現地ルポ 核超大国を歩く

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編集者からのメッセージ

核の時代,20世紀.熾烈な核軍拡競争の間に米ソ両国は合わせて1700回以上の原爆水爆実験を実施し,各地に死の灰を降らせています.また両国各地に点在する巨大な核施設の爆発事故・放射能漏れ,原発事故,さらには老朽化した原潜,ウラン鉱山なども住民に深刻な放射線被害を引き起こし,環境に多大な汚染をもたらしてきました.
軍事機密の厚いヴェールに閉ざされた広大な米ロ(ソ)両核超大国の知られざる放射能汚染・核被害の実態を克明に取材し,はじめて白日の下に晒した石橋湛山賞受賞の渾身のルポ.

【編集部:山田まり】


著者からのメッセージ

 新聞社では若い記者を鍛えるのに「記事は足で稼いで書くものだ」「現場を歩け」とよく言います.放射線後障害に苦しむ広島の被爆者らの取材に始まり,平和・核問題と長年取り組んできた私も,常に現場に足を運び,自分の目で見,聞き,感じたことを基に記事を書き続けてきました.『現地ルポ 核超大国を歩く』も,そんな中から生まれました.
 「核の世紀」と呼ばれた20世紀.核兵器開発競争や原子力発電所の事故などによって,多くのヒバクシャが生み出され,放射能汚染地帯がつくり出されてきました.その過程で蓄積されたプルトニウムなどの危険な放射性物質(廃棄物)は,人間の管理が困難なほどに膨大です.
 21世紀へと積み残されたこれら核時代の「負の遺産」.その重荷を最も多く背負っているのが,「核超大国」である米国とロシア(旧ソ連)です.本書を通じて深刻なその実態を理解してほしいと思います.と同時に,程度の差はあれ,日本なども同じ問題を抱えている現実にも目を向けてください.
 人類全体の課題である核時代の「負の遺産」をどう解決するか――.核戦争の悲惨と放射線被害の恐ろしさを知る被爆国日本,日本人の役割には限りなく大きいものがあります.


著者略歴
田城 明(たしろ あきら)
1947年兵庫県生まれ.72年に中国新聞社入社.編集局報道部記者,原爆・平和・国際担当部長などを経て,現在特別編集委員.87年米国タフツ大学フレッチャー法律・外交スクール修士課程修了.
これまで主として平和・核問題について幅広い報道に取り組んできた.世界の放射線被害者の実態を探った『世界のヒバクシャ』(講談社刊)取材班に加わり,90年度の「新聞協会賞」受賞.20世紀の核時代の意味を米国の学者,政策決定者らに聞いた『核時代 昨日・今日・明日』(中国新聞社刊)で95年度の「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞.湾岸戦争後のイラクや米英軍人らの取材をもとにした『知られざるヒバクシャ―劣化ウラン弾の実態―』(大学教育出版)で2000年度の「日本ジャーナリスト会議大賞(JCJ大賞)」受賞.本書のもととなった中国新聞の連載『21世紀 核時代 負の遺産』で02年度の「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」受賞.さらにこれまでの一連の業績に対して03年度の「日本記者クラブ賞」を受賞している.このほか主な連載記事に『印パ独立50年 核神話の下で』(97年)などがある.
著書に上記のほか『亜細亜からアジア』(共著,中国新聞社刊),『核と人間』(共著,中国新聞社刊)などがある.


 
サスケハナ川の島に建設されたスリーマイルアイランド原発.林の向こうの右側(南側)に見える丸い建屋が事故を起こした2号機.稼働中の1号機の冷却塔からは白い蒸気が立ち上っている(ペンシルベニア州ハリスバーグ市郊外・川の西岸から撮影)


目 次
はじめに 「核の世紀と人間」
序章 米ソ(ロ)核開発の歩み
I アメリカ編
1 ロスアラモス国立研究所
2 ローレンス・リヴァモア国立研究所
3 ハンフォード核施設
4 オークリッジ核施設
5 ロッキーフラッツ核施設
6 サヴァンナ・リヴァー・サイト核施設
7 パンテックス核施設
8 パデューカ核施設
9 スリーマイルアイランド原発
10 メーンヤンキー原発
11 ミッドナイト・ウラン鉱山
12 原潜・空母 サンディエゴ海軍基地
13 ヤッカマウンテン放射性廃棄物処分地
II ロシア・旧ソ連編
14 マヤーク核施設
15 トムスク核施設
16 クラスノヤルスク核施設
17 ノヴォシビルスク核燃料施設
18 ロシア原子炉研究所
19 セミパラチンスク核実験場
20 カプスチンヤール核実験場
21 「ヴェガ」平和目的核実験場
22 ロシア北方原子力潜水艦・砕氷船
23 チェルノブイリ原発
終章 核の軍事利用と平和利用
あとがき


夕日を浴びながら,パデューカ核施設からすさまじい勢いで立ち上る蒸気.煙突などからこれまでに多くの放射性物質が大気中に放出された(ケンタッキー州パデューカ市郊外)
 
史上最悪の原子炉溶融事故を起こし,今もなお強い放射線を出し続けるチェルノブイリ原発4号機.梁などがずれはじめた「石棺」の崩壊が懸念されている(チェルノブイリ市)




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