混迷するシリア――歴史と政治構造から読み解く


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編集部だより
「民主化」か,「内戦」か,それとも「独裁体制」の存続か

著者からのメッセージ

 民衆の意思がこれほどまでに無視された「民主化」があっただろうか? 2011年3月半ば以降,今日に至るまで,シリアで続く混乱に目を向けるたびに,私の中でつねにこの問いが浮かびます.
 現下のシリアの紛争は,チュニジアに端を発するいわゆる「アラブの春」が波及するかたちで始まりました.これは当初,「独裁政権」対「民主革命」という「アラブの春」のステレオタイプに沿って展開しているかのように見え,またそのように伝えられてきました.しかし,時の経過とともに,事態はこうした図式では理解できないほどにまで複雑化しています.
 国内では,強大な軍事力をもって弾圧を続ける政府と,アル=カーイダとの共闘に何ら躊躇もしない武装集団との間で暴力の応酬が行われ,また欧米諸国,ロシア,中国,湾岸アラブ諸国,トルコ,イランといった国々は,それぞれの政治的な思惑のもとで一方的な干渉を続け,対立を煽っているかのようです.こうした一連の政治的な綱引きのなかで,「民主化」の主人公であったはずの人々は完全に疎外され,生命の危険に曝され,その多くが国内外で避難を余儀なくされています.
 本書は,シリア情勢がなぜこれほどまでに混迷を極めているのかを,歴史,政治構造,国際関係などに着目し,解明することを目的としています.読者のみなさんにとって,本書が苦悩するシリアの人々の今に触れるためのきっかけとなれば幸いです.
青山弘之


著者紹介

青山 弘之(あおやま ひろゆき)
 1968年生まれ.東京外国語大学総合国際学研究院国際社会部門准教授.専攻は,現代アラブ政治,思想,歴史.東京外国語大学アラビア語学科卒業,一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学.パリ大学付属在ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所〈IFPO〉)研究アラビア語修得課程修了.同研究所共同研究員,アジア経済研究所地域研究センター中東研究グループ研究員等を経て現職.著書に『中東・中央アジア諸国における権力構造 アジア経済研究所叢書1』(共編,岩波書店,2005年)『現代シリア・レバノンの政治構造 アジア経済研究所叢書5』(共著,岩波書店,2009年)等がある.また,ウェブサイト「シリア・アラブの春(シリア革命2011)末記」 http://www.ac.auone-net.jp/~alsham/ フェイスブック版,ツイッター版もあり)を運営し,詳細な情報を発信している.


目次


第1章 バッシャール・アサド政権は「独裁体制」か?
1 モザイク社会としてのシリア
2 「ジュムルーキーヤ」への道
3 権力の二層構造
4 亀裂操作
5 市民社会建設に向けた実験
第2章 東アラブ地域の覇者
1 アラブ・イスラエル紛争――地政学的ライバル
2 レバノンへの関与――二つの国家,一つの人民
第3章 反体制勢力の「モザイク」
1 交錯する類型
2 反体制運動の高揚
第4章 「アラブの春」の波及
1 改革要求運動
2 体制打倒運動
第5章 「革命」の変容
1 シリア化――反体制勢力の迷走
2 軍事化――武装集団の台頭
3 国際問題化――混乱のさらなる助長
終章 弾圧と「革命」に疎外される市民

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