イタリアという「国」

歴史の中の社会と文化

国家として歴史の浅いイタリアの一体性はどこにあるのか.アナール派の歴史家による斬新なイタリア史像.

イタリアという「国」
著者 ルッジェーノ・ロマーノ , 関口 英子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 歴史
刊行日 2011/12/14
ISBN 9784000221900
Cコード 0022
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 242頁
在庫 品切れ
統一国家として歴史の浅いイタリアの一体性は,どこに求めるべきなのか? ルネサンス期にヨーロッパの社会的・文化的頂点に立ったイタリアが内在させていた凋落の原因は何であり,それは現代イタリアの政治的弱体性といかにつながりをもつのか? アナール学派の流れをくむ歴史家が,歴史の深層に目を据えて提示する斬新なイタリア史像.

■編集部からのメッセージ

 本書は,長年パリにあってフェルナン・ブローデルらとともにアナール学派の一翼を担ったイタリア人歴史学者が,みずからのイタリア史像を一般の読者に向けて語った論考集です.
 著者は言います.
――イタリアの歴史は,さまざまな土地の歴史が縒り合わさり一つになったものなのだ.そして,縒り合わせる際の膠にかわの役割を果たすのが,まさに私が〈くに〉パエーゼと呼んでいるものである.すなわち,イタリアという共同体の基本要素をなしているもの,食べ物や飲み物,宗教・遊戯・社交などにおける独特の形態,等々である.
――イタリアの歴史を眺めてみると,1本の正弦曲線が浮かびあがってくる.先史時代に始まり,ローマ帝国モデルによって絶頂をきわめ,やがて蛮族の侵入によって「どん底」へと落ちていく.そこから,ふたたびゆっくりと,新たな頂点に達していくわけだが,私は,この時代において示されるモデルをコムーネ的=商業的モデルと名づけてみた.その後,正弦曲線は下り坂をたどる.
 著者ロマーノの著作が日本に紹介されるのは初めてです.イタリアの歴史を大きく捉えて論じた本書の魅力に,ひとりでも多くの読者が触れてくださることを願ってやみません.
序文
新版への序文
第1章 なぜわれわれはイタリア人であると言わずにはいられないのか
1 イタリア史の一例として考えることのできる図式
2 熱き理由
3 意志的な理由
第2章 イタリアの歴史――国民ネーションと〈くに〉パエーゼの狭間で
第3章 イタリア史の一つのあり方として
第4章 封建制のイタリア
1 封建制のイタリアの地理的概略(九~一三世紀)
2 さまざまな封建制のイタリア
3 封建的「無政府状態」
4 封建制の隙間で
5 封建制とコムーネ
6 封建制の存続
7 事象と言葉と
第5章 イタリア・「モデル」のダイナミズム
1 ローマ・モデルについての簡単な考察
2 かつてローマがあった
3 モデルの崩壊
4 「別種の」貴族
5 国家という中心的な問題
6 イタリアは完全に死に体となったのか
第6章 イタリア人の《優越性》の確立とその崩壊
1 「清き悦びと健康」
2 ファッション
3 知識人像
第7章 何をもってリソルジメントとするか
1 プロヴィンチャリズモとヨーロッパ主義
2 何を,どのように教えるのか
3 補足としての二つの考察
第8章 地中海――沿岸都市と内陸都市

ルッジェーロ・ロマーノ略歴
原注

ルッジェーロ・ロマーノ(Ruggiero Romano)
1923年,イタリアに生まれる.ヨーロッパ経済史・ラテンアメリカ経済史.40年にわたりパリの国立高等研究院(のち社会科学高等研究院)で教鞭をとった.著書は,フェルナン・ブローデルとの共著『リヴォルノ港に入港した船と積荷(1547~1611年)』(1951年)以来,多数.2002年,パリにて没.
関口英子(せきぐち えいこ)
1966年生まれ.大阪外国語大学イタリア語学科卒.翻訳家.訳書に,マリオ・フォルトゥナート『イタリアの外国人労働者』(明石書店),プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』(光文社),イタロ・カルヴィーノ『マルコヴァルドさんの四季』(岩波少年文庫),アルベルト・アンジェラ『古代ローマ人の24時間』(河出書房新社)ほか.
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