言語の基盤

脳・意味・文法・進化

音韻論,統語論,意味論が共に生成的であるという並列機構を提案.人間の本質に迫る言語研究への道をひらく.

言語の基盤
著者 レイ・ジャッケンドフ , 郡司 隆男
ジャンル 書籍 > 単行本 > 言語
刊行日 2006/07/25
ISBN 9784000227582
Cコード 3080
体裁 菊判 ・ 上製 ・ カバー ・ 594頁
在庫 品切れ
伝統的な生成文法では統語論だけが生成的であると仮定しているのに対し,本書は音韻論,統語論,意味論が同様に生成的であるという並列機構を提案する.この枠組みにより,言語処理,言語獲得,言語使用,空間認知,社会認知,進化心理学,神経科学などとの実り多い相互作用が生まれ,人間の本質に迫る言語研究への道がひらかれる.

■原書

「『この分野のすべての研究者にとって必読の書』という決まり文句に実際に値する本は少ないが,レイ・ジャッケンドフの『言語の基盤』はその言葉に値する.言語の科学において今までに出版されたもっとも重要な本であると思う.ジャッケンドフにはこれまでもずっと木と森の両方を見る才能があったが,その才能をここで存分に生かして,理論の構築と事実の統合を見事に両立させている.その結果,言語と自然界における言語の位置づけに対して,説得力ある新しい見方が生まれた.」――スティーヴン・ピンカー

「ジャッケンドフは言語理論を根底から再構成して,心理言語学や他の隣接科学との自然な(再)統合への道をひらいている.『言語の基盤』は記念碑的な業績であり,心理言語学者必読の書である.」――ウィレム J. M. レヴェルト

「今日の認知科学でもっとも影響力のある研究者の一人であるレイ・ジャッケンドフは,言語の科学におけるホットな論争の多くに明快かつ魅力的な分析を提出している.本書は,生成文法や認知言語学の背景をもつ言語学者のみならず,神経科学者,心理言語学者,言語哲学者にとっても,このような論争への入門となるだろう.彼の言うことすべてに同意はできなくても,分析の明快さと精密さと深さ,博識,そして議論にもちだされるデータの驚異的な幅広さは高く評価するにちがいない.」――アデル・ゴールドバーグ

「レイ・ジャッケンドフの『言語の基盤』は名著だ.レイにこの先まだ何十年も研究の時間が残されているのでなかったら,この本を彼のライフワークの頂点と呼んだだろう.言語機能および言語機能と他の機能との関係に関する将来のあらゆる理論化にとって参照点となるに本書はふさわしい.」――フレデリック J. ニューマイヤー

■原書

Foundations of Language: Brain, Meaning, Grammar, Evolution
(Oxford University Press, 2002)

■関連書

心のパターン  レイ・ジャッケンドフ/水光雅則[訳]
生成文法の企て  ノーム・チョムスキー/福井直樹,辻子美保子[訳]
統語論入門  アイバン A. サグ,トーマス・ワソー/郡司隆男,原田康也[訳]
ことばから心をみる  ニール・スミス/今井邦彦[訳]
日本語からみた生成文法  黒田成幸
言語のレシピ  マーク C. ベイカー/郡司隆男[訳]
心を生みだす遺伝子  ゲアリー・マーカス/大隅典子[訳]
はしがき
  謝辞
第I部 心理・生物学的基盤
  1 言語構造の複雑さ
2 心的現象としての言語
3 組み合わせの性質
4 普遍文法
第II部 機構的基盤
  5 並列機構
6 語彙的格納 対 オンラインの構築
7 処理への示唆
8 機構に対する進化論的見方
第III部 意味・概念的基盤
  9 心的活動としての意味論
10 指示と真理
11 語彙意味論
12 句の意味論
13 むすびのことば
  文献
  訳者あとがき
  索引
レイ・ジャッケンドフ(Ray Jackendoff)
マサチューセッツ工科大学(MIT)で言語学を学び,1969年にPh.D. を取得.1971年よりブランダイス大学言語学教授,2005年よりタフツ大学哲学教授.自然言語の意味/概念理論,統語/語彙理論,心の機構,生成音楽理論,意識,社会認知という幅広い関心分野をもつ.Semantics and Cognition Consciousness and the Computational Mind, The Architecture of the Language Faculty, A Generative Theory of Tonal Music (with Fred Lerdahl)(以上すべてMIT Press)など多数の著書がある.郡司隆男(ぐんじたかお)
1981年オハイオ州立大学大学院修了,M.A.(言語学),Ph.D.(計算機科学).大阪大学言語文化部教授などを経て,現在,神戸松蔭女子学院大学文学部教授.著書にJapanese Phrase Structure Grammar (D. Reidel),『自然言語』(日本評論社),『言語学の方法』(共著,岩波書店),『単語と文の構造』(岩波書店)など,訳書にサグ,ワソー『統語論入門 上・下』(共訳,岩波書店),ベイカー『言語のレシピ』(岩波書店)などがある.

書評情報

月刊言語 2006年12月号
ページトップへ戻る