事典 世界音楽の本

編者からのメッセージ/構成/編者略歴/目次



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あらゆる文化が出会う波頭 生まれ変わり続ける響き 6つの章の126項目を1冊で読む

編者からのメッセージ

 「音楽は普遍的な言葉」「音楽に国境はない」とよく言われる.音楽にはたしかにそういう一面がある.しかしその言葉が使われるときは,誰にどのような文脈で使われているのかを知ることも重要だ.かつては西洋の古典・近代音楽から抽出された音楽の概念,もしくはそこに修正を加えたものが「普遍的」な尺度であるかのようにみなされていたこともある.ところがその概念からこぼれてしまう音楽もまた世界各地には多数存在している.しかも世界の音楽文化の多くは20世紀以降の記録・通信媒体の劇的な普及に加速され,相互に影響を与え合いながら日々変貌を続けている.その中をわれわれはめまいをおぼえながら旅人のようにさまよっていると言っていいかもしれない.その豊かさをどうとらえ,どう伝え,その変化にどう関わっていくのか.この『事典 世界音楽の本』がそんな未知の旅の途上にある人々のよき伴侶となることを願ってやまない.
(編者のひとりとして 北中正和)


構成

〈6つのセクションで構成〉
リズム,音色,制度,20世紀音楽史,日本音楽の20世紀,グローバリズムと現代の問題,の6つの章で構成,6つの概論をおいて約5000字で書きおろした120項目を束ねます.
〈一冊講座的な読む事典です〉
20世紀を中心に,近代〜現代の音楽文化の特徴や歴史・社会的背景,アイデンティティと変革の力学から音楽を考えます.
〈音楽の学問研究と実践のリンク〉
音楽学・社会学・文化人類学などの成果に寄りつつ,専門研究とは異なる実践の視点も盛り込み,読者が興味をもって探求できる項目です.
〈発見のある解説文〉
「世界の音楽いろいろ」といった網羅ではなく,複数の文化の関係や変化のプロセスを中心に,伝統や古典,多様なポップ・ミュージックの展開を見渡します.


編者略歴  ※ 編者名欄の数字は執筆項目番号です

徳丸吉彦(とくまる よしひこ)
2/2.1/2.2/2.2.1/2.2.2/3.1.3.1/6.3
音楽学.聖徳大学教授,放送大学客員教授,お茶の水女子大学名誉教授.『民族音楽学理論』『岩波講座 日本の音楽アジアの音楽』(共編著)

高橋悠治(たかはし ゆうじ)
1/1.1/1.1.3/1.1.5/1.2/1.3/1.5/1.5.5/2.2.3/2.3/2.4/2.5/4.1.2/6.6
作曲家,ピアニスト.『音の静寂静寂の音』『高橋悠治コレクション1970年代』『音楽の反方法論序説』
イラストレーション:柳生弦一郎

北中正和(きたなか まさかず)
4/4.1/4.2/4.2.5/4.3/4.4/4.4.2/4.4.3/6/6.4
音楽評論.『世界は音楽でできている』『毎日ワールドミュージック1998-2004』『ギターは日本のうたをどう変えたか』

渡辺 裕(わたなべ ひろし)
3/3.1/3.2/3.3/3.3.2.2/5/5.1/5.1.2/5.2/5.3/5.3.4
音楽学.東京大学大学院人文社会系研究科教授.『考える耳』『日本文化:モダン・ラプソディ』『聴衆の誕生』


目次

0 世界音楽の本   徳丸吉彦 高橋悠治 北中正和 渡辺 裕
1 リズム――世界音楽の身体 あるいは 時間の側から   高橋悠治
1.1 足のリズム   高橋悠治
  1.1.1 歩きとビート   北川純子
  1.1.2 行列   北川純子
  1.1.3 方向と中心   高橋悠治
  1.1.4 不均等なリズム    竹間ジュン
  1.1.5 支点分割運動とポリリズム    高橋悠治
1.2 手のリズム   高橋悠治
  1.2.1 イスラーム文化のリズム   水野信男
  1.2.2 手がつくるリズム   寺田吉孝
  1.2.3 朝鮮半島のチャンダン   植村幸生
1.3 息のリズム   高橋悠治
  1.3.1 アジアの声 息のリズム   谷 正人
  1.3.2 笛のリズム,尺八   志村 哲
1.4 リズムの文化横断   北川純子
  1.4.1 北米のシンコペーション   北川純子
  1.4.2 アフロ・キューバン   北川純子
  1.4.3 機械のリズム   北川純子
1.5 声と歌   高橋悠治
  1.5.1 声色   山田真司
  1.5.2 太鼓ことば・口三味線   山本宏子
  1.5.3 かたる となえる   井口淳子
  1.5.4 歌の場   高松晃子
  1.5.5 ちがう声がいっしょに歌う   高橋悠治
  1.5.6 歌芝居   増野亜子

