教室を路地に!

横浜国大vs紅テント2739日

唐氏の大学での画期的な活動を室井尚氏と総括し,教育とは,文化とは,状況とはという現代の課題を問う.

教室を路地に!
著者 唐 十郎 , 室井 尚
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2005/09/27
ISBN 9784000225441
Cコード 0074
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 228頁
在庫 品切れ
前衛演劇の旗手唐十郎氏が演劇科をもたない国立大学にのりこむと,学生たちは刺戟を受け,劇団唐ゼミとして新国立劇場でこの9月に公演するまでに急激に変化していく.大学の新しい可能性を示した唐氏の活動を室井尚氏と総括,教育とは,文化とは,状況とはという現代の課題を身体の現場から問う,必読の書.


■著者からのメッセージ
 1997年10月1日から2005年3月31日までの2739日間,劇作家,唐十郎は横浜国立大学教育人間科学部教授を務めた.
 60年代に「アングラの旗手」「風雲児」などと呼ばれ,機動隊に取り囲まれての公演や,寺山修司の「天井桟敷」との乱闘騒ぎなどで知られる唐が「国家公務員」になったということで世間の注目を集めたが,黒板をぶち破って登場する「初講義」から赤い木馬に乗って窓の外に消える「最終講義」まで,唐は自分のスタイルを一貫して曲げることなく,制度的な「国立大学」の中にさまざまな波乱を引き起こしていった.
 そして,そこからは唐との出会いによって人生が変わり,演劇の道を歩むことになった学生たち(むしろ,「弟子たち」と呼んだ方が適切だろうか?)が生まれ,「唐ゼミ★」という,唐ゆずりのテントを引っさげ,大学の外に飛び出していこうとする強力な「劇団」までもが誕生した.彼らは大学を卒業しても演劇をやめず,また他大学の卒業生や他学部からも続々と参加する者が現れ,従来の「学生劇団」とは全く異なる形態の集団となっている.
 唐の大学生活とはどのようなものだったのだろうか? 唐の生き方や演劇観は,40歳以上年齢の違う若い世代にいったい何を伝えたのだろうか? この本では,知られざる唐十郎の大学教授生活の内側を伝えると同時に,唐十郎演劇のもっている時代を超越した魅力(言葉の本来の意味での人を磁石のように魅きつける「力」)についても考えていきたいと思う.それは,唐がいかにして学生たちを「人さらい」のようにかどわかし,それと同時に「吸血鬼」のようにお互いの血を吸い合うような関係を作り上げていったかという記録である.
 大学教育に関心をもつ人々にとっても,また演劇や文化一般について関心をもつ人々にとっても,この本はきっと何か大きなものをもたらしてくれるにちがいない.
――「はじめに」より

室井 尚
はじめに … 室井尚

Ⅰ 着任まで … 室井尚
はじめての出会い/大学に「密航」してください/灰にならないための道はこれだ!/初講義
〈黒板破り〉の衝撃 … 唐十郎 × 室井尚
〈劇〉 の由来――戯曲探索行のためのメモ … 唐十郎

Ⅱ 唐ゼミができるまで … 室井尚
唐十郎の大学教授生活/中野敦之の登場/唐ゼミの誕生
演劇がよびさます力 … 唐十郎 × 室井尚

Ⅲ 想像力の冒険へ … 唐十郎 × 室井尚
最終講義まで … 室井尚
唐ゼミの船出/学外に飛び出す/唐ゼミの目指すもの/赤い木馬/そして現在

Ⅳ 〈唐十郎〉 という体験 椎野裕美子・新堀 航・禿 恵・長門洋平・中野敦之・室井尚
劇作を中心とした唐十郎略年譜 … 室井尚 篇

おわりに … 唐十郎

協力/資料提供 唐組,劇団唐ゼミ★
唐 十郎(から じゅうろう)
1940年東京都生まれ.明治大学文学部演劇科卒業.63年に劇団状況劇場を結成,67年に『腰巻お仙―義理人情いろはにほへと編』を紅テントで上演して以来,テント公演を中心に演劇活動を行う.現在,劇団唐組座長,劇作家,演出家,小説家,俳優として活動を続ける.『少女仮面』(69)で岸田國士戯曲賞,『海星 河童』(78)で泉鏡花賞,『佐川君からの手紙』(83)で芥川賞,『泥人魚』(03)で読売文学賞,紀伊國屋演劇賞,鶴屋南北戯曲賞をそれぞれ受賞する.

室井 尚(むろい ひさし)
1955年,山形市生まれ.京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了.現在横浜国立大学教育人間科学部教授.日本記号学会会長.主な専攻は情報文化論,哲学,美学.主要な著作に『ポストアート論』(白馬書房),『メディアの戦争機械』(新曜社),『情報宇宙論』(岩波書店),『情報と生命―脳・コンピュータ・宇宙』(吉岡洋と共著,新曜社),『哲学問題としてのテクノロジー―ダイダロスの迷宮と翼』(講談社),『巨大バッタの奇蹟』(アートン)などがある.

書評情報

東京新聞(朝刊) 2005年12月4日
朝日新聞(朝刊) 2005年11月20日
信濃毎日新聞(朝刊) 2005年11月13日
沖縄タイムス(朝刊) 2005年11月5日
日本経済新聞(朝刊) 2005年10月9日
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