完治

HIVに勝利した二人のベルリン患者の物語

たった二人の症例とそれに触発された治療法の進展を描く.科学の背後にある患者と医師と研究者の物語.

完治
著者 ナターリア・ホルト , 矢野 真千子
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 生命・医学
刊行日 2015/02/26
ISBN 9784000063203
Cコード 0047
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 318頁
在庫 品切れ
ベルリン患者とよばれる二人の男性が,HIVに感染したのち,それぞれに異なる実験的な治療を受けて,実質的に完治した.二人の感染から完治にいたる経緯と,その症例からどのように突破口が開かれ,新たな治療法につながる研究が進展してきたかを描くドキュメンタリー.科学の背後で,患者は,医者は,研究者は,どんな物語を生きているのか.

著者近影(©Photo by Steph Stevens)

■本文より
 治療をやめて数か月たってもクリスティアンの体からウイルスが検出されないことをイェッセンがリスィーヴィッツに伝えると,リスィーヴィッツは最初,その言葉を信じなかった.何かの間違いだろうと思った.そんなことはないとイェッセンから何度も電話で言われ,彼女はついに自らドイツに赴いた.イェッセンのデータを見たときもまだ懐疑的だった.すぐには信じられなかった.
 それから,こわごわと,彼女は口に出して言った.「どうやら私たち,この患者のHIVを根絶させたみたいね」.(第19章より)

■原書

 Cured: How the Berlin patients defeated HIV and forever changed medical science.
 By Nathalia Holt. Dutton, 2014.2.
 まえがき
 登場人物・年表

■第一部 医者,患者,検査
 第1章 はじまりは,ある家庭医の恋
 第2章 ベルリン患者その1,家庭医を訪ねる
 第3章 ベルリン患者その2,死の宣告を受ける

■第二部 病気,薬,産業
 第4章 レトロウイルスが引き起こす病
 第5章 抗癌剤の研究から生まれた薬
 第6章 薬をめぐる抗議行動
 第7章 免疫系の仕組みを探る
 第8章 失望の中の希望――複数の薬を組み合わせる
 第9章 具合が悪くないのに薬は出せない――早期治療の壁
 第10章 HIVに感染しない人々がいる
 第11章 HIVに感染してもエイズを発症しない人々がいる
 第12章 人目を避けて実験的な治療をする

■第三部 治療
 第13章 HIVだけでなく白血病まで――二つ目の診断
 第14章 抗癌剤ヒドロキシウレアの適応外使用
 第15章 シナリオになかった「治療中断」
 第16章 救いになるのは支えてくれる人の存在
 第17章 決断のとき――薬をやめる
 第18章 二度目の幹細胞移植
 第19章 ウイルスが消えたことを数値で示す――論文採用
 第20章 幹細胞移植は成功したけれど――論文不採用

■第四部 完治
 第21章 再現のできない臨床試験
 第22章 原理は証明された
 第23章 名声を得た者が受ける仕打ち
 第24章 実用性とは別次元の話なのか?
 第25章 ベルリン患者から学んだことを応用する
 第26章 リザーバー根絶への期待
 第27章 機能的完治へのいくつかの道筋
 第28章 科学の裏にある,それぞれの人生

 謝辞
 訳者あとがき
 原注
 索引
ナターリア・ホルト(Nathalia Holt)
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)生物学を専門とする研究者.HIV遺伝子治療の分野で重要な成果を挙げている.テュレーン大学,南カリフォルニア大学,マサチューセッツ総合病院‐MIT‐ハーヴァード大学ラゴン研究所で教育・トレーニングを受ける.米国ボストン在住.
http://nathaliaholt.com/

矢野真千子(やの まちこ)
翻訳家.F.S.コリンズ『遺伝子医療革命』,M.ウォールセン『バイオパンク』,C.ジンマー『大腸菌』,W.ムーア『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』,C.T.スコット『ES細胞の最前線』など多数の訳書がある.

書評情報

日経サイエンス 2015年7月号
文藝春秋 2015年6月号
公明新聞 2015年5月25日
潮 2015年5月号
HONZ 2015年3月26日掲載
HONZ 2015年3月14日掲載
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