世界中のアフリカへ行こう


編者からのメッセージ
本書に登場するおもな国
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編集部だより
編者からのメッセージ

 「ナカムラさん,サッカーの試合でどちらが勝つかは,試合の前にきまっている.そういう話をごぞんじですか.アフリカの国と,アフリカの魔法が伝わった国では,たくさんのみなさんがそう考えています.魔法できまるのです」ムンシさんはニコニコしながらウェブ版『ナショナル・ジオグラフィック・ニュース』のプリントアウト記事をわたしに差しだした.(…)対戦する国のチームも,相手の呪いに勝つためにはよりつよい呪いを,という競争になるため,国際試合はまさに呪術合戦,やはり二〇〇六年のガーナ対ブラジル戦はあきらかにそうで,スタンドには試合中も「かけている」人の姿がみられたとか.(…)サッカーの国際試合をアフリカ文化の側からみると,そういう話になるのか.
 にわかに頭のスイッチが入った.カリブ海の小説やアフリカ系文化についての本,それにアフリカ大陸出身の英語で書く作家たちの小説などを自分なりに読んできて,もっとアフリカ文化のことを知りたいとおもいながら,どこか遠巻きに見ていたようなところがあった気がする.これはもう,おもしろすぎる.よく知らないのでなどといって怖気づいていては生きている甲斐がない.それに周りを見渡すと,アフリカやアフリカ由来の文化のことを研究し考えてきた人たちが,何人もいるではないか.この人たちの話を聞くことから始めればいいのだ.『世界中のアフリカへ行こう』という文化の旅案内の,もとになるアイディアが生まれた.
――「はじめに」より


本書に登場するおもな国

■ アフリカ
ケニア,コンゴ民主共和国,ナイジェリア,南アフリカ,タンザニア,アンゴラ,エチオピア,カーボヴェルデ,コートディヴォワール,ルワンダ,ジンバブエ,スーダン,セネガル……

■ カリブ海地域・アメリカ大陸
キューバ,ジャマイカ,トリニダード・トバゴ,ハイチ,バルバドス,プエルト・リコ,ブラジル,アメリカ合衆国……

■ ヨーロッパ他
イギリス,オランダ,フランス,ベルギー,スペイン,ポルトガル,インド,ニュージーランド,オーストラリア,パキスタン,香港,日本……


執筆者紹介

中村和恵(なかむら かずえ)【編者】
国や地域の垣根を越えて植民地支配の影響を知りたく,オーストラリアから始まり,カリブ海,南太平洋,インド,アフリカと英語圏文学を横に横にと読み歩いてきた.アボリジニにアボリジニ扱いされてから,日本人とはなんだろうとまた考え直す日々.『岩波講座文学13 ネイションを超えて』等に論文,翻訳にアール・ラヴレイス『ドラゴンは踊れない』,エッセイ集『キミハドコニイルノ』『降ります』,詩集『トカゲのラザロ』.明治大学准教授(英語圏文学・比較文学).

岡崎 彰(おかざき あきら)
アフリカとのつき合いは1972年来.主にケニア,スーダンに住み,長年住んだヨーロッパでもアフリカ系音楽に囲まれていた.80年代には『ミュージック・マガジン』誌に音楽記事を執筆.最近アフリカを助ける対象と勘違いしている若者が増えているが,アフリカには汲み尽くせない知識・知恵・美学・力があるといつも感じる.厳しい生活状況にあっても生を謳歌できるアフリカ人に強く惹きつけられる.共著にPostcolonial Subjectivities in Africa,論文に「「銃」と「笑い」――アフリカの或る二つの『解放運動』」(『神奈川大学評論』45号)など.一橋大学教授(社会人類学).

くぼた のぞみ
北海道生まれ.既存の研究機関の外にあって「10年早い」といわれながらアフリカ発/系の文学を日本語にしてきた翻訳者・詩人.訳書に,本書で触れたクッツェー3冊,ヘッド,クネーネ各1冊のほか,コンデ『心は泣いたり笑ったり』,ダンティカ『アフター・ザ・ダンス』,フォンセーカ『立ったまま埋めてくれ』,アディーチェ『アメリカにいる,きみ』『半分のぼった黄色い太陽』,ウィコム『デイヴィッドの物語』(ともに近刊)など.詩集が3冊.スリナム生れの詩人ファファレーイの訳詩にも挑戦中.