2 音色――世界音楽の感性 音響空間   徳丸吉彦
2.1 音色とはどういうものか   徳丸吉彦
2.2 楽器   徳丸吉彦
  2.2.1 楽器の分類   徳丸吉彦
  2.2.2 楽器と音楽家の社会的な位置   徳丸吉彦
  2.2.3 「近代化」される楽器   高橋悠治
  2.2.4 西洋楽器の改良・変革・演奏方法の変化   若林忠宏
2.3 音程   高橋悠治
  2.3.1 音程の機能   高松晃子
  2.3.2 音組織   高松晃子
  2.3.3 調律法   高松晃子
2.4 旋律   高橋悠治
  2.4.1 表象   山田陽一
  2.4.2 旋律型   藤田隆則
  2.4.3 装飾 変奏 即興   山田陽一
  2.4.4 記譜法   藤田隆則
2.5 ノイズとエレクトロニクス   高橋悠治
  2.5.1 音響合成   志村 哲
  2.5.2 記録編集   佐々木 敦
  2.5.3 演奏装置   大友良英

3 制度――世界音楽の法 あるいは 規制と管理   渡辺 裕
3.1 国民国家権力下の音楽制度   渡辺 裕
  3.1.1 軍隊・規律・産業と近代西洋音楽   大熊ワタル
  3.1.2 国民国家の成立とオペラ   岡田暁生
  〈3.1.3 音楽教育制度〉
   3.1.3.1 専門技術教育としての音楽専門学校   徳丸吉彦
   3.1.3.2 演奏技法と身体   岡田暁生
  3.1.4 音楽祭   松本 彰
3.2 世界資本主義下の音楽制度   渡辺 裕
  3.2.1 音楽著作権と楽譜出版社   増田 聡
  3.2.2 音響機器産業の発展とレコード産業   生明俊雄
  3.2.3 楽器製造業の近代化   田中健次
  3.2.4 音楽市場とマネージメント   安田昌弘
3.3 音楽学と音楽文化   渡辺 裕
  〈3.3.1 世界音楽学の形成史〉
   3.3.1.1 植民地調査と比較音楽学の成立   山口 修
   3.3.1.2 文化相対主義と民族音楽学   卜田隆嗣
   3.3.1.3 民族音楽学の現在   輪島裕介
  〈3.3.2 聴衆の形成〉
  3.3.2.1 批評,プロデュース,聴衆   伊東信宏
   3.3.2.2 聴衆の変容   渡辺 裕

