生と死の美術館

西洋と日本の美術品50点余をオールカラーで掲載,各時代・地域の生・病・老・死を読み解く.

生と死の美術館
著者 立川 昭二
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2003/02/27
ISBN 9784000236348
Cコード 0071
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 350頁
在庫 品切れ
古代ギリシアの彫刻からピカソまで,源氏物語から現代日本の版画まで,西洋と日本のオールカラー50余点の作品を掲げ,筆者は各時代・各地域の人びとの生・病・老・死を語る.「イエスの集団はまず医療集団だった」「江戸時代の歯医者は大道芸人」-意外な事実を含め,筆者は丹念に各作品を読み込んでいく.また,現代の医療にとって何が必要か,これらの作品を通して,歴史に問いかける.著者の長年にわたる作業を集大成した1冊.


■編集部からのメッセージ
 「イエスの集団はまず医療集団だった」「江戸の歯医者は大道芸人」――こんな意外な事実を含め,西洋と日本の絵画や彫刻(オールカラー)を医療史家が読み解く美術エッセイ集.収録された作品は,古代ギリシアの彫刻から現代日本の版画にいたるまで,54点におよびます.
 レンブラントの筆になる解剖風景,ゴヤの瀕死の自画像,ゴッホの描く病院風景,竹久夢二の「病むおじいちゃん」など,各時代・各地域の人びとの生・病・老・死の実態を興味深く解説.歴史をたどるなかで,ひかえめながら現代医療についての問いも発します.病いや死,医療に関心を持つ読者,そして美術作品に興味を持つ広範な読者におくる1冊です.
◆西洋編
1 古代ギリシアの奉納板
 夢と現実,医の原景
2 古代ギリシアの壺絵
 人間愛あるところ
3 古代ギリシアの墓碑
 死者と生者の共存
4 「エヒテルナッハ福音聖句集」
 神の手,人の手
5 フラ・アンジェリコ「助祭ユスティニアヌスの治療」
 祈りと奇蹟
6 レオナルド・ダ・ヴィンチ「リッタの聖母」
 乳房憧憬
7 ミケランジェロ「ピエタ」
 星へのいざない
8 グリューネヴァルト「聖アントニウスの誘惑」
 幻想の治癒力
9 ブリューゲル「死の勝利」
 メメント・モリ
10 レンブラント「デイマン博士の解剖講義」
 人体を開く
11 ダウ「医者の訪問」
 窓辺の診察
12 フェルメール「天秤を持つ女」
 いのちを包む
13 ホガース「放蕩息子の遍歴」
 見世物病院
14 ゴヤ「ゴヤと医者アリエーダ」
 創造への執念
15 ミレー「オフェーリア」
 少女と水と死
16 カリエール「病気の子ども」
 抱かれて生くるもの
17 ファイルズ「ドクター」
 昨日までの母親
18 ゴッホ「アルルの病院」
 生の悲しみ
19 ムンク「春」
 病者の光学
20 ロートレック「検診」
 女の戦争
21 ピカソ「科学と恩寵」
 手当て,医の原点
22 ケーテ・コルヴィッツ「困窮」
 労働者のピエタ
23 クリムト「医学」
 「医学」の行方
24 ヴュイヤール「教授の回診」
 親密な時間
25 ジャン・コクトー「輸血」
 与える者はゆたかに
26 ベン・シャーン「リルケ『マルテの手記』より」
 禁じられた死
27 ジャンセン「老人と子供」
 聖なるトポス,翁と童
28 グランマア・モーゼス「ドクター」
 いのちの讃歌

◆日本編
29 興福寺「阿修羅」
 共悲共苦,切ないまなざし
30 「源氏物語絵巻」
 王朝人の生と死
31 「病草紙」
 絵巻に描かれた眼病手術
32 永観堂「みかえり阿弥陀如来」
 慈悲,ふり返る姿勢
33 「粉河寺縁起」
 遍歴する僧医
34 「春日権現験記絵巻」
 疫鬼横行
35 「法然上人絵伝」
 臨終行儀,往生の実践
36 新隆「やすらい祭」
 花鎮めの祭り
37 狩野正栄「芭蕉翁絵詞伝」
 心静かに臨終
38 秩父札所金昌寺「子育観音」
 いのちは授かりもの
39 国貞「おはん長右衛門」
 闇に消えたいのち
40 広重・豊国「雙筆五十三次」
 盲目の療治師
41 長谷川雪旦「江戸名所図会」
 江戸くすり通り
42 川原慶賀「シーボルト瀉血図」
 蘭館医悲傷
43 渡辺崋山「一掃百態」
 路上の歯医者
44 「飲食養生鑑・房事養生鑑」
 絵とき養生訓
45 「新撰病乃雙紙」
 医業の渡世
46 周延「ヘボン手術図」
 美国名医と義足名優
47 国明「娼妓黴毒病院検査之図」
 検梅悲話
48 浅井忠「当世風俗五十番歌合」
 注射と包帯
49 小杉未醒「病室の写生」
 転地有情
50 竹久夢二「病むおじいちゃん」
 看とりの原風景
51 太田聴雨「種痘」
 一瞬の針先
52 蕗谷虹児「胡蝶の夢」
 恍惚死への誘い
53 三橋節子「花折峠」
 生と死の流れ
54 柄澤 齊「死と変容 旅」
 魂の旅

あとがき
引用文献・参考文献
立川昭二(たつかわ・しょうじ)
1927年生れ.早大文学部史学科卒.現在,北里大学名誉教授.医療史,とくに文化史や心性史の視座から病いや死を追究.主な著書に,『生と死の現在』『歴史紀行 死の風景』『病気の社会史』『病いの人間史』『臨死のまなざし』など.

書評情報

読売新聞(朝刊) 2003年5月18日
産経新聞(朝刊) 2003年5月5日
朝日新聞(朝刊) 2003年4月28日
日本経済新聞(朝刊) 2003年4月13日
週刊ポスト 2003年4月4日号
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