小馬 徹(こんま とおる)
フィールドをこよなく愛する「足派」の研究者.1979年以来東アフリカで30度の長期調査を行い,2007-08年のケニア総選挙後危機もキプシギスの自家で内側から事態を経験.ケニアの新しい都市混成言語シェン語も研究.なお,自慢の足を河童に引っ張られ,長年探し求めた河童信仰宗家の古文書群の目録を既に三巻刊行.著書に『贈り物と交換の文化人類学』『ユーミンとマクベス』『放屁という覚醒』,共著に『川の記憶』『カネと人生』『紛争と運動』『やもめぐらし』『生と死の現在』『秘密社会と国家』等.神奈川大学教授(文化人類学).

管 啓次郎(すが けいじろう)
ハワイ諸島とブラジル,北アメリカ大陸太平洋岸北西部とアオテアロア=ニュージーランド,そしてもちろんソノラ砂漠とカリブ海の島々.遠い土地を結びつけると何が見えてくるかを探る,旅する翻訳者.著書に『ホノルル,ブラジル』『トロピカル・ゴシップ』『オムニフォン』『コヨーテ読書』など.訳書にコンデ『生命の樹』,キンケイド『川底に』,グリッサン『〈関係〉の詩学』ほか.明治大学教授(比較詩学).

鈴木慎一郎(すずき しんいちろう)
地方の小さな町に生まれ育ち,70年代末にラジオと音楽雑誌を通じてレゲエを聴き始める.80年代半ばに東京で人類学や現代思想に,90年代初めに遊学先のジャマイカでカルチュラル・スタディーズに出会う.以降,カリブ海の黒人文化とその広がりをおもに研究.著書に『レゲエ・トレイン』,共編著に『シンコペーション――ラティーノ/カリビアンの文化実践』,共訳書にP・ギルロイ『ブラック・アトランティック』など.関西学院大学教授(人類学・文化研究・ポピュラー音楽論).

旦 敬介(だん けいすけ)
ブラジル北東部バイーアに初めて行った瞬間からアフリカとブラジルのつながりに取り憑かれ,探索に訪れたケニアでウガンダ人と結婚.90年代はブラジルとケニアの間を往復して暮らした.ラテンアメリカ文学研究からアフロ・アメリカ文化研究に関心が移ってきた.移動する人たちが好き.ガルシア=マルケス『十二の遍歴の物語』,ゴイティソーロ『戦いの後の光景』など訳書多数.小説『ようこそ,奴隷航路へ』『逃亡篇』.明治大学准教授(ラテンアメリカ文化).

MUNSI, Vanzila Roger ムンシ ヴァンジラ ロジェ
コンゴ民主共和国(旧ザイール)出身.アフリカ,ヨーロッパ,日本の複数の大学で神学,社会文化人類学,民俗学を学ぶ.コンゴのサカタ人を中心にアフリカの伝統的精神文化や,キリスト教の影響を研究.日本では隠れキリシタンとキリシタン神社の調査研究に夢中になり,目下隠れキリシタンの家に生まれた人の伝記をまとめている.著書 The Dancing Church of the Congo(CD-ROM 版),論文に「コンゴ民主共和国における部族紛争の危機分析と展望」(『比較民俗研究 19号』)ほか.南山大学講師(文化人類学・民俗学).なお名前のロジェは洗礼名,ヴァンジラが名で,ムンシが姓.


目 次

 はじめに――「文化は旅をする」
 関連地図(アフリカ全図/大西洋の奴隷貿易/カリブ海全図)
I アフリカ点描――継承されるもの,変化するもの
〈呪術〉 旅する魔法――変容しつづけるアフリカの呪術 中村和恵
〈物語〉 南アフリカへの机上の旅――朗誦し,語り,書くこと くぼたのぞみ
〈教育〉 キプシギスの成年式と学校教育 小馬 徹
〈新植民地主義〉 コンゴはどうして貧しいか――新植民地主義とアフリカの未来 ムンシ・ヴァンジラ・ロジェ
II ディアスポラ・アフリカ案内――旅する文化の痕跡
〈食物〉 アフロ・アメリカの旅――大西洋を移動したもの 旦 敬介
〈音楽〉 混交への回帰/脱出――音楽を通して黒人ディアスポラのルーツを再想像する 鈴木慎一郎
〈ダンス〉 腰が語る――アフリカから世界へ,そしてアフリカへ 岡崎 彰
〈文学〉 黒いイギリス――ブラック・ブリティッシュ文学の旅 中村和恵
〈スタイル〉 「アフリカ」が旅するとき――ヒップホップにはじまって 管啓次郎
 図版出典
 参考資料の紹介(書籍・音楽・映画)




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