増補新版 地底から宇宙をさぐる

ニュートリノ質量が発見されるまで

素粒子の観測,物質と宇宙の起源に迫る研究の面白さを紹介した戸塚氏の著書に,梶田氏の記事を収録.

増補新版 地底から宇宙をさぐる
著者 戸塚 洋二 , 梶田 隆章
ジャンル 書籍 > 単行本 > 物理学
書籍 > 自然科学書
刊行日 2016/02/17
ISBN 9784000062527
Cコード 0042
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 142頁
在庫 品切れ
岐阜県の山間,地下一〇〇〇メートル.カミオカンデ/スーパーカミオカンデの独創的なニュートリノ観測は,世界の理論物理学者を驚愕させ,二つのノーベル賞を生んだ.宇宙から飛来する見えない素粒子を観測する方法,物質と宇宙の起源に迫る研究の面白さを紹介した戸塚氏の著書に,梶田氏が自ら成果を解説した記事を収録.

■編集部からのメッセージ

 本書は,岩波科学ライブラリーの一冊として1995年に刊行した戸塚洋二氏の著書『地底から宇宙をさぐる』に,共同研究者であった梶田隆章氏がその後の研究成果を自ら解説した記事「ニュートリノ質量――スーパーカミオカンデの大気ニュートリノ観測から」(『科学』1998年3月号)を増補として収録し,新版としたものです.
 戸塚氏の著書は原書をそのまま再録し,梶田氏の記事はオリジナルの横組みから縦組みに改め,それにあわせて数字の表記法などを変更しました.いずれも,登場人物の肩書き,観測データ等はそれぞれ当時のままとしています.

■著者からのメッセージ

人類は,現代科学のおかげで宇宙の覇者のような顔をしているが,太陽エネルギーを自由にコントロールすることもできないし,超新星爆発を人工的に起こすこともできない.一立方センチメートルの重さが何億トンもある中性子星のかけらを人工的に作ることもできない.ましてや宇宙の運命を都合のよいように変えることなど,宇宙の運命自体をまだ知らないのだから,どだい無理な話である.
 宇宙にはまだまだ想像を絶するような神秘が存在するに違いない.基礎科学は,そのような神秘を発見し,解明し,いずれは人類に役立てようとするものである.
 基礎科学の研究者には,このような気宇壮大な目的意識があってもよいのではないか.
 本書は,気だけは大きな一研究者の研究活動をもとに,宇宙線研究の過去,現在,そして未来を記したものである.
――「あとがき」より

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(左・梶田隆章氏,右・戸塚洋二氏:1998年のニュートリノ国際会議にて)
プロローグ 神岡宇宙素粒子研究施設
1 宇宙線の発見
2 高エネルギー物理学と宇宙線
3 ニュートリノとは何か?
4 太陽エネルギーの謎
5 カミオカンデ誕生物語
6 ニュートリノをとらえた!
7 スーパーカミオカンデに向けて
あとがき
増補 ニュートリノの質量――スーパーカミオカンデの大気ニュートリノ観測から
戸塚洋二(とつか ようじ)
1942年生まれ.東京大学理学部物理学科卒業.同大学院理学系研究科博士課程修了(理学博士).東京大学理学部教授を経て,東京大学宇宙線研究所長,同研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設長,高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所教授,同機構長など.1987年仁科記念賞,2004年文化勲章ほか.2008年死去.著書に『現代物理学叢書, 素粒子物理』(岩波書店),『戸塚教授の「科学入門」――E=mc2 は美しい!』(講談社),『陽子はこわれるか――大統一理論の予言』(丸善)など.
梶田隆章(かじた たかあき)
1959年生まれ.東京大学宇宙線研究所長.埼玉大学理学部卒業後,東京大学大学院理学系研究科に進学.小柴昌俊の研究室に所属し,戸塚洋二らとカミオカンデ,スーパーカミオカンデの観測に参加.アーサー・B・マクドナルドとともに2015年ノーベル物理学賞を受賞.1999年仁科記念賞,2010年第1回戸塚洋二賞,2015年文化勲章ほか.著書に『ニュートリノで探る宇宙と素粒子』(平凡社)など.
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