物理のためのベクトルとテンソル


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編集部だより
訳者からのメッセージ

 本書は,「ベクトル」と「テンソル」の入門書です.ベクトルは高校生のときに学ぶ数学の1つで,直観的にもわかりやすい概念です.そのため,本来の理工系の用途に限らず,たとえば「みんなの考え方のベクトルは同じだね」といった日常会話に使われるくらいポピュラーな用語になっています.
 でも,テンソルはそうではありません.なぜでしょう? 理由は簡単で,テンソルは難しいからです.理工系の大学生はさまざまな分野でテンソルを学びますが,定義が天下り的で難解だったり,見慣れない添字が付いた複雑な計算が続いたりして,うんざりします.そして,テンソルの理解は生半可のまま,ただ難しさだけが記憶に残ります.そのため,「テンソルは便利な道具だ!」 というレベルになるまで勉強するのは,とても無理だという気持ちになった人もたくさんいるはずです.
 本書は,そのような人たちの気持ちを完全に裏切る,みごとな本です.テンソルが本当に「わかって,使える」ように,図や例題を豊富に用いてテンソルの概念と計算法をビジュアルに説明しています.そして,力学,電磁気学,一般相対性理論などから選ばれた典型的な問題を詳細に解きながら,より高度なベクトルの使い方やテンソルの計算法が学べるよう,きめ細やかに工夫されています.
 本書を読み終えてから,以前読んだことのあるテンソルの本を開いて見てください.きっと,その頃は難解だと思っていたテンソル演算や数式の意味がビビッドにわかるようになっている自分に驚くでしょう.あるいは,アインシュタインの重力場方程式の美しさを鑑賞できるようになっている自分に気づくかもしれません.
 原題の A Student's Guide to Vectors and Tensors が示唆するように,本書はベクトルとテンソルを学ぼうとする人々を,基礎のレベルから応用のレベルまで安心して導いてくれる名ガイドです.
――「訳者のことば」より


著訳者紹介

ダニエル・フライシュ(Daniel Fleisch)
オハイオ州ウィッテンバーグ大学の物理学准教授.専門は電磁気学,宇宙物理学.前著 A Student's Guide to Maxwell's Equations(Cambridge University Press)はベストセラーとなり,日本語,中国語,韓国語に翻訳されている.アメリカ物理学会(APS),アメリカ物理教育学会(AAPT),米国電気電子学会(IEEE)などのメンバー.

《訳者》河辺哲次(かわべ てつじ)
九州大学大学院教授.
1949年福岡市生まれ.72年東北大学工学部原子核工学科卒,77年九州大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士).その後,高エネルギー物理学研究所(現・高エネルギー加速器研究機構),九州芸術工科大学を経て,03年より現職.この間,文部省在外研究員としてコペンハーゲン大学のニールスボーア研究所(デンマーク)に留学.専門は素粒子論,場の理論におけるカオス現象,および非線形振動・波動現象.著書に『スタンダード 力学』『ベーシック 電磁気学』『工科系のための 解析力学』(以上,裳華房).訳書に『マクスウェル方程式――電磁気学がわかる4つの法則(岩波書店)


目 次

訳者のことば
まえがき
謝辞
1 ベクトル
1.1 定義(基礎)
1.2 デカルト座標の単位ベクトル
1.3 ベクトルの成分
1.4 ベクトルの加法およびベクトルとスカラーとの乗法
1.5 非デカルト座標の単位ベクトル
1.6 基底ベクトル
演習問題
2 ベクトル演算
2.1 スカラー積
2.2 ベクトル積
2.3 スカラー3重積
2.4 ベクトル3重積
2.5 偏微分
2.6 微分係数としてのベクトル
2.7 ナブラ
2.8 勾配
2.9 発散
2.10 回転
2.11 ラプラシアン
演習問題
3 ベクトルの応用
3.1 斜面に沿う運動
3.2 曲線運動
3.3 電場
3.4 磁場
演習問題
4 共変ベクトル成分と反変ベクトル成分
4.1 座標系の変換
4.2 基底ベクトルの変換
4.3 基底ベクトルの変換とベクトル成分の変換
4.4 非直交座標系
4.5 双対基底ベクトル
4.6 共変成分と反変成分の見つけ方
4.7 添字
4.8 反変的に変換する量
4.9 共変的に変換する量
演習問題
5 高いランクのテンソル
5.1 定義(上級)
5.2 共変,反変,混合テンソル
5.3 テンソル加法とテンソル減法
5.4 テンソルの乗法
5.5 計量テンソル
5.6 添字の上げの添字の下げ
5.7 テンソル微分とクリストッフェルの記号
5.8 共変微分
5.9 ベクトルと 1形式
演習問題
6 テンソルの応用
6.1 慣性テンソル
6.2 電磁場のテンソル
6.3 リーマン曲率テンソル

演習問題
演習問題の解答
さらに勉強する人へ
索引




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