岩波科学ライブラリー 131

科学の社会化シンドローム

論文ねつ造,データ改ざん,研究費の不正運用が世間を騒がす.科学は社会からの要請にどう応えるべきか!?

科学の社会化シンドローム
著者 石黒 武彦
ジャンル 書籍 > 単行本
書籍 > 自然科学書
書籍 > シリーズ・講座・全集
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 科学全般
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2007/05/09
ISBN 9784000074711
Cコード 0336
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 126頁
在庫 品切れ
ES細胞ねつ造が,韓国の社会をゆるがした.国内でも国立大学や一流研究所における論文ねつ造・データ改ざんの疑惑,研究費の不正運用が,世間を騒がせ科学システムを脅かす.社会からの要請を前に,病的症状を現しているかに見える科学は,今後どのようにあるべきか.研究の第一線にあった著者が,問題の根源から考察する.

■編集部からのメッセージ

テレビ番組での「納豆によるダイエット効果に関するデータねつ造」の問題は,相変わらず糸をひいていますね.ねつ造といえば,韓国の黄(ファン)教授によるヒトクローン胚からのES細胞ねつ造事件が記憶に新しいところです.日本でも,東京大学や大阪大学,理化学研究所などにおいて,論文ねつ造・データ改ざんの疑惑,早稲田大学教授による研究費の不正運用が,テレビや新聞・雑誌で大きく報じられました.ほかにもさまざまな問題について,社会から多くの批判が寄せられています.その克服のためには,科学システムの内部から問題を見据え,対策を練ることが必要です.
 科学が社会の「干渉」を受け,「囚われ」の状態に陥りつつあるようにもみえる――著者はこれを「科学の社会化シンドローム」と呼んで,考察を進めます.綿密な調査を通して得た知見を軸に,具体的なエピソードを交えながら扱うのは,科学がなぜ「社会化」されなくてはならなかったか,ミスコンダクトはなぜ起こるのか,ピアレビューの構造と問題,社会の支持を得るための課題,研究者のキャリアにおける問題などです.物性物理研究の第一線にあった著者だからこそ書き得た,初の科学コミュニティ内発,問題提起の書です.
 本書は,いままさに問題解決を模索している研究者・技術者が将来を展望するのに格好の材料となるでしょう.未来の研究者・技術者必読の書ですが,同時に一般の人たちが,本書を通して科学および科学者の世界を理解してくださることを切望します.
 なお本書は,大好評の連載(『科学』2006年8月号から2007年2月号まで)に加筆してまとめ直したものです.
序 科学の「社会化シンドローム」
――成長した科学が向き合う問題群
1 ミスコンダクト
――科学システムを蝕むガン
2 ピアレビュー
――科学論文の品質保証システム
3 STSとアウトリーチ
――科学と社会の新しい関係の構築
4 科学をめぐる競争性と不確実性
――科学の知財化とフロンティア
5 人材需給と研究環境
――若手のキャリア問題と大学の変容
6 科学の向かうところ
――社会化シンドロームを超えて
あとがき

石黒武彦(いしぐろ たけひこ)
 1938年大阪府生まれ.1961年京都大学工学部卒業,1966年京都大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程単位取得退学.工業技術院電子技術総合研究所電子物理研究室長・基礎部長,京都大学大学院理学研究科教授,パリ南大学固体物理学研究所・ソウル国立大学・立命館大学客員教授などを経て,現在,京都大学名誉教授,同志社大学ヒューマン・セキュリティ研究センター専任フェロー.
 著書に『科学技術の行方』(萌書房),『Organic Superconductors』(Springer,共著),『超低温の物性物理』(培風館,共著)などがある.『岩波理化学辞典 第5版』編集委員.

書評情報

化学 Vol.62 No.8(2007年8月)
産経新聞(朝刊) 2007年7月16日
毎日新聞(朝刊) 2007年7月4日
しんぶん赤旗 2007年6月24日

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