岩波科学ライブラリー 135

伝説の算数教科書〈緑表紙〉

塩野直道の考えたこと

カラーで絵本かと思えるほどの戦前の算数教科書.なぜこんな教科書ができたのか.今日の算数教育を問う.(カラー8頁)

伝説の算数教科書〈緑表紙〉
著者 松宮 哲夫
ジャンル 書籍 > 単行本
書籍 > 自然科学書
書籍 > シリーズ・講座・全集
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 数学
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2007/09/05
ISBN 9784000074759
Cコード 0341
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 124頁
在庫 品切れ
オールカラーで絵本と見間違えるほどの算数教科書.造本にもまして,算数は単に計算の習熟のためだけにあるのでなく,数の概念や演算がどのように生まれてくるかを日常生活と結びつけて理解できるように工夫した画期的な内容.こんな教科書が戦前にあった.編纂にあたった塩野直道の思いと併せ,教科書や算数のあり方を問う.(カラー8頁)

■編集部からのメッセージ

先月の「これから出る本」でもご紹介しましたが,戦前にこんな算数教科書があったのかとだれもが思われる教科書,それが〈緑表紙〉です.
  ある意味では,現在のカラフルな教科書に見慣れてしまっていると,その感動はぴんとこないかもしれませんが,当時(昭和の始め)使われていた教科書はモノクロどころか,ほとんど今で言う「計算ドリル」ではないかという内容です.つまり,算数は単に計算に慣れるためにあるのだといわんばかりの内容でした.
 そこに,いや計算を覚えるだけでなく,そもそも数の考え方はなぜ必要なのかということを,子どもたちが理解するにはどうしたらよいのかを徹底的に考えて作られたのが〈緑表紙〉でした.計算になれる前に,算数や数学を勉強する必要性を子どもたちに自発的に考えさせ,そして「数」の考えが自然に生まれ出てくるのだということを発見させる「風景」を巻頭ページに載せるという工夫をしたのです.そこには余計な説明文は何もありません.
 そうした算数教科書がどうやって出来たのか,当時の数学教育をめぐる論争と絡めて描いたのが本書です.編纂に関わった塩野直道の貢献が大ですが,塩野の生き方についても詳述しました.今日の数学教科書,数学教育に関心のある方にも,ぜひご購入いただければと思います.
1 黒表紙から緑表紙へ
  転換期の時代小景/緑表紙本の衝撃

2 塩野直道は何を思ったのか
  なぜ新編纂を思い至ったか/辞表を覚悟の提案/塩野の生きかた/人柄と回想

3 数理思想と小倉金之助
  小倉が考えた数学教育/時代はどう受けとめていたのか/欧米の改革運動の様子/理想と現実/小倉以外の考え方

4 緑表紙が吹かせた風
  緑表紙本の実際/挿図の魅力/問題の実際と解説/さまざまな反響

5 算数教育のこころ
  戦後どう生かされたのか/指導要領の変遷/未来に向けて
松宮哲夫(まつみや てつお)
1933年生まれ.大阪学芸大学学芸学部中学課程数学科卒.大阪教育大付属中教諭を経て,大阪教育大学大学教授に就任.現在は,大阪教育大学名誉教授.中高の教科書執筆ほか,編著書に『総合学習の実践と展開』ほか.

書評情報

読売新聞(朝刊) 2008年1月26日

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