この本は,一本のフランス産長編漫画映画がたどった驚くべき数奇な運命を克明に跡づけた書物です.わたしはその映画『やぶにらみの暴君』を観ることがなかったら,いまの漫画映画の道に進むことはありませんでした.
東映動画で育ったわたしたちの世代にとって『やぶにらみの暴君』の影響は決定的でした.ひと言でいえば,漫画映画において人物や空間に存在感を与え,子どもだましではない内面性と社会性のある作品をつくろう,という決意を促されたのです.これが実際には,作者たちにとって不本意なかたちで完成させられた作品だったということはどうでもいいことでした.そこには表現のすばらしさがあり,はっきりと作者2人,グリモーとプレヴェールの「志」が読みとれたからです.
ところがその後,30年の歳月を経て作者たちがあらたに作り直した映画『王と鳥』に出会います.はじめは,なにをいまさら……と,容易にはこれを受け入れることができませんでした.そのわたしが,この『王と鳥』の驚くべき先見性に気づき,再び作者の烈々たる「志」に心打たれたことこそ,この書を書いた動機です. |