パレスチナ ジェニンの人々は語る

難民キャンプ イスラエル軍侵攻の爪痕

パレスチナ民衆の語る難民キャンプでの「虐殺」事件と,その背後にあるイスラエルによる「占領」の実態.

パレスチナ ジェニンの人々は語る
著者 土井 敏邦
通し番号 583
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット > 国際情勢
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2002/12/20
ISBN 9784000092838
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 72頁
在庫 品切れ
2002年4月3日のイスラエル軍侵攻により,民間人を含む多数の死傷者を出したパレスチナ自治区ジェニン難民キャンプ.事件直後の証言をもとに「ジェニンで何が起きたのか」を,そして事件の背後にある恒常的暴力としての「占領」を浮かび上がらせる.「自爆テロ」報道だけでは見えてこないパレスチナ民衆の過酷な生.


■本文より
私たちは“暴力”という言葉から「砲銃撃」「殴打」「拘束」など目に見える行為を連想しがちだ.“占領”の報道もそのような暴力行為の描写・映像によって伝えられることが多い.しかしそれは“占領”の氷山の一角でしかない.“占領”は土地の没収,経済の従属化など産業基盤・生活基盤の破壊や,移動の自由,表現の自由,教育の権利など基本的人権を剥奪する,いわゆる“構造的な暴力”である.それによって占領下で生きる人々は“人間らしく生きたい”という願いも,“人間としての尊厳”も奪われてしまう.パレスチナ人たちの“占領”との闘いは,まさに“人間らしく生きていく権利”“人間としての尊厳”を取り戻すための闘いなのである.(略)


■編集部からのメッセージ
 2002年4月,イスラエル占領下でパレスチナ人による暫定自治が行われているヨルダン川西岸地区の北端にあるジェニン難民キャンプに「自爆テロを繰り返す過激派の制圧」を目的にイスラエル軍が侵攻,大勢の人を殺害し,ミサイルやブルドーザーで住民たちの住居を徹底的に破壊するという事件が起こりました.その際に一般住民も含む500人を超える虐殺が行われたのではないか,という報道がなされたのを記憶されている方もいるかもしれません(「虐殺疑惑」を検証するために結成された国連調査団は結局イスラエルの反対で現地入りすらできず,疑惑は解消されていません).
 著者の土井敏邦さんは事件直後に難民キャンプに入り,多くの遺体や破壊しつくされた住居をビデオやカメラにおさめるとともに,生き残った人々へのインタビューをおこないました.このブックレットはその膨大なインタビューをもとに,ジェニン難民キャンプでいったい何が起きたのかを丹念に検証していきます.
 それらの証言からは,「虐殺」とも「戦争」とも表現できない「生活の完全な破壊」である今回の事件が,実はイスラエルによる「占領」という「恒常的な暴力」の延長線上の出来事であることが浮かび上がってきます.
 パレスチナ問題の本質を考えるために,ぜひご覧ください.
【ブックレット編集部 吉田浩一】
■ イスラエル軍のジェニン侵攻
■ 難民キャンプとは
■ ジェニンで何が起こったのか――住民たちの証言から
■ 問題の根源にある“占領”
土井敏邦(どい・としくに)
1953年佐賀県生まれ.中東専門雑誌の編集者を経てフリー・ジャーナリスト.1985年以来,パレスチナを取材.93年よりビデオ・ジャーナリストとしての活動も開始し,テレビ各局でパレスチナやアジアに関するドキュメンタリーを放映.「日本ビジュアル・ジャーナリスト協会」の設立世話人.著書『占領と民衆――パレスチナ』(晩聲社),『「和平合意」とパレスチナ――イスラエルとの共存は可能か』(朝日選書),『アメリカのパレスチナ人』(すずさわ書店),『アメリカのユダヤ人』(岩波新書)など.
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