患者と医療者のための カルテ開示Q&A

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編集部だより
「カルテは見せられません」
と言われると,患者は,
「どうして.何かうしろめたいことでもあるんだろうか」
と思ってしまいます.
「カルテを見せてください」
と言われた医療者は,
「何に使うんだろう.あら探しでもするつもりだろうか」
と思ってしまうようです.
 しかし,実際にカルテを手にした患者からは,
「医師や看護師たちが精いっぱいやってくれていることがよく分かったし,インフォームド・コンセントやセカンド・オピニオンにとても役立った」
と,信頼や感謝の気持ちを深める声が聞かれています.
 また,積極的に患者へのカルテ開示の実践を始めた医療機関はどこも,
「心配していたことはすべて杞憂だった.カルテ開示にはメリットはいくつもあったが,デメリットは一つもなかった」
と言い切ります.
 10年ほど前には,ほとんど不可能だったカルテ開示が,ようやく今では当たり前のことになりました. しかし,鎖国が解かれた直後のように,一時的な不安や混乱も生じています.
「たとえ本人からの請求でも,病名によってはカルテは開示できません」
「本人には告知していませんが,家族の方にご説明させていただきます」
「本人が同意した家族には開示しますが,遺族の方には開示できません」
「カルテは誰のものなのか」という問いかけが,「医療は誰のものなのか」という問題となってクローズアップされている現在は,まさに,医療界が大きく変革する過渡期だとも言えます.
 このブックレットでは,現状におけるカルテ開示の請求方法や,最新のカルテ開示状況の整理・解説にとどまらず,カルテ開示を求めてきた市民運動の歴史を振り返り,これまでの成果とこれからの課題を明らかにすることをも目指しました.
 患者と医療者が,共同作業として最善の診療をすすめるために,そしてあらゆる医療問題の解決を目指し,ともに考えていくために,「カルテ開示」は欠かすことのできない第一歩なのです.

【本書「はじめに」より】


著者プロフィール
勝村 久司(かつむらひさし)
1961年生まれ.京都教育大学卒業.高校理科教諭.90年に陣痛促進剤被害で長女を失い,医療裁判や市民運動に取り組む.「医療情報の公開・開示を求める市民の会」事務局長.枚方市医療事故防止審議会委員.著書に,長女の医療裁判が逆転勝訴し,10年目の命日に被告病院の職員研修で話をするまでを綴った『ぼくの星の王子さまへ』(メディアワークス),編著書に『レセプト開示で不正医療を見破ろう!』(小学館文庫)などがある.現在,隔月刊『いのちジャーナル』(さいろ社)に「偽善の研究」,季刊『患者のための医療』(篠原出版新社)に「キーワードの逆説」を連載中.
ホームページアドレス: http://homepage1.nifty.com/hkr/


目次
            −はじめに−

【カルテ開示の意味】
Q1 カルテ開示はなぜ必要なのですか
【現実】基礎知識と経緯・現状を知るためのQ&A
Q2 そもそもカルテとは何ですか
Q3 カルテは何年間保管されているのですか
Q4 カルテとレセプトはどう違うのですか
Q5 どのような人がカルテ開示を求めてきたのですか
Q6 開示の是非論はどのように変化してきましたか
Q7 カルテ開示はどれくらい進んでいるのですか

【方法】患者が自分の診療記録を見るためのQ&A
Q8 開示の請求方法は病院によって違うのですか
Q9 ガイドラインにはどのようなものがありますか
Q10 自治体の条例に基づいて開示請求できますか
Q11 開示請求する際には理由を書く必要がありますか
Q12 開示請求にはお金がかかりますか
Q13 医療過誤の疑いが強いときはどうすべきですか
Q14 開示請求が拒否された場合の対処法は?

【論点】医療関係者の不安を解消するためのQ&A
Q15 告知することで患者は不安になりませんか
Q16 開示で医療現場がますます忙しくなりませんか
Q17 開示によって信頼関係が損なわれないでしょうか
Q18 遺族にも開示を認めると医療裁判が増えませんか
Q19 法律で強制するよりも自主性に任せるべきでは

【今後】健全な医療と信頼関係を築くためのQ&A
Q20 理想的な開示の方法はどのようなものでしょうか
Q21 改竄を防ぐためにはどうすればよいでしょうか
Q22 電子カルテの普及による影響はありますか
Q23 今後国の議論はどのように進むでしょうか

             −あとがき−

主な参考文献
(資料1)カルテ開示に関する主なガイドラインの抜粋
(資料2)カルテ開示問題に取り組む主な市民団体一覧


編集部からのメッセージ
 1998年,厚生省の検討会が,患者の求めに応じて医療機関がカルテを開示することを義務づける法律の制定を提言したにもかかわらず,翌99年,日本医師会の強い反対で法制化は見送られました.あれから3年.いま再び厚生労働省でカルテ開示の法制化に関する検討会が設けられ,議論が進められています.
 そもそも国民医療費が増大する一方で,薬害・医療被害は繰り返され,医療への不信・不安が高まり続けています.そんな中,ようやく医療の世界でも,情報公開の必要性が叫ばれ始め,カルテ開示の問題も,広く議論されるようになってきました.
 筆者の勝村氏は,90年に,陣痛促進剤による事故で,生まれて間もない長女を亡くされ,それをきっかけにレセプト開示・カルテ開示の運動を一市民の立場から粘り強く展開されてきました.レセプト開示に関しては,97年に一応は実現されましたが,本当の意味での医療における情報公開は,カルテ開示の法制化が実現してこそ,と主張されています.
 果たしてこの3年で状況は変化したのか,今度こそ法制化は実現するのか,そもそもカルテとは何か,どうすれば一患者が請求できるのか――患者と医療者の信頼関係を高め,医療の質を向上させるための具体的な提言とノウハウの数々を収めた,すぐに役立つ貴重な入門書です.

【編集部:上田 麻里】

編集部からのメッセージ 【イラスト 平野 恵理子】



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