モラル・トライブズ (上)

共存の道徳哲学へ

税制,福祉,中絶,死刑,同性婚,環境規制……何が正義かをめぐって社会は引き裂かれる.この対立を解決する方法はあるのか.

モラル・トライブズ (上)
著者 ジョシュア・グリーン , 竹田 円
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 人間・心理
日本十進分類 > 哲学/心理学/宗教
刊行日 2015/08/27
ISBN 9784000063210
Cコード 0011
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 332頁
定価 3,300円
在庫 在庫あり
税制,福祉,中絶,死刑,同性婚,環境規制……何が正義か,誰がどんな権利をもつかをめぐって社会は引き裂かれる.人々が自分は正しいと心の底から信じて争うとき,対立を解決する方法はあるのか.今こそ生物学,心理学,哲学,社会科学の知見を統合し,道徳とは何かを根本から理解しよう.そこから人類すべてが共有できる普遍的な道徳哲学が生まれる.


■原書評

ジョシュア・グリーンは希少な鳥のようだ.すばらしい科学者であり,また同じくらいすばらしい哲学者で,ふたつの学問のもっとも深い問題群に同時に挑んでいる.10年以上の歳月をかけた『モラル・トライブズ』は名著だ.独自性と洞察にあふれる画期的な著作で,しかも意地悪いほどに面白いときている.唯一がっかりさせられるのは,終わりがあるということだ.
――ダニエル・ギルバート(ハーバード大学・心理学)

10年前,鬼才ジョシュア・グリーンはみごとな研究上の発見をおこなって,道徳神経科学という分野が始まる後押しをした.同様にみごとなこの本で,グリーンはこの分野の第一級の統合者であることも証明した.個人がひとつの集団のなかで協力を始めるにはどうしたらよいか,という古典的な問題を解決することに関しては,かなりの進歩がこれまであった.グリーンはこれよりさらに大きな問題に取り組む.集団間の協力を促すにはどうしたらよいのか,という問題だ.どの集団も道徳や価値観を大切にしている.ただし,それぞれの道徳や価値観が違う.ますます多元化するこの世界にあって,解決することがこれ以上に重要な問題は他にあまりない.あざやかな書きぶりの本書はその方向へ向かう第一歩だ.
――ロバート・サポルスキー(スタンフォード大学・生物科学)

過去10年間にわたって,グリーンの革新的な研究は,人がどのように善悪を判断するのかについての理解を進めてくれた.こんどはこのすばらしく啓発的な本で,自身を含む多くの人の研究を援用し,道徳問題をめぐる人間どうしの違いについて,より包括的な情況を描いてみせてくれた.しかし本書の意義はそれにとどまらない.グリーンは,道徳に関して本来は深い分裂をかかえる人間どうしの協力の基盤となりうる,道徳の共通通貨を提案する.私たちの惑星が平和に栄える未来を手にするには,このような道徳の共通通貨が今すぐ必要だ.この本は多くの人に読まれ,議論されねばならない.
――ピーター・シンガー(プリンストン大学・生命倫理)

2500年もたってから,道徳の本質に関する純粋にあたらしい考えに出会うなど,めったにあることではない.しかし,ジョシュア・グリーンはこの本で,ひとつといわずいくつものあたらしい考えを提出している.グリーンは神経科学を哲学と結びつけた.彼はどちらの分野も素人ではなく専門家なのである.その統合のしかたは一番良い意味で学際的であり,深遠な現象を理解するのに使える概念的道具立てを総動員している.『モラル・トライブズ』は道徳と道徳感覚の理解にとって画期的な出来事だ.
――スティーヴン・ピンカー(ハーバード大学・心理学)


■原書

Joshua Greene. 2013. Moral Tribes: Emotion, Reason, and the Gap between Us and Them. The Penguin Press.
【上巻】

 序章 常識的道徳の悲劇

第一部 道徳の問題
 第1章 コモンズの悲劇
 第2章 道徳マシン
 第3章 あらたな牧草地の不和

第二部 速い道徳,遅い道徳
 第4章 トロッコ学
 第5章 効率性,柔軟性,二重過程脳

第三部 共通通貨
 第6章 すばらしいアイデア
 第7章 共通通貨を求めて
 第8章 共通通貨の発見

原注/索引

【下巻】

第四部 道徳の断罪
 第9章 警戒心を呼び覚ます行為
 第10章 正義と公正

第五部 道徳の解決
 第11章 深遠な実用主義
 第12章 オートフォーカスの道徳を超えて


  著者より/謝辞/解説(阿部修士)
  書誌/原注/索引
ジョシュア・グリーン(Joshua Greene)
ハーバード大学心理学科教授.1997年ハーバード大学哲学科卒業.2002年プリンストン大学より博士号(哲学)を取得.プリンストン大学「認知制御の神経科学」研究室の博士研究員,ハーバード大学心理学科助教,准教授を経て2014年より現職.

竹田 円(たけだ まどか)
翻訳家.東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了.専攻スラヴ文学.訳書に,ブルーム『ジャスト・ベイビー――赤ちゃんが教えてくれる善悪の起源』(NTT出版),アレン『ハーブの歴史』(原書房),エリオット『女の子脳 男の子脳――神経科学から見る子どもの育て方』(NHK出版)など.

書評情報

週刊朝日 2015年11月20日号
公明新聞 2015年11月2日
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