首都圏の水があぶない 利根川の治水・利水・環境は,いま


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編集部だより
著者からのメッセージ

 利根川は首都圏を貫流する日本最大の流域面積をもつ河川である.利根川とその支川から水道水の供給を受ける地域の人口は首都圏1都5県の人口約3300万人の大半に相当する.まさに首都圏の大動脈といってよいであろう.
 このブックレットは,この利根川で進むダムなどの大規模開発事業によって,自然と人々の生活が損なわれていく状況を変えたいという思いと,過去の開発で失われた利根川の自然を少しでも取り戻したいという願いを込めて執筆したものである.
 わが国は亜熱帯から寒帯までの気候帯に島国として位置し,豊かな雨が急峻な山脈を流れ下る.深い谷を刻む各地の河川とその流域は,流域ごとに実に多様な生物を育んできた.この島国で生物多様性を維持することは,私たちの生存にとって不可欠であり,長期的には経済的でもあることを考えれば,河川やその流域の生態系を無視した今までの河川事業は大きく見直さなければならない.これからは,流域の豊かな自然と生物多様性に最大限配慮し,それらと共存できる真に必要な公共事業を厳密に選んでいくことが求められる.
 大規模開発事業推進の時代から流域の生態系と調和した河川行政を進める時代への転換期にさしかかっている今,このブックレットがこれから進むべき方向を考える上でのささやかな指針となることができれば幸いである.


著者プロフィール

大熊 孝(おおくま・たかし)
1942年生れ.新潟大学教授.東京大学工学部卒業.治水の変遷,近代化土木遺産の評価,自然と人間の関係を,川を通して研究.著書に『洪水と治水の河川史水害の制圧から受容へ』『利根川治水の変遷と水害』ほか.

嶋津暉之(しまず・てるゆき)
1943年生れ.市民団体「水源開発問題全国連絡会」共同代表.東京大学工学部卒業.各地のダム建設問題について技術的解析を行っている.2004年まで東京都環境科学研究所勤務.著書に『水問題原論』『やさしい地下水の話』(共著)ほか.

吉田正人(よしだ・まさひと)
1956年生れ.江戸川大学教授.千葉大学理学部生物学科卒業後,日本自然保護協会研究員として自然保護に関する調査研究,保全活動に取り組む.共著に『自然保護ハンドブック』『地球環境条約』『自然観察ハンドブック』ほか.


目次

第1章 利根川治水の変遷
第2章 利根川における開発の歴史,
止まらない開発事業
第3章 首都圏の水行政の実態
第4章 利根川の自然環境の変貌と再生
  あとがき




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