新生児医療はいま

小さな命を守るために

世界でもっとも低いといわれる日本の新生児死亡率.それを支える医療の現場ではいま何が起こっているのか.

新生児医療はいま
著者 加部 一彦
通し番号 580
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2002/11/20
ISBN 9784000092807
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 72頁
在庫 品切れ
少産少子の時代を迎えたいま,新生児医療は「採算に合わない」と,病棟が閉鎖されたり,科そのものが廃止されてしまう例が後を絶たず,夜間当直や夜間外来を閉鎖する病院も数多いという.現在,日本の新生児死亡率は世界でもっとも低いといわれているが,それを支える医療の現場ではどのようなことが起こっているのか.また,いま何が課題となっているのか.新生児医療のイロハをQ&Aの形で,だれにも分かりやすく説く入門書.

■編集部からのメッセージ

 医療技術の飛躍的な向上の結果,出生体重が極端に少ない赤ちゃんでも,元気に育つ可能性が高くなっているそうです.一方で,不妊治療の進歩によって増加した多胎児出産などの影響で,早産は全体としては減っていないともいいます.
 現在,日本の新生児死亡率は世界でもっとも低い方だそうですが,それを支える新生児医療の現場ではどのようなことが起こっているのでしょうか.また,今何が課題となっているのでしょうか.本ブックレットは,新生児医療のイロハを説く格好の入門書です.巻末には,著者自身による関連ホームページの紹介一覧とブックガイドもつけました.
 超ハードな臨床現場でご活躍中の加部先生は,こと赤ちゃんの話になると,目尻が下がって,とろけるような優しい笑顔になられるのが印象的です.一方で,その赤ちゃんたちの置かれている過酷な状況についての話になると,憤りをあらわに熱く語られます.そのお姿からは,小さないのちへの愛情が溢れ出てくるようです.
 そんな加部先生による本ブックレット,ぜひご覧ください.
【編集部:上田 麻里】


■筆者からのメッセージ

 生命力にあふれる「赤ちゃん」のイメ-ジと「病気」はなかなか結びつきにくいかと思います.しかし,実は産まれる前後の時間帯を含め,「新生児」と言われる時期は,人生の中でもいのちに対する危険の最も高い期間だと言われています.多くの方にとって,新生児医療や新生児集中治療室はなじみのない世界だと思いますが,本格的な少子高齢化社会を迎えたいま,赤ちゃんを巡ってどのような医療が行われているのか,ぜひ皆さんに紹介したいと思いこの本を書きました.限られたペ-ジの中で新生児医療の現状を十分に伝えることができたかどうか心配ですが,「新生児医療」や「新生児集中治療室(NICU)」について,皆さんのイメ-ジを一新できれば大変うれしく思います.

■「はじめに」より)

 今年のお正月も新生児集中治療室(NICU)を退院した子どもたちからたくさんの年賀状が届きました.その中に,四年ほど前に退院した女の子のお母さんからの賀状があり,そこにはこんなことが書いてありました.
 「ある日,娘が自分が生まれた時のことを話してくれました.自分はうさぎさんくらいの大きさで,まわりにはねずみさんくらいの大きさのお友だちがいて,ピンク色の服を着たお姉さんたちがお世話をしてくれていたと,それはそれは幸せそうに話すのです」
 このお話を読んで,私は不思議な気持ちになるとともに,なんだかとても幸せな気持ちになりました.
―はじめに―
◆周産期医療とはどんな医療ですか
◆治療の必要な赤ちゃんはどのくらい生まれているのですか
◆どんな病気があって,どのくらい治療できるのですか
◆新生児集中治療室とはどんなところですか
◆入院するとどれくらい医療費がかかるのですか
◆後遺症や障害の心配はどれくらいあるのでしょうか
◆退院した赤ちゃんはどうなるのですか
―おわりに代えて―
加部一彦(かべ かずひこ)
1959年埼玉県生まれ.84年日本大学医学部卒.東京女子医大母子総合医療センタ-を振り出しに,おもに新生児集中治療室に勤務してきた.'94年7月より恩賜財団母子愛育会総合母子保健センタ-愛育病院に勤務.'96年4月,同院新生児集中治療室開設に伴い,新生児科部長に就任,現在に至る.主な著書は『てのひらの中のいのち』(ゆみる出版 1994,共著),『臨床倫理学』(新興医学出版社 1997,共訳),『障害をもつ子を産むということ』(中央法規出版 1999,編著),『Baby ER-新生児集中治療室』(秀潤社 2002,監訳)など.

書評情報

ALLAY 2003年秋号
京都新聞(夕刊) 2003年2月24日
徳島新聞(朝刊) 2003年1月20日
読売新聞(朝刊) 2003年1月8日
経営タイムス 2002年12月5日号
産経新聞(朝刊) 2002年12月1日
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