アニメはいかに夢を見るか 「スカイ・クロラ」制作現場から

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何故この映画なのか.映画制作の核心を語る.



8月2日,いよいよ押井守監督の新作公開.
2008年の8月2日,世界が注目する押井監督のアニメ映画「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」がワーナー・ブラザースの配給で公開される.
原作の「スカイ・クロラ」はベストセラー作家・森博嗣氏による人気シリーズで,累計発行部数は10万部を超え,10代後半から40代までの幅広い世代から,大きな支持を得ている.原作を読んだ押井監督は「今を生きる若い人たちの心に寄り添った,サリンジャーの作品のよう」と絶賛し,「今こそ若い人たちに向けて描くべき作品」と映画化を決意し,脚本を「世界の中心で,愛をさけぶ」や「春の雪」を手がけた若手作家,伊藤ちひろ氏に委ねた.
今を生きる若い人たちに何かを言ってあげたい.
この作品について,押井監督は「今,映画監督として何を作るべきか.私は,今を生きる若い人たちに向けて,何かを言ってあげたいという思いを,強く抱くようになりました.私はこの歳になって,ますます生きることの難しさを実感し始めています.そして,これから人生の実相を知ることになる若者たちに向けて,何か伝えるべき事があるのではないか,と考え始めたのです」とその核心を語りはじめた.
本書ではこの映画がいかに制作されたのか,豊富なアニメ画像や制作資料を駆使して,その制作過程を浮き彫りにする.加えて,作画監督の西尾鉄也氏の書き下ろしのイラスト,プロデューサー石井朋彦氏も制作の裏話を寄稿したファン待望の書.
 
 
     
   
   


著者からのメッセージ

押井 守
私は,この永遠にも似た生を生きなければならない現代人のおかれた状況そのものが,若者を中心とした,様々な痛ましい事件の本質的な理由なのではないかと考えています.
親が子を殺し,子が親を殺す時代.何の理由もなく,若者が自らの命を絶つ時代.物質的には豊かだけれど今,この国に生きる人々の心の中には,荒涼とした精神的焦土が広がっているように思えてなりません.そんな時代を生きる若者たちに,何を言ってあげたら良いだろう?
ニートやフリーター,渋谷のセンター街で座り込む少女たち.親を殺した少年.彼らを,大人の目線で見下し,まるで病名のような名前を与えても,何の本質にも至りません.
彼らが何故,そういう生き方を選ばざるを得なかったのか.彼らが生きなければならない現代と,これからの未来は,一体どのような世界なのか.今こそ,彼らの心の奥底から聞こえる声に耳を澄まし,何かを言ってあげるべきだと思うのです.



著者略歴

押井 守(おしい まもる)
1951年8月8日,東京生まれ.映画監督.1976年,東京学芸大学教育学部美術教育学科卒.1977年,タツノコプロダクションに入社し,『一発貫太くん』でアニメ演出家としてのスタートを切る.1983年『うる星やつらオンリー・ユー』で,劇場映画初監督.以降,『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(84),『機動警察パトレイバー劇場版』(89),『機動警察パトレイバー2 the Movie』(93)など,数々の劇場作品を手がける.1995年公開の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は,日米英で同時公開され,『タイタニック』(97)のジェームズ・キャメロン監督や,『マトリックス』(99)のウォシャウスキー兄弟ほか,海外の著名監督に大きな影響を与えた.2004年公開『イノセンス』は全世界で公開され,日本のアニメーション映画としては初めての,カンヌ国際映画祭オフィシャル・コンペティション部門出品作品となった.2008年,『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』を公開.


目次

僕は今,若い人たちに伝えたいことがある――押井 守
 この映画について語ろう
・気が変わってやったら自分の運命が変わった
・僕がやってきたスタイルでやる限り,たぶん若い人の物語はできないだろう
・舞台が見えないと勝負にならない
・初めて若い人を身近な存在に感じられた
・ひとつだけ何か語れるような気がした
・自分自身が不幸になるという権利を行使する意志を持つこと
・何者かになって何をするか
・自分の人生のサンプルになるものは何もない
・違う人間として生きなおしてみる
・可能性を全部捨てることから始めてみる
・モニターの前に座っているだけでは人生にはならない
・監督としての技量を試される作品
・決して恋愛することは人を幸福にしない
・相手を殺さないと完結しない
・色気はようやく最近になって分かった
・現場における世代交代もちょうど来た
・今回はCGが必ずしもテーマではない
・今まで誰もやったことがない空中戦
・『イノセンス』と違った難しさがあります
・今を生きる全ての人々,あるいは僕自身のための映画
『スカイ・クロラ』はこうして制作された――石井朋彦(プロデューサー)
 『スカイ・クロラ』のテーマを決める
 人を本当に愛することの恐ろしさを,この映画で描きたい
 ドラマを演じるキルドレたち
 妄想から世界が立ち上がる
 『スカイ・クロラ』の世界を設定する
 アニメーション制作という現場
 光と音が,画面に満ちるとき
 映画制作という長い旅を終えて
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