憲法という作為

「人」と「市民」の連関と緊張

グローバル化,新自由主義が各国を席巻するなか,近代憲法の論理構造の意味を改めて追究する.

憲法という作為
著者 樋口 陽一
ジャンル 書籍 > 単行本 > 法律
刊行日 2009/11/26
ISBN 9784000227766
Cコード 3032
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 304頁
在庫 品切れ
グローバリズム・新自由主義,ポストモダン思潮の波は,フランス第五共和制憲法の基本概念である「人」「市民」「共和国」にも見直しを迫っている.日本やドイツの憲法状況,戦後憲法学の言説などを検証しつつ思索を重ね,近代立憲主義憲法の論理構造の意味を改めて追求する,著者待望の最新論集.

■編集部からのメッセージ

 この本の企画について最初に樋口先生と話し合ったのは,今から9年前,早稲田大学の先生の研究室でした.ここにようやく,『憲法という作為』というタイトルのもと,本書を刊行することができました.本書は21世紀に入ってからの著者の研究を集成したものです.とはいえ,単なる論文集とは違って,(V章をのぞく)どの論文にも初出時の原型をとどめないほどの大幅な加筆・修正が行われ,それぞれの論文が体系的・有機的に構成されています.扱われるテーマも,憲法学界のホットなテーマはもちろん,多種多様な視点・切り口で書かれ(一例として本文から見出しを拾うと,「法学における歴史的思考」「『戦後民主主義』における国家――丸山真男に即して」等々),まさに「樋口憲法学の到達点」と呼ぶにふさわしい内容に仕上げられています.これまで樋口先生が,私どもから出された本は岩波新書や岩波ブックレットなど,一般読者向けのものだけで,本格的な論集を出されたのは今回が初めてのことです.編集作業の過程で樋口先生は何度も,「これが私の最後の論文集になる」とおっしゃっていました.「最後」などとおっしゃらず,今後ますますの研究のご発展とご活躍されますことを願ってやみません.
 はじめに――本書の基本構図
第 I 章 個人と「共和国」思考
第1節 ルネ・カピタン再読
第2節 「国家からの自由」と「公共としての国家」の間
第3節 あらためて西欧近代の「普遍性」を考える
第II章 個人=「市民」と公共
第1節 ルソーとトクヴィル――対照と補完
第2節 「たたかう民主制」と「脱道徳論的」自由観のはざま
第3節 憲法論にとっての「競争」とその規制
第III章 個人=「人」の権利
第1節 Human Rightsとdroit de l’homme の含意――広義の人権と狭義の「人」権
第2節 人間の尊厳vs人権?――ペリュシュ判決を素材として
第3節 基本権保障にとっての憲法と民法
第IV章 法および法学と歴史
第1節 法が歴史を書く?――「記憶の法律」をめぐって
第2節 法学における歴史的思考の意味――憲法学の場合
第V章 読書ノート
 あとがき
樋口陽一(ひぐち よういち)
1934年生まれ.憲法専攻.1957年東北大学法学部卒業.東北大学法学部,パリ第2大学,東京大学法学部,上智大学法学部,早稲田大学法学部などで教授・客員教授を歴任.日本学士院会員.
『近代立憲主義と現代国家』(勁草書房,1973年),『近代国民国家の憲法構造』(東京大学出版会,1994年),『憲法と国家――同時代を問う』(岩波新書,1999年)『憲法 近代知の復権へ』(東京大学出版会,2002年),『国法学――人権原論 補訂版』(有斐閣,2007年)など著作多数.
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