なぜ加害を語るのか

中国帰還者連絡会の戦後史

加害証言を通じて平和を訴え続けた中国帰還者連絡会の戦後史を辿りながら,若い世代の「戦争責任」を考える.

なぜ加害を語るのか
著者 熊谷 伸一郎
通し番号 659
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット > 戦争と平和
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2005/08/04
ISBN 9784000093590
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 72頁
在庫 品切れ
戦時の自らの加害行為を語る元兵士たちの団体・中国帰還者連絡会.会員の高齢化による解散後に彼らの活動を引き継いだ著者が,「洗脳者」と中傷されながらも加害証言を通じて平和を訴え続け,最終的に中国の人々からの赦しを得るまでの中帰連の戦後史をたどりながら,若い世代にとっての「戦争責任」とは何かを問いかける.


■著者からのメッセージ
 自らの戦場での加害行為を,被害者への謝罪と反省の気持ちをこめて語り続けてきた元兵士たちの一群.かつて中国で戦犯として抑留された体験を持つ人々の集まりである中国帰還者連絡会の戦後史は,戦争の被害の側面が語られることの多かったこの国で,特異な輝きを放っている.
  1957年の結成から2002年の解散まで,45年間にわたる贖罪の歩みの末に,直接の被害者からの赦しを得るまでにいたった彼らの存在は,過去の過ちに目を閉ざさず,向き合っていくことの意味を,これ以上ないほどに具体的に,明確な形で示している.本書は彼らの後半生を概括している.
  私が彼らの存在を知ったのは解散の2年前の2000年.石原都政の誕生や小林よしのりの「戦争論」の影響で,「南京大虐殺はなかった」,「慰安婦は商行為」といった言説が,それまでのアンダーグラウンドから社会の表面へ這い出しはじめたころだった.これまで行なってきた百数十人からの聞き取りの一端を本書に記した.被害者側からの呼びかけや批判に対して逆ギレするのではなく,相手の痛みに共苦する,そういう戦後がこの国にありえたことの意味を共に考えたい.
Ⅰ 加害を語る元兵士たち
Ⅱ 撫順戦犯管理所
Ⅲ 帰ってきた戦犯たち
Ⅳ 時代の嵐のなかで
Ⅴ 「赦し」を求めて
Ⅵ 解散,そして若い世代へ


熊谷伸一郎(くまがい・しんいちろう)
一九七六年,横浜生まれ.編集者・ライター.月刊『自然と人間』編集長.季刊『中帰連』編集長.中国帰還者連絡会の後継団体である「撫順の奇蹟を受け継ぐ会」事務局長.著書に坂本龍一氏らとの共著『非戦』.ライターとして環境問題や石原都政,沖縄・在日外国人問題など幅広い社会的テーマで,ルポルタージュを各誌に寄稿している.
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