国際通貨制度の選択

東アジア通貨圏の可能性

通貨統合でも自由変動相場制でもない,国際通貨制度の第三の道を唱える著者の主要論考を編集・翻訳.

国際通貨制度の選択
著者 ジョン・ウィリアムソン , 小野塚 佳光 編訳
ジャンル 書籍 > 単行本 > 経済
刊行日 2005/08/26
ISBN 9784000228534
Cコード 0033
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 220頁
在庫 品切れ
「通貨統合」か「自由変動相場制」か? ブレトンウッズ体制が崩壊して約30年.試行錯誤の末,二極化したかに見える国際通貨制度の選択問題に対し,第三の道である「中間的選択肢」を唱える著者の主要論考を日本語版用に編集.現実経済に柔軟に対応する「中間的選択肢」の選択による東アジア通貨圏の可能性にも言及する.

■編訳者からのメッセージ

為替レートの大きな変動に,投資や貿易が妨げられる不安,不利益を予想し,あるいは通貨危機や円高による雇用の破壊を恐れる感覚は,多くの日本人(そしてアジアの諸国民)が共通に抱いているものです.
 ジョン・ウィリアムソンは現代の変動レート制を批判する重要な論点を示してきた経済学者です.彼は変動レート制も通貨統合も過度に理想化することなく,「中間的な選択肢」を唱えてきました.この論集によって,読者は国際通貨制度を考える上での重要な視点を得ることができるでしょう.
 ワシントンDCで初めてウィリアムソンにインタビューした際,彼はリチャード・クーパーが彼に示した厳しい批判を残念そうに振り返りました.為替レートを管理する者は,独裁国家や管理社会にも道を開くのか? それは政治経済学の古い論争の一つです.
 バークレーでアンケングリーンにインタビューしたとき,なぜあなたは市場が決める為替レートをそれほど信頼できるのか? と私は問いました.すると,彼は逆に,何故多くの日本人は政府が為替レートを正しく決められると思うのか? と反問されました.
 日本やアジアが将来の通貨秩序をどのように描くか,日本にとっても,将来の世界経済にとっても,重要な問題です.協調や対立を繰り返しながらも,平和と経済的繁栄を維持できるように,この論集が明確な理念を見出す助けになってほしいと思います.

小野塚佳光

翻訳論集への序文
用語解説

I
第1章 ブレトン・ウッズから二極化へ
――為替レート制度に関する思想の展開,1971~2001年――

II
第2章 新興市場のための為替レート制度
――中間的選択肢の復活――

III
第3章 中間的な為替レート制度に関する思想の変遷
第4章 ドル化はどこでも意味があるわけではない
第5章 ワシントン・コンセンサスを超えて
第6章 世界の為替レート体制が東アジアの諸通貨にもつ意味
第7章 為替レート制度の選択
――国際的な経験は中国の決断に参考となるか――

参考文献
訳者あとがき
索引
ジョン・ウィリアムソン(John Williamson)
1937年生まれ.58年ロンドン大学経済学部(LSE)卒.63年プリンストン大学でPh.D.取得.英国財務省,国際通貨基金(IMF)等を経て81年以降アメリカの国際経済研究所(Institute for International Economics)のSenior Fellow.専攻は国際経済学,国際金融論.主な邦訳に『為替レートと国際協調』(M.H.ミラーと共著,天野明弘監訳,東洋経済新報社,1988年),『世界経済とマクロ理論』(須田・奥村・柳田訳,多賀出版,1990年)がある.
編訳者
小野塚佳光(おのづか・よしみつ)
1959年生まれ.83年同志社大学卒,88年京都大学大学院経済学研究科博士課程退学.愛媛大学を経て,98年より同志社大学経済学部教授.専攻は国際政治経済学.主な著作に『グローバル化の政治経済学』(共編,晃洋書房,1998年),訳書に『国際金融の政治学』(J.A.フリーデン著,共訳,同文舘出版,1991年)がある.

書評情報

週刊エコノミスト 2012年9月11日号
経済セミナー 2005年12月号
週刊東洋経済 2005年11月5日号
日本経済新聞(朝刊) 2005年10月22日
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