先端芸術宣言!

メディア,テクノロジー,場の創造,生命と身体など,現在の表現の実践と理論に関する問題をわかりやすく説く.

先端芸術宣言!
著者 東京芸術大学先端芸術表現科
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2003/06/27
ISBN 9784000236355
Cコード 0070
体裁 A5 ・ 並製 ・ カバー ・ 242頁
在庫 品切れ
現代社会の中での新しい表現のあり方を問うべく設立された東京芸大先端芸術表現科の全教官が結集し,メディア,テクノロジー,場の創造,生命と身体など,現在における表現の実践と理論に関する最先端の問題をともに考え,わかりやすく説きます.誰もがクリエーターとなれる時代に贈る,創造の先端への招待!

■著者からのメッセージ

私たちが生きて社会に関わっていく活動には,すべて創造という問題が入っています.芸術を少数の芸術家の間から,広く社会にひらき,その成立するプロセスから場まで含めて考えていくとき,創造することは社会や人間を深く問う,誰もが考えなければならない問いとしてたちあがってきます.本書は創造ということを新しくとらえなおし,それぞれの生き方や関係をくみかえていくための思想とワザが満載されています.


これまでの芸術表現は技巧の上に思考や精神が合体した形式性や物質性に重点が置かれてきた.そうした形式化や枠組みにあらがう形でさまざまな前衛芸術運動が20世紀にはあらわれたわけだが,今要請されている表現はそうしたかつてのアヴァンギャルドの持っていた方向性とも異なり,もっと社会や時代に自己や表現を開いてゆくプロセスが重要視されてきている.美術館やギャラリーでなく,ワークショップやプロジェクト,パブリック・アートやコミュニティ・アートの重要性が叫ばれているのも,そうした流れのゆえだろう.そこでは従来の一方通行の関係ではなく相互的な関係が前提とされているからだ.芸術の歴史でコミュニケーションということがこれほど注目された時代はなかったのかもしれない.芸術の場が新しいコミュニケーションの場としても機能してゆくことが求められている.注目されているのは場が創り出す運動に意味や価値をみつけてゆくことである.

コミュニケーションという言葉には,メッセージの伝達という意味があるわけだが,それが成立するためには,相互の関係性の確立,そのための場の成立と保証,さらにその上でのメッセージの共有といった過程が踏まれて,はじめてコミュニケーションが確立される.もちろん,人間あってのコミュニケーションであるわけで,その背景には人間の存在が大前提となっている.人間をどのような存在であると,とらえるかによって,そのコミュニケーションのあり方も,コミュニケーションにおける価値観のあり方も変わってくる.このようにコミュニケーションに焦点を当てていった場合には,従来の作家のように自己の内部との対話を物質と技巧を通して刻み込む,という内向した,閉じたコミュニケーションの回路では無い,開かれた回路の生成を目指した活動が,作り手に求められることになる.つまり,美術という文脈を,コミュニケーションという視点からとらえる美術ということであり,美術館という制度によって保護されなくても成立する美術を作り出すということである.しかし,これはそれほど簡単なことではない.一般に美術館から離れると言うことは,美術という制度を失うことであり,それは同時にその背景となる文脈を失うことになるからである.

ここでは,新たな場を作りださなくてはならない.しかもそれ自身が独自の文脈を持っている必要がある.つまり,それが何のために作られたものであるかという理由がそれ自身に,自己再帰的に含まれている必要があるということだ.

(本書より
はじめに 藤幡正樹


第1章 造形から表現へ
Theory and Practice 01
「フィールド・ワークス」とパラレル・リアリティ 藤幡正樹


第2章 形式から関係へ
Theory and Practice 02
関係のデザイン 伊藤俊治


第3章 自己と他者の間
Theory and Practice 03
他者と自己の投擲 長谷部浩


  アートプロジェクト実践のスキーム 川俣 正+桂 英史


第4章 センサーとシステム
Theory and Practice 04
日常への眼差し―取手アートプロジェクトの実践 渡辺好明


第5章 プロセスとプロジェクト
Theory and Practice 05
未知へ向かって投企させる 佐藤時啓


第6章 相互作用の創造
Theory and Practice 06
パブリックアートと相互関係 たほりつこ


第7章 作品から界面へ
Theory and Practice 07
拡張するデザインプロセス 曽我部昌史


第8章 ワークショップと組織化
Theory and Practice 08
姿に描かれる姿 日比野克彦


第9章 関係から発見へ
Theory and Practice 09
コミュニティデザインという互酬のゲーム 桂 英史


第10章 共鳴場としての教育へ
Theory and Practice 10
ポストテクノロジーの条件 古川 聖


第11章 アーティストからアクティヴィストへ
Theory and Practice 11
Artist in the Street 木幡和枝


第12章 構想と実現化
Theory and Practice 12
ものからことへ 川俣 正


  おわりに 川俣 正


  ・ワークショップ workshop ・学習 learning
  ・日常生活 everyday life ・プロジェクト project
  ・インタラクティヴ interactive ・場 site
  ・地域性(ローカリティ)locality ・メディア media


  あとがき         伊藤俊治


  著者紹介
藤幡正樹 伊藤俊治 長谷部 浩 渡辺好明
佐藤時啓 たほ りつこ 曽我部昌史 日比野克彦
桂 英史 古川 聖 木幡和枝 川俣 正

書評情報

DiVA 2004年春号
美術手帖 2003年9月号
週刊朝日 2003年8月1日号
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