渥美清の肘突き

人生ほど素敵なショーはない

戦後大衆文化の生き証人による自伝.渥美清や越路吹雪,夏目雅子ら数々のスターの素顔とテレビや舞台への熱い思いを軽妙に綴る.

渥美清の肘突き
著者 福田 陽一郎
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2008/05/15
ISBN 9784000220422
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 366頁
在庫 品切れ
著者の親友である渥美清は,一緒に観劇している舞台が面白くないと腕を軽く肘で突いてきた.外へ出ようという合図だ.会場を出た後の雑談こそ至福のときだった──.渥美清やクレージーキャッツをテレビの世界に引き入れ,三谷幸喜に劇作家を志させ,夏目雅子の最初で最後の舞台を演出した鬼才が,戦後大衆文化の生き証人として知られざるエピソードの数々を活写する.

■著者からのメッセージ
 ここ2,3年の間に,全くバタバタと,若い頃からお世話になった先輩,同輩,後輩の友人,仕事仲間が亡くなった.市川崑監督,増田通二氏,作曲家宮川泰,羽田健太郎,俳優の植木等,岸田今日子,仲谷昇,北村和夫,作詞家阿久悠,演出家久世光彦…….それ以前にも,渥美清,杉村春子,越路吹雪,色川武大,山本直純,渡辺晋と,私の記憶から消えない恩人がこの世を去っている.私の年齢(昭和7年生まれ)になれば人生の避けられない事実だから,とも思うが,「想い出」は避けられない.折にふれて付きまとう,消えてくれない.
 この本は,一緒に時代を過ごしてきたこれらの方達への「オマージュ的エピソード」を集めたものですが,私の何とか生きてこられた時代,敗戦から戦後すぐの学生時代,「テレビ創成期」,そして「舞台演出とプロデュース」を始めた時代から現在までの「時代の変化」をからめた本でもあります.
 「テレビ時代」から何とか新しい「コメディ・エンターテインメント」を目指した記録の一つでもあると思うので,今の中年以下,若い人達が「こんな時代もあったのか」「テレビも舞台も変化したものだなぁ」と知ってくれれば,これに越した嬉しいことはない.
 楽しんで読んで下さることを切に願っています.「時代」「人生」の演出家は「時間」ですから.
福田陽一郎
はじめに 敗戦の日の青空

第1章 パンのみにて生きるにあらず――昭和20年代の青春
「SEE YOU,BOYS!」/日本初のストリップショー/なんで俺が教会へ?/勉強より大切なもの/千代子の「サヨナラ」/浪人,乱読,そして大学生に/陽べぇ,歌舞伎と演劇を知る/シャンソン喫茶「ロワ LE ROI」で/劇団「新人会」を知る/文学座からの誘い/提出した卒論を引っ込める/「日本テレビ」に内定

第2章 生まれたてのテレビとともに――渥美ちゃんがいた
  編成課に配属/「劇場中継」から始まった/渥美清と植木等たちとの出会い/杉村春子さんとの出会い・演出/木下順二・渥美清・尾上松緑/越路吹雪のテレビ一人芝居/藤山寛美の憶い出/市川崑とハナ肇/連続ドラマ「男嫌い」/ファンタジー・コメディ「四重奏」/グニャチンショット/映画化された「男嫌い」/蕎麦屋の2階,渥美清大独演会

第3章 ドラマ,バラエティ,ハプニング――ナマほど素敵な番組はない
  初めて海外へ/フランソワーズ・アルヌールを訪問/「吹き屋」が揃うと/娘が生まれた頃/「木島則夫ハプニングショー」/大群衆/警察で事情聴取/パラシュート/寺山修司との「ハプニング」/月面からの映像

第4章 ミュージカル「ショーガール」誕生――テレビから舞台へ
  「日本テレビ」を辞める/「おしゃれ」と「すばらしい世界旅行」/ブランコを漕ぐ山本直純/エーゲ海ロケ/「とび出せ!真理ちゃん」の頃/産声を上げた「ショーガール」/ロングランへの手応え/小沢昭一vs芥川比呂志/「朝食まで居たら?」で初の芝居演出/日本にもオリジナルのミュージカルを/人間・笑い・コメディ/「ショーガール」の旅/「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」

第5章 「エンターテインメント」への思い
  ショーガールの旅の終わり/色川武大さんの一文/「シューズ・オン! SHOES ON!」のスタート/新しいショーを模索した八年間/コーちゃんの憶い出/杉村春子さんのふくよかな手/大竹しのぶの感性/安藤昇からの依頼/ヒロインの失踪/徹夜の稽古/夏目雅子の最初で最後の舞台/運命/色川さんとレーザーディスク/心臓は強すぎてもいけない/岸田今日子のエミリー・ディキンソン/「おかしな二人」に出たがった渥美清/渥美ちゃんの軽い肘突き/「最後の電話」/過ぎ去りし友たちから学んだこと/人生ほど素敵なショーはない

【特別対談】「コメディ」を見たい,つくりたい!   三谷幸喜×福田陽一郎

 あとがき
 福田陽一郎作品リスト
福田陽一郎(ふくだ よういちろう)
1932年東京生まれ.脚本家・演出家.1957年,東京大学仏文科卒.草創期の日本テレビに入社し,ディレクター,脚本家として「男嫌い」「四重奏」等のドラマから「木島則夫ハプニングショー」「すばらしい世界旅行」等のバラエティまで,あらゆるジャンルの番組を手掛ける.1972年にフリーとなり,数々の舞台,テレビドラマ脚本を執筆,また「ショーガール」「シューズ・オン!」をはじめとするオリジナルミュージカルを演出し,日本に良質の「エンターテインメント」を定着させる.
著書に『ザ・ショーガール・ストーリー』(パルコ出版),『ショーガール』(集英社),翻訳に『ニール・サイモン戯曲集』(早川書房,共訳)など.

書評情報

朝日新聞(夕刊) 2010年4月30日
産経新聞 2009年9月17日
週刊新潮 2008年8月28日号
東京新聞(朝刊) 2008年8月17日
読売新聞(夕刊) 2008年8月6日
デーリー東北 2008年7月6日
週刊文春 2008年7月3日号
日本経済新聞(朝刊) 2008年6月29日
ページトップへ戻る