現代生物科学入門 10

極限環境生物学

地底,深海,極地そして宇宙.進化の鍵を握る「極限環境」研究の最前線を紹介する,ロマンあふれる入門書.

極限環境生物学
著者 浅島 誠 , 黒岩 常祥 , 小原 雄治
ジャンル 書籍 > 単行本 > 生物学
書籍 > 自然科学書
書籍 > シリーズ・講座・全集
シリーズ 現代生物科学入門
刊行日 2010/10/20
ISBN 9784000069700
Cコード 3345
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 236頁
在庫 品切れ
私たちの祖先は,煮えたぎる熱水の中にいた? 岩塩の中から,数億年前の生物が息を吹き返す? 南極の厚い氷に閉ざされた湖では,生物がまったく独自の進化を遂げている?――地底,深海,極地そして宇宙.進化研究の鍵を握る「極限環境」の神秘のベールがまさに今,剥がされようとしている.その最前線を紹介する,ロマンあふれる入門書.

■編者からのメッセージ

 地球上にはさまざまな生物が生息していると言われているが,本当に私たちは,多くの生物の存在を知っているだろうか.日ごろ目にする生物のほとんどは,温度,気圧,pH,湿度といった点において,いわゆる通常の環境に生息している.現在,700種あまりの多様な真核生物のゲノム解析が進み,完全解読された生物も30種ほどになったが,一般に,こうしてゲノムの解析や解読がなされたり,あるいは生物多様性などと言われたりする時は,この通常環境に生息する生物が対象であることが多い.
 しかしながら,1970年代,生物の系統に関わる3ドメイン説が提唱されてから後に構築された多くの分子系統樹は,原核生物も真核生物も,超高温の極限環境で誕生したことを強く示唆するようにみえる.生物はその後,通常環境へと適応していき,やがて地球上に形成された,いわゆる厳しい極限環境と言われる塩湖,砂漠,零下の氷山や氷河の下,1,000 mを越える地下,100気圧の深海,空気の希薄な高山などへも生活圏を広げたのではないだろうか.こうした生物進化のシナリオに関してはまだ調べ直す余地があるが,少なくとも今後,生物多様性を理解するには,極限環境に生息する生物のゲノム解析を含め,全地球上における生物について,ゲノム進化学を基盤に解明することが必要である.
 そこで本巻では,現在ますます注目されている極限環境生命圏の生命について,それらとその棲息環境との関連や,その背景にある地球誌を含めて解説される.これを機会に読者の皆様が,極限環境に生息する生命の特徴についてゲノム情報を基盤に理解し,また生物のもつ膨大な適応能力を理解して,それらを知識の拡大や各自の研究に利用していただければと思う.
――本書「序」より抜粋,一部変更
 序
1 生命進化における極限環境
 1 地球の歴史
 2 地球上の極限環境と耐性機構
 3 古細菌と生命史
 4 生物適応の進化史

2 地下生物圏の自然誌
 1 はじめに
 2 地下生物圏の広がりとなりたち
 3 地下生物圏におけるエネルギー代謝
 4 地下生物圏の生息場所(ハビタット)の多様性
 5 まとめ

3 深海環境生物圏
 1 深海環境とは
 2 深海環境に棲息する微生物の生態
 3 極限環境適応機構
 4 メタゲノム解析――環境をまるごと理解する――
 5 深海環境生物圏研究の展望

4 極域生物圏の自然誌
 1 はじめに
 2 極域の環境ストレスとそれに対する適応・応答
 3 周氷河域と露岩域
 4 氷河・氷床域
 5 極域生物学の展望――まとめにかえて――

5 宇宙環境生物学
 1 はじめに:宇宙環境の特徴
 2 微小重力の動物への影響
 3 微小重力の植物への影響
 4 宇宙放射線の生物への効果
 5 微生物の宇宙での移動の可能性:パンスペルミア仮説
 6 地球外生命存在の可能性:アストロバイオロジー
黒岩常祥(くろいわ つねよし/序)
 立教大学理学研究科特任教授,極限生命情報研究センター長
 専門は,生物科学
山岸明彦(やまぎし あきひこ/第1章,第5章)
 東京薬科大学生命科学部教授
 専門は,極限環境微生物学,分子進化学
長沼 毅(ながぬま たけし/第2章,第4章)
 広島大学大学院生物圏科学研究科准教授
 専門は,生物海洋学,微生物生態学
見英人(たかみ ひでと/第3章)
 (独) 海洋研究開発機構上席研究員,麻布大学客員教授
 専門は,ゲノム科学,環境微生物学
馬場昭次(ばば しょうじ/第5章)
 お茶の水女子大学名誉教授
 専門は,動物生理学
山下雅道(やました まさみち/第5章)
 JAXA・宇宙科学研究所教授
 専門は,宇宙生物科学,宇宙農業
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