4 20世紀音楽史――世界音楽の精神 あるいは 創造と変化   北中正和
4.1 世界音楽の成立   北中正和
  4.1.1 西洋中心主義の衰退   細川周平
   4.1.1.1 調性音楽の解体   杜 こなて
   4.1.1.2 アメリカのジャズ・エイジとポピュラー音楽   浜野サトル
   4.1.1.3 1920〜30年代の中南米モダニズムと大衆音楽   東 琢磨
   4.1.1.4 ハワイアン   山内雄喜
  4.1.2 反体制音楽運動   高橋悠治
   4.1.2.1 労働者音楽運動   早崎えりな
   4.1.2.2 ヴァイマール共和国のキャバレー文化   大田美佐子
4.2 国家主義と統制   北中正和
  4.2.1 新古典主義   藤村晶子
  4.2.2 ナチ・ドイツの音楽   穴山朝子
  4.2.3 スターリン体制下の音楽   伊藤恵子
  4.2.4 亡命者たちのブロードウェイとハリウッド   大田美佐子
  4.2.5 映画音楽の戦略   北中正和
4.3 民主主義と民族解放   北中正和
  4.3.1 俳優たちと移民たちの歌   蒲田耕二
  4.3.2 スウィングからビ・バップ,ビ・バップからモダン・ジャズへ   浜野サトル
  4.3.3 都市中産階級の音楽   高橋道彦
  4.3.4 公民権運動とフォーク   五十嵐 正
  〈4.3.5 植民地独立と国民音楽の創出〉
   4.3.5.1 ウンム・クルスームとアラブ近代音楽   水野信男
   4.3.5.2 「第三世界」から「第四世界」へ    東 琢磨
   4.3.5.3 クロンチョンの国民音楽化   福岡正太
   4.3.5.4 カリプソとハイライフ   深沢美樹
   4.3.5.5 インドの映画音楽   杉本良男
4.4 反権力の音楽と開発独裁への抵抗   北中正和
  4.4.1 移民たちの音楽   東 琢磨
  4.4.2 亡命者のポップ   北中正和
  4.4.3 反体制歌手たち   北中正和
  4.4.4 1970年代ロック   五十嵐 正
  4.4.5 先住民族あるいは原住民の音楽   オキ
  4.4.6 都市開発とゲットーの音楽   石田昌隆
  4.4.7 祝祭文化の政治性   輪島裕介

5 日本音楽の20世紀   渡辺 裕
5.1 「近代化」政策   渡辺 裕
  5.1.1 国家共同体の歌   奥中康人
  5.1.2 学校と職場の共同体意識   渡辺 裕
  5.1.3 宗教共同体の歌   福本康之
  5.1.4 植民地音楽調査   植村幸生
  5.1.5 植民地と「皇民化」教育   劉麟玉
5.2 戦前の大衆音楽   渡辺 裕
  5.2.1 輸入ジャンルの「日本化」の諸相   細川周平
  5.2.2 オペラの「日本化」   袴田麻祐子
  5.2.3 「はやり唄」から「流行歌」へ   生明俊雄
  5.2.4 「新日本音楽」と楽器テクノロジー   千葉潤之介
  5.2.5 「民謡」の再編成   武田俊輔
  5.2.6 「作品」としての語り物   細川修一
5.3 戦中期から現代まで   渡辺 裕
  5.3.1 「国民歌謡」から「国民合唱」の時代   戸ノ下達也
  5.3.2 愛国浪曲と「語り物」の戦時体制   真鍋昌賢
  5.3.3 のど自慢とコンクール   細川周平
  5.3.4 うたごえ運動と「世界の民謡」   渡辺 裕
  5.3.5 沖縄民謡から島唄へ   久万田 晋
  5.3.6 日本の「ワールド・ミュージック」   輪島裕介
  5.3.7 歌謡曲からJ-POPへ   細川周平

6 グローバリズムと現代の問題   北中正和
  6.1 ファイル交換の自由と著作権の南北問題   渡辺健吾
  6.2 音楽は何を運ぶのか   安田昌弘
  6.3 伝統文化の保存と活性化   徳丸吉彦
  6.4 異種文化の流用   北中正和
  6.5 個の多様化とネットワーク   清野栄一
  6.6 さまざまな試みとそのゆくえ   高橋悠治

  索引
  参考文献および引用・図版出典
  図版リスト
  あとがき
  執筆者紹介

ダラブッカをうつ(イラク,バグダードにて)
「1.2.1 イスラーム文化のリズム」 水野信男 より

ターラを刻みながら声楽を学ぶ(タミルナードゥ州立音楽大学にて)
「1.2.2 手がつくるリズム――南インド古典音楽におけるターラの実践」 寺田吉孝 より

バリ島のアルジャにおけるガルー(王女)とその女官
「1.5.6 歌芝居」 増野亜子 より

マレーシア,クランタン州の影絵芝居ワヤン・クリット・シヤムを上演するダラン
「1.5.6 歌芝居」 増野亜子 より

Cyber尺八の演奏
「2.5.1音響合成 合成音の模索と終極,そしてノイズからの出発」 志村 哲 より




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