岩波 世界の美術 第2期
レンブラント
深い人間洞察に基づく作品の魅力を,最新の研究を踏まえ,17世紀オランダの社会のなかで明らかにする.
著者 | マリエット・ヴェステルマン 著 , 高橋 達史 訳 |
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ジャンル | 書籍 > 単行本 > 芸術 |
シリーズ | 岩波 世界の美術 > 岩波 世界の美術 第2期 |
刊行日 | 2005/03/25 |
ISBN | 9784000089821 |
Cコード | 0371 |
体裁 | B5変 ・ 並製 ・ 352頁 |
在庫 | 品切れ |
団体肖像画の大作《夜警》をはじめ,家族や友人の親密な肖像画,風俗画,聖書や古典古代に取材した物語画,さらにはおびただしい数の自画像など,いずれも深い人間洞察にもとづくレンブラント芸術を,最新の研究を踏まえ,17世紀オランダの社会のなかに位置づけ,そのつきせぬ魅力を浮き彫りにする.
-
写真以前の時代で,レンブラントほどよく顔を知られている人間はいない.こちらをじっと見つめる,ときにはくっきりとし,ときには潤んだ灰褐色の丸い目,ときとして優雅なこともあるがいつもは膨らんで見える先の反り返った鼻,言葉を発しているかのように開いていることもあれば断固として閉じられていることもある湿った薄い唇,整えられたときですらもじゃもじゃで才気を感じさせる豊かな巻き毛…….
(中略)
精密な色彩と巧みな構図で描かれたレンブラントの自画像は,異様なほど直接的な画家との対峙を鑑賞者に強要する.「眼は魂の窓」と当時の人々は評したが,実際レンブラントの顔や黒い目は,深い思索にひたる男の内面を覗き込んでいるかのような印象をわれわれに与えてくれる.レンブラントと対面していると,3世紀半の歳月がわれわれを隔てていることが理不尽に感じられる.たくましい想像力とその実現を可能にした技巧の産物であるこの一見身近な印象こそ,抗いがたいレンブラントの魅力であり,それは当時も今も変わらない.……
(「序 レンブラントの顔」より)
-
《眉をしかめた自画像》
1630年
《議論する2人の老人〈使徒ペテロとパウロ?〉》
1628年
メルボルン
国立ヴィクトリア美術館
《洗礼者ヨハネの説教》
1634年頃
ベルリン
国立絵画館
《ヨアン・デイマン博士の解剖学講義》
1656年
アムステルダム
歴史博物館
《(予定された額縁の中の)
ヨアン・デイマン博士の解剖学講義》
1656年頃
アムステルダム
歴史博物館
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写真以前の時代で,レンブラントほどよく顔を知られている人間はいない.こちらをじっと見つめる,ときにはくっきりとし,ときには潤んだ灰褐色の丸い目,ときとして優雅なこともあるがいつもは膨らんで見える先の反り返った鼻,言葉を発しているかのように開いていることもあれば断固として閉じられていることもある湿った薄い唇,整えられたときですらもじゃもじゃで才気を感じさせる豊かな巻き毛…….
(中略)
精密な色彩と巧みな構図で描かれたレンブラントの自画像は,異様なほど直接的な画家との対峙を鑑賞者に強要する.「眼は魂の窓」と当時の人々は評したが,実際レンブラントの顔や黒い目は,深い思索にひたる男の内面を覗き込んでいるかのような印象をわれわれに与えてくれる.レンブラントと対面していると,3世紀半の歳月がわれわれを隔てていることが理不尽に感じられる.たくましい想像力とその実現を可能にした技巧の産物であるこの一見身近な印象こそ,抗いがたいレンブラントの魅力であり,それは当時も今も変わらない.……
(「序 レンブラントの顔」より)
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《眉をしかめた自画像》
1630年
《議論する2人の老人〈使徒ペテロとパウロ?〉》
1628年
メルボルン
国立ヴィクトリア美術館
《洗礼者ヨハネの説教》
1634年頃
ベルリン
国立絵画館
《ヨアン・デイマン博士の解剖学講義》
1656年
アムステルダム
歴史博物館
《(予定された額縁の中の)
ヨアン・デイマン博士の解剖学講義》
1656年頃
アムステルダム
歴史博物館
序 レンブラントの顔
1 画家への道 レイデン時代 1620-1631年
2 都会の名士たち アムステルダム時代初期の肖像画 1631-1639年
3 「過去」の再創造 アムステルダム時代初期の物語画 1631-1639年
4 イリュージョンと演出 家族,友人,そして《夜警》
5 名人技の内面化 美術通のための芸術 1642-1654年
6 事業としての美術制作 レンブラントの工房と美術収集
7 事業の破綻 経済難,そして芸術的自立
8 版画芸術の革新 エッチング作家としてのレンブラント
9 時流に抗して 最後の10年 1660-1669年
結び レンブラントと芸術の意義
1 画家への道 レイデン時代 1620-1631年
2 都会の名士たち アムステルダム時代初期の肖像画 1631-1639年
3 「過去」の再創造 アムステルダム時代初期の物語画 1631-1639年
4 イリュージョンと演出 家族,友人,そして《夜警》
5 名人技の内面化 美術通のための芸術 1642-1654年
6 事業としての美術制作 レンブラントの工房と美術収集
7 事業の破綻 経済難,そして芸術的自立
8 版画芸術の革新 エッチング作家としてのレンブラント
9 時流に抗して 最後の10年 1660-1669年
結び レンブラントと芸術の意義