愛する海

船長50年の航海記

半世紀にわたって世界の海をまたにかけた海の男が描き出す,航海の魅力,船長の仕事,そして海の男の不思議な友情物語.

愛する海
著者 石田 貞夫
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2010/08/04
ISBN 9784000220538
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 並製 ・ 208頁
在庫 品切れ
なぜ海に魅かれるのか.船長の仕事はどのようなものなのか.自らの歩みを振り返りつつ描き出される航海の魅力.そして最も思い出深い不思議な友情物語――.およそ50年もの年月を海と共に過ごし様々な航海を経験した,日本で最古参の船乗り,海の魅力と危険を知り尽くした著者が綴る航海記.

■著者からのメッセージ

海には,たくさんの「夢」がある――.
 私は,「夢」だけを求め続けて海上一筋の人生を送ってきました.
 周囲から「いい加減,海から足を洗って陸で職を見つけたらどうだ」「もう,海の仕事を辞めて陸に上がって陸を楽しめばどうだ」「もう世界中を回っただろう.体の元気なうちに陸上の仕事に変わったらどうだ,年をとって体がダメになってからでは遅いぞ」といろいろと言われ続けているうちに,足掛け50年が過ぎてしまいました.
 私はこの「海」にこそ,人類にとって大事なことがたくさん詰まっているような気がしてならないのです.特に日本は四面を海に囲まれた国です.陸上の面積は小さくても海上の面積は世界で六番目の大きさがあります.その海を利用し,活用していくことが,これからの日本には絶対に不可欠な要件だと思っています.日本は海に関して世界をリードしていかなければならない,そう強く思って私は船に乗ってきました.
  「外国から日本を見ると日本のことがよく見える.しかし日本にだけいては本当の日本が見えない」と三十数年間アメリカで生活していたヨットマンの畑下さん,26年間外国勤務をされていた日本海洋事業(株)の加藤前社長の話をこの本に書きましたが,これと同じように陸上にいては本当の陸上のことはわからないことが多いのかもしれません.海上にいると陸上の現状,そして将来の日本のことが,少しずつわかるような気がします.
 調査船に乗船してからは,事業母船や運航船にいた時とは違う生き甲斐を感じ,充実した調査航海ができたことに感動や感激を覚えたものでした.何事においても,どんな職についていても,いくつになっても,「夢」を持つことが人生には絶対に必要なのです.
 日本にとっての「海」の大切さ,「夢」を持ち続けることの重要性を知って欲しいと願って,この本を書き綴りました.
(「あとがき」より)
序にかえて――二人の船長からのメッセージ

海へ――船乗りという夢
    母の優しさ,父の夢/憧れと迷いのはざまで/そして船乗りへ

船の楽しみ,海の喜び
   いざ航海へ
    航海とは/「船長」の責任/石の上にも3年
   海はフシギでいっぱい
    暴風圏の先のクジラたち/綺麗なガラスのわな/黒い島との激突/ペンギンの墓場/オホーツクの流氷――なぜかタイヤの跡/氷に囲まれて
   世界初の熱水噴出孔の発見
    ロドリゲス三重合点での探索/発見間近に判断を迫られる/発見の喜びと失敗の教訓
  コラム/(1)海洋観測とは/(2)航海の基礎知識 Part.1/(3)航海の基礎知識 Part.2

船長の出番
   困ったときの助け船――洋上からの社会貢献
    北海道南西沖地震の調査/津波の被害/プレッシャーとの戦い/台湾船の火災救助
   「なつしま」,大震災に遭遇する
    激しい揺れ/乗組員の安否は/道なき道を一人越えて/ドライドックへ/震災の渦中で/必死の復旧作業/自転車で神戸入り/船の中は……/食糧が足りない!/現場の怒り/岸壁で感じた希望
   ロケットエンジンを探して
    やりがいのある仕事/時間は今日しかない/神様しかわからない/「かいこう」潜航開始/せめぎあい/異業種の語らい/発見! しかし……/赤ワインの味
  コラム/(4)調査に欠かせない海底探査システム/(5)有人潜水調査船「しんかい6500」とは/(6)深海の魅力とは

太平洋の不思議な出会い
    最初の出会い/畑下さんの,ひととなり/漁船での経験/約束/亡き妻と共に/畑下さんの不思議/しばしの別れ/不安/消息不明/発見/ボロボロのヨット/救出/電話のベル/再会/今給黎さんの優しさ/二度目のお見舞い/三度目のお見舞い/「絶対にここに来るはず」/「海の男」のプライド/覚悟/忘れられない酒の味/コースの決定/変わらないもの/送別会/「上を目指して,坂道を一歩一歩」/「また世界の海のどこかで必ず会いましょう」/事故/後悔と憧れ/叶えられた「約束」/不思議な体験
  コラム/(7)船の推進システム/(8)船乗りの独特な用語

   あとがき
   石田貞夫の乗船歴
石田貞夫(いしだ さだお)
1945年,石川県生まれ.日本水産(株)に15歳で入社,生まれて初めて乗船した.1990年,「野島丸」船長に.戦前から続いていた母船式事業で日本水産最後の母船船長を3年間務め,1993年日本海洋事業(株)に船長として出向.2002年,日本水産退職,日本海洋事業入社.その間,有人潜水調査船「しんかい2000」の支援母船「なつしま」をはじめ海洋調査船の船長を2010年春まで務めた.現在,同社・海技顧問.

書評情報

KAZI 2011年3月号
東京新聞(朝刊) 2011年1月8日
船員しんぶん 2010年10月25日号
中日新聞(夕刊) 2010年8月14日
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