情報人類学の射程

フィールドから情報社会を読み解く

多様な情報社会のありよう,人間と情報メディアの関係を比較分析し,近未来の情報社会を読み解いてゆく.

情報人類学の射程
著者 奥野 卓司
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2009/08/25
ISBN 9784000234696
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 310頁
在庫 品切れ
情報メディアはわれわれの生活に深く入り込み,人間関係や組織形態から価値観・感性までも変容させた.情報人類学はその変化し続ける人間の「現場」にこだわり,フィールド調査で新しい視点を提供してきた.本書は世界の多様な情報社会のありよう,人間と情報メディアの関係を比較分析し,近未来の情報社会を読み解いてゆく.

■著者からのメッセージ

情報人類学は,採集狩猟社会あるいは低次農耕社会,遊牧社会などを中心とした伝統的社会を対象に成果を上げてきたこれまでの文化人類学の調査・解読方法や,そこからの学びを用いて,今日の世界各地で展開される情報化による多様な社会・文化の変容のありようや,人間と情報メディアの関係を比較分析し,その結果をふまえて,近未来の情報社会の持続的な多様な社会への展開を研究していくことを目的としている.
 この領域の提唱者の一人として私は,各地域の社会における情報メディアと人間との関係を探求するため,アメリカと日本を中心に,東アジア,西アジア,ヨーロッパなどでの情報メディアと情報コンテンツの展開のありようをフィールドワークし,それらのメディア,コンテンツに関わる人々にインタビューするなどの方法で調査研究してきた.その具体的な調査内容とそこから得た知見のいくつかを,この書で述べていければと願っている.

(本文より

■編集部からのメッセージ

台湾,韓国,中国などの東南アジアや,イスラエル,インド,フィンランド,アメリカのシリコンバレー,そして日本の秋葉原……など最先端研究のラボから路地裏の薄暗い雑居ビルまで入り込み,世界の常に変化し続ける人間の「現場」にこだわり,フィールド調査を元に,新しい視点を提供してきたのが,「奥野学」とでもいうべき新しい学的領域であった.彼の情報人類学は,従来の「社会情報学」ないしは「情報社会学」や文化人類学の調査・解読にコンピュータを利用する「コンピュータ民族学」とは一線を画し,文化人類学の調査・解読方法によって,世界各地の多様な情報社会のありよう,人間と情報メディアの関係を比較分析し,近未来の情報社会を読み解いてゆく.本書はその「奥野学」の集大成であり,これからの「情報社会」を考えるときの基本的な書となるだろう.
第1章 情報人類学とは
1 情報人類学の研究領域
2 情報人類学の方法――フィールドノートから
3 情報人類学の方法――質的調査を越えて
4 情報人類学の展望
第2章 情報とメディア――変容する定義と関係性
1 情報とは何か
2 メディアの発生
第3章 情報社会論の系譜
1 工業社会の行き詰まりから生まれた情報社会論
2 「脱」した工業社会像を求めて
3 梅棹忠夫ら日本の論者たちの貢献
4 マクルーハンに始まる「メディア論」の系譜
5 「声の文化」から「文字の文化」へ
6 トフラー「第三の波」の妄想と現実
7 「情報社会論」の諸潮流
第4章 情報化による人間関係・家庭・社会の変容
1 「第三の社会」の浮上
2 「第三の社会」の概要
3 ゆるやかな紐帯の人間関係へ
4 情報化による家庭と家族の変容――家メディアから個メディアへ
5 情報化による社会の変容
第5章 情報コンテンツの時代――ジャパンクールの浸透と変容
1 「モノづくり」から「モノ語りづくり」へ
2 欧米で評価されたジャパンクール
3 アジアに広がるジャパンクール――台湾の「哈日族」
4 アジアに広がるジャパンクール――韓国の「N世代」
5 アジアに広がるジャパンクール――上海の客家サブカルチャー
6 アジアにおける日本製コンテンツの人気の理由
7 「アニメの殿堂」か「聖地巡礼」か
8 コンテンツから媒介コミュニケーションへ
9 江戸時代に学ぶコンテンツビジネス・モデル
 参考文献
 あとがき
奥野卓司(おくの たくじ)
1950年京都市生まれ.関西学院大学大学院社会学研究科教授.学術博士.情報人類学・メディア表象論専攻.京都工芸繊維大学大学院修了.米国イリノイ大学人類学部客員准教授,甲南大学文学部教授などをへて,1997年から現職.2008年から国立国際日本文化研究センター客員教授を兼任.著書に『ジャパンクールと江戸文化』 『日本発イット革命――アジアに広がるジャパン・クール』 『第三の社会』(岩波書店),『人間・動物・機械――テクノ・アニミズム』(角川新書)など多数.訳書に『ビル・ゲイツ』(翔泳社)など多数.
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