砂漠と文明

アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明論

過酷な砂漠こそ文明の形成地であり,現在の先進諸国は後発文明ではないか.豊富な調査研究成果を基に新たな人類文明史観を提起する.

砂漠と文明
著者 嶋田 義仁
ジャンル 書籍 > 単行本 > 歴史
刊行日 2012/09/26
ISBN 9784000230445
Cコード 0022
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 286頁
在庫 品切れ
主な文明や世界的宗教は,過酷な砂漠に近い乾燥地域,とりわけ旧大陸の内陸乾燥地域で形成されてきた.砂漠こそ文明の形成地であり,ヨーロッパや日本などの湿潤多雨森林地帯の文明は,その辺境に形成された後発文明ではないか.30年におよぶ豊富な調査研究成果を基に,従来の文明史観を覆す新たな人類文明史観を提起する.


■著者からのメッセージ
人類文明はいかなる生態環境の中で成立し発展したのか.湿潤森林地域なのか,乾燥地域なのか.そう問うならば,主要な人類文明のほとんどが,砂漠をふくむ乾燥地域,とりわけ旧大陸の中央部に横たわるアフロ・ユーラシア内陸乾燥地域で形成されてきたことに気づく.(中略)人類文明史を客観的にふりかえってみるなら,ヨーロッパや日本などの湿潤多雨森林地帯の文明こそが,アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明の影響下,その辺境に形成された後発文明として考えられる.(中略)人類文明の形成を,アフロ・ユーラシアの乾燥地域中心に考え直すならば,新たな人類文明史観を描きだすことができる.本書で,その試みに以下つきあっていただきたく思う.さらには,生命進化史上における人類の位置づけが何であり,そもそも人類とは何か,という問題にも,新たな光を投げかけてもみたい.
(本文より)


■編集部からのメッセージ
近代の一方向的な歴史観に疑問をもち,世界の乾燥地域の調査を行った著者は,そこに豊かな交易の文化と歴史があったことを発見し,これまでとは全く異なる「アフロ・ユーラシア内陸乾燥地域論」という人類史的な視座を持つにいたる.本書は,30年以上に及ぶ調査と豊富な分析データから,従来の文明史観を覆す新たな人類文明史観を提起する著者のライフワークといえる力作である.
序 人類文明のパラドックス

I 地球人類学への視座
1 「完全な人間(Man, Homme)」の思想と地球人類学的人間観
2 地球人類学の先駆者,和辻哲郎の風土文明論
3 京都学派の生態人類学再考
4 ベルグソンの創造的生命進化論
5 モンスーン風土の稲作文化研究
6 レヴィ=ストロースの構造主義人類学とバランディエの政治人類学

II サハラ文明と黒アフリカ文明
1 モロッコ紀行―サハラ文明の一大拠点
2 サハラ文明―交易とオアシスの多部族文化
3 ニジェール川内陸デルタのコスモポリタニズム文明―サハラ南縁巨大氾濫原世界
4 黒アフリカ牧畜民の形成したコスモポリタン王国―レイ・ブーバで考える
5 黒アフリカ文明の発見

III アフロ・ユーラシア内陸乾燥地域における人間生活の基本構造
1 アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明
2 地球上における乾燥地域の分布
3 草原世界に成立した狩猟文化と牧畜文化
4 乾燥地域と種子作物農業の発展地域
5 灌漑文化の文明形成力
6 牧畜文化の文明形成力
7 乾燥地域の豊かさの構造

IV アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明の四類型
1 牧畜パワーによって支えられたアフロ・ユーラシアのグローバル化運動
2 アフロ・ユーラシア内陸乾燥地域の生態学的四類型
3 アフロ・ユーラシア内陸乾燥地域の文明の四類型
4 アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明論のさらなる展開のために

V アフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明と人類史
1 人類の形成と乾燥地域―人間の二足歩行と地球環境の乾燥化
2 人類の地球上への拡散運動と乾燥地域
3 人類の文明形成と乾燥地域―家畜文化と都市・国家文明の形成
4 近代文明の誕生―海洋中心の物流と軍事システム
5 生命・人類史の新モデル―人類の空間的時間的展開としての人類史
6 地球文明時代の課題

参考文献
おわりに
嶋田義仁(しまだ よしひと)
1949年生.名古屋大学大学院文学研究科教授.文化人類学・地域研究・宗教学.京都大学文学研究科博士課程修了(宗教学専攻),フランス社会科学高等研究院(E.H.E.S.S)博士課程修了(民族学専攻),澁澤賞(1986),NIRA政策研究・東畑賞(1998),和辻哲郎文化賞(1999),沙漠学会論文賞(2001)を受賞.静岡大学人文学部を経て2000年より現職.著書に『異次元交換の政治人類学』(勁草書房),『牧畜イスラーム国家の人類学』(世界思想社),『稲作文化の世界観―『古事記』神代神話を読む』(平凡社:和辻哲郎文化賞),『優雅なアフリカ―一夫多妻と超多部族のイスラーム王国を生きる』(明石書店)等多数.共著に『地球環境史からの問い』『岩波講座 宗教2 宗教への視座』『岩波講座 天皇と王権を考える8 コスモロジーと身体』『岩波講座 哲学14 哲学史の哲学』(岩波書店),『アフリカの都市的世界』(世界思想社)等多数.
ページトップへ戻る