岩波講座 日本の思想 全8巻


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A5判・上製函入・平均256頁 

■ 刊行のことば

 思想は,ものごとを見つめ,考え,問い直してきた人びとの精神生活の所産に他なりません.人びとが時代のなかでどのように生き,何を思い,いかなる未来を望んできたのかは,わたくしたちにとって限りない関心事です.
 改めてわたくしたち自身の行く末が問い直され,人間としての心のありようを考えさせられるような現在,最新の研究成果をもとに,過去の思想的営為を顧みることは,時代の要請とも考えます.
 岩波講座『日本の思想』は,でき得る限り広い視野から日本の思想をとらえるとともに,古代から近代まで,脈々と受け継がれてきた思想の蓄積を,今日の問題意識に結びつけることを目的として企画されました.
 編集委員による徹底した討議を経て,歴史・民俗・文学・美術等関連諸学を含めた第一線の研究者の方々のご協力のもと,刊行にむけての準備を進めてまいりました.
 本講座が,いま直面しているさまざまな現実的課題について,日本における思想の蓄積とその展開をふまえながら考えようとする読者のみなさまに,広く迎えられることを願っています.
岩波書店 


■ 全巻構成










■ 編集にあたって

◎ 古代から近代まで,日本における思想の豊かな蓄積とその転変を,今日的な視点から精緻に問い直す.

◎ 各巻を主題別の構成とし,さまざまな思想の根底に流れる水脈に迫ることで,総合的な視座を提示する.

◎ 各巻の巻末には「古典を読む」を付して,該当巻のテーマに関わりの深い文献を選び,その受容史ならびに読解上の論点を中心とする論考を収めた.

◎ 歴史,民俗,文学,美術等隣接する諸分野を含め,第一線の研究者による最新の成果を結集した.


■ 本講座の特色

 世の中が大きく変わりつつある時代には,思想においてもあらゆるものが批判の俎上にのせられる.日本思想に関する研究もまた例外ではない.「神道」とは何か.「武士道」は存在したのか.「仏教」や「儒学」の受容と呼べるような実態はあったのか.そもそも「思想」とは,「日本」とは何か…….こうした概念枠組の多くが,せいぜい近代以降に創られたものであることが指摘されるようになり,それを自明のものとして論じることは,もはや不可能になった.
 しかし,これまでの前提がゆらぐ状態は,新たな発想が育つ培養器でもあるだろう.さまざまな枠組が相対化されたあとで,従来の発想にとらわれずに過去の思想について語りなおす,新たな研究の試みが,日本思想史の各時代に関して行なわれつつある.近代に創られた概念を批判的に吟味しながら,前近代の思想がどのように近代へとつながってゆくのか,思想の転変を今日の視点から確認すること.それが本講座のめざすところである.
 時代を追って通史を編成するとか,有名なテクストに関する個別研究を集めるといった方針はとらなかった.本講座では,過去の思想と今日とが切り結ぶ問題を設定し,テーマごとにそれぞれの執筆者が論じる.思想の転変について精密に点検し,批判の篩(ふるい)にかけることで,新たな角度からの光をあてたいと考えたからである.その作業を基盤として,思想の蓄積を貴重な財産とし,未来にむけた思想を創りだすことができるだろう.
 もちろん本講座だけで,そのような志をすべて実現できるとは思われないが,その大きな目標へむけて記念すべき第一歩を記し,後続する営みの礎を築けると確信している.日本のみならず世界の思想に関心をもつ読者の方々がこれを読むことで,日本文化の現在と未来とを考える助けにしていただけることを願う.

編集委員 苅部 直・黒住 真・佐藤弘夫・末木文美士 






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