本書は「リジッド幾何学(rigid geometry)」あるいは「リジッド解析幾何学(rigid analytic geometry)」と呼ばれている比較的新しい数論幾何学の一分野への入門書である.リジッド幾何学は,少なくともその草創期においては複素解析幾何学の非Archimedes 的類似として,つまりp-進数体などの非 Archimedes 的付値体上の解析幾何学の構築を目指して創始された学問である.
複素解析幾何学が複素数体上の代数幾何学に豊かな応用を持つように,今日ではリジッド幾何学は p-進数体などの非 Archimedes 的局所体上の代数幾何学や,数論幾何学全般における様々な分野の問題に効果的に応用されるに至っている.いわば数論幾何学への〈解析的アプローチ〉を可能にするという点にリジッド幾何学の数論幾何学や代数幾何学における立ち位置の重要性があり,今後もその重要性はますます増すことになるだろうと予想される.(中略) 本書は〈入門書〉として,数論幾何学や代数幾何学の初学者や,これらの分野に興味を持つ他分野の研究者にとっても〈読みやすいもの〉であることを目指した.本書を読むに当たって読者に要求される予備知識は Atiyah- Macdonald の本程度の可換環論と Hartshorne の本程度のスキーム論である.ただし,後者についてはこれを既に読了していることが要求されているわけではない.
――本書「まえがき」より |