これ以上、働けますか? 労働時間規制撤廃を考える

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編集部だより
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 「日本版エグゼンプション」,「ホワイトカラー・エグゼンプション」という言葉をご存知でしょうか.最近,これらの言葉が,よく新聞や雑誌などに出てくるようになりました.あるいは,「残業代がなくなる!」といった特集なども雑誌などで組まれています.この「エグゼンプション」とは,「適用除外」という意味です.いま使われているエグゼンプション(日本版エグゼンプション,ホワイトカラー・エグゼンプションなど)とは,現在の「1日8時間,週40時間」という労働時間規制の適用から,労働者を外す(適用除外とする)ことを意味します.つまり「もうこれ以上,働きたくない!」と叫んでも,法律は助けてくれなくなってしまうのです.そのような,労働時間規制に守られない労働者を大幅に増やそうとしているのがこの制度です.これらは,仕事や働き方の根幹に関わる問題ですが,なぜ今,このような言葉が取り沙汰されているのでしょうか.
 2006年1月27日,厚生労働省の労働基準局長の私的研究会である「今後の労働時間制度に関する研究会」の報告において,「新しい自律的な労働時間制度」の構想が発表されました.さらに4月13日には労働立法を審議する労働政策審議会の労働条件分科会に,厚労省が,「労働契約法制及び労働時間法制に係る検討の視点」として「自律的労働時間制度」の創設を提案しました.これらが先に触れたエグゼンプションを推進する提言です.6月13日には,今度は同じく厚労省が「自律的労働にふさわしい制度」と称して提案しました.いずれも「自律的」がキーワードと言われましたが,11月10日には「自由度の高い働き方にふさわしい制度」と,さらに名称を変えた提案がなされています.「自律的」「自由度の高い」と名称はコロコロ変わっていますが,提案されている制度の基本的内容(適用除外者の拡大)はいずれも同じです.
 本ブックレットは,このような流れを受けて行われたシンポジウム「日本版エグゼンプションを許さない」(2006年6月13日)をもとに,その後の経過を踏まえて大幅加筆したものです.この日本版エグゼンプションとは何か,これが導入されたら私たちの労働はどうなってしまうのか,考えていきたいと思います.
(「はじめに」より)


著者プロフィール

森岡孝二(もりおか・こうじ)
関西大学経済学部教授.株主オンブズマン代表.1944年生まれ.69年京都大学大学院博士課程退学.著書に『働きすぎの時代』(岩波新書),『日本経済の選択』(桜井書店)など,共訳書に『窒息するオフィス』(岩波書店)など多数.

川人 博(かわひと・ひろし)
弁護士.1949年大阪生まれ.1974年東京大学経済学部卒業.78年に弁護士登録.主著に『過労自殺』(岩波新書),『過労自殺と企業の責任』(旬報社)など,共著に『サラリーマンの自殺』(岩波ブックレット)など多数.

鴨田哲郎(かもた・てつお)
弁護士.日本労働弁護団幹事長.1951年生まれ.1975年中央大学法学部卒業.同年司法試験に合格,78年に弁護士登録.主著に『労使協定のかしこい結び方』,『新・労働時間の法律実務』(ともに中央共済社)など多数.


目次

はじめに ――労働時間規制が撤廃されると?
鴨田哲郎

第一章 労働時間の過酷な実態を分析すると
森岡孝二

第二章 日本版エグゼンプションが導入されたら
川人 博・森岡孝二・鴨田哲郎

資料



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