1950年生まれ.1974年,京都大学文学部哲学科卒業,理学博士.現在,京都大学霊長類研究所教授・所長,国際高等研究所学術参与,中部学院大学客員教授.
1978年から「アイ・プロジェクト」とよばれるチンパンジーの心の研究を始め,1986年からは毎年アフリカに行き,野生チンパンジーの生態調査もおこなう.2000年からは,アイと息子のアユムをはじめ三組の母子を対象にして,知識や技術の世代間伝播の研究に取り組む.こうしたチンパンジーの研究を通じて人間の心や行動の進化的起源を探り,「比較認知科学」とよばれる新しい研究領域を開拓してきた.日本学術会議会員.紫綬褒章などを受章.
著書に『進化の隣人 ヒトとチンパンジー』『チンパンジーの心』『チンパンジーはちんぱんじん』(岩波書店),『チンパンジーから見た世界』(東京大学出版会),『おかあさんになったアイ』『アイとアユム』(講談社),編著書に『人間とは何か』『心の進化』(岩波書店),『チンパンジーの認知と行動の発達』(京都大学学術出版会)などがある.

推定年齢53歳のおばあさんチンパンジー(撮影:大橋岳)


目次

プロローグ――心,ことば,きずな
第一章 心の歴史学
第二章 生活史――人間は共に育てる
第三章 親子――人間は微笑み,見つめ合う
第四章 社会性――人間は役割分担する
第五章 道具――認識の深さ
第六章 教育と学習――人間は教え,認める
第七章 ことばと記憶――トレードオフ
第八章 想像するちから――絶望するのも,希望をもつのも,人間だから
長めのエピローグ――進化の隣人に寄り添って
あとがき



大人が石を使って種を割るのを見ている子ども(撮影:野上悦子)


本文で紹介した画像と動画

「ストループ効果」の実験課題.下の図を見て,「それぞれの字が何色で書かれているか」を順番に言う.速く正確に答えるのはとても難しい(p.167).



「チンパンジーの子どもの記憶は人間のおとなよりも優れている」(京都大学霊長類研究所のウェブページ).アユム(5歳半)がコンピューターの画面に出た9個の数字の位置を瞬時に記憶して,順番に触っていく(p.171).



参考文献

本文で紹介した研究の学術論文リスト(PDFファイル:193KB)です.



アフリカ・ギニアのボッソウに暮らす野生チンパンジーの保全活動です.著者の松沢さんが代表をつとめています.
ボッソウのチンパンジーの群れは13人(2011年1月現在).松沢さんが観察を始めて以来25年間,よそで生まれた女性チンパンジーが群れに入ってきていません.そのため群れの血が濃くなっていると考えられます.
ボッソウの東側には,サバンナをはさんで,300人規模(推定)のチンパンジーの群れが暮らすニンバ山があります.「緑の回廊プロジェクト」は,ボッソウとニンバ山を隔てているサバンナに植林して二つの生息地をつなぎ,チンパンジー・コミュニティが交流できるようにすることを目的にしています.
プロジェクトは,地元の人々と協力し,日本政府,ギニア政府,ギニアの日本大使館の援助を受けて,植林を進めています.幅300メートル,長さ4キロメートルにわたって木を植える計画です.
もっと詳しく知りたい方は,プロジェクトのウェブサイトをごらんください.


チンパンジー・アイの描いた絵(提供:松沢哲郎)




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