計算と物質〈岩波講座 計算科学3〉


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編集部だより
著者からのメッセージ

 我々は物に囲まれて生きている.自然界の様々な事物も現代生活を支える電子機器も全ては物である.我々自身も実は物である.そうした物質の性質――物性――が発現する“からくり”がわかれば,それはその物質を理解したと言えるだろう.さらにその“からくり”に基づいて,新たな性質を示す物質を考え出すことも可能かもしれない.物質を舞台とする現象を決めているのは,構成要素である原子核と電子がしたがうべき普遍的物理法則であろう.
 そうした物理法則の第一原理に基づいて,物質の性質を調べる研究は,近年大きな発展を示している.そこでは,理論的,実験的アプローチに加えて,コンピュータを用いた計算により現象の本質に迫り,新たな可能性を予測するアプローチが盛んである.本巻では,物質を舞台とする諸現象を,物理・化学の基本的法則に則って解明・予測する理論的手法を説明するとともに,コンピュータを用いた計算が果たす本質的な役割と成果を概観し,将来への展望を述べる.
――「はじめに」より抜粋


著者紹介

押山 淳(おしやま あつし)
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授

天能精一郎(てんのう せいいちろう)
神戸大学大学院システム情報学研究科計算科学専攻教授

杉野 修(すぎの おさむ)
東京大学物性研究所物性理論研究部門准教授

大野かおる(おおの かおる)
横浜国立大学大学院工学府物理情報工学専攻教授

今田正俊(いまだ まさとし)
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授

高田康民(たかだ やすたみ)
東京大学物性研究所物性理論研究部門教授


目 次

第1章 はじめに――物質の理解と物性の予測
1 物質と量子力学
2 量子多体系としての物質
3 コンピュータと物質科学
4 本巻の構成
第2章 理論手法の基礎
1 原子核と電子
2 電子系のハミルトニアンとハートリー・フォック近似
3 摂動論の定式化
4 フォノン
5 経路積分法
6 原子単位
第3章 分子デザインと量子化学
1 量子化学計算の発展
2 基礎手法
3 露わな電子相関
4 コードの自動生成技術
5 電子物性予測
6 展望
第4章 量子論による物質デザイン
1 密度汎関数理論の基礎定理
2 コーン・シャムの理論
3 原子核に働く力
4 スピン密度汎関数理論への拡張
5 計算手法と技術
6 交換相関エネルギーに対する近似
7 時間依存密度汎関数理論の基礎定理
8 最小作用の原理と時間依存コーン・シャム方程式
9 外場に対する応答
10 フォノン・スペクトル
第5章 量子論で探る電子とイオンのダイナミクス
1 カー・パリネロ法
2 ボルン・オッペンハイマー・ダイナミクス
3 自由エネルギー計算
4 第一原理分子動力学法を用いた量子論的計算
5 非ボルン・オッペンハイマー・ダイナミクス
第6章 光励起と物質応答の量子論
1 光応答の基礎理論
2 GW近似と物質のギャップエネルギー
3 励起子効果
第7章 物質科学と電子相関
1 物性における電子相関の役割
2 強相関物質の特質
3 経路積分に基づく相互作用のない電子系の扱い
4 相互作用の扱い
5 強相関電子系の数値シミュレーション
6 第一原理法による強相関電子系の電子状態
7 階層的強相関第一原理手法
8 現実の強相関物質の物性予測
第8章 超伝導転移温度の第一原理計算235
1 超伝導転移温度Tc の定量評価の重要性
2 グリーン関数法によるアプローチ
3 密度汎関数超伝導理論
4 さいごに

付録A ウィックの定理の証明
付録B 時間依存密度汎関数理論の基礎定理の証明
付録C 第一原理分子動力学法のための計算パッケージ
付録D ベーテ・サルピータ方程式の解法

参考文献
索 引




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