創刊号のパノラマ
近代日本の雑誌・岩波書店コレクションより
ずらりと並んだ約1500冊の表紙から,風俗・流行やデザインまで,時代の雰囲気が立ち上がってくる.
岩波書店所蔵の雑誌創刊号は,国内でも有数の規模のコレクション.約1500冊を選んで発行年順に紹介する.ずらりと並んだ表紙から時代の雰囲気が立ち上がり,見る者を圧倒するだろう.巻末には,近代に日本に持ち込まれた新しい概念である「美術」にまつわる諸雑誌をまとめて解説する.雑誌通の読み手によるコラムも満載.
■うらわ美術館学芸員より
島田有美子
岩波書店の資料室で,このバラエティに富んだ創刊号群に初めて対面したのは昨年秋のことである.森仁史氏(松戸市美術館準備室学芸員)により既に調査の端緒はつけられていたが,冊子自体の脆弱さとその量の多さとから,全冊をただ一瞥するだけでも相当な時間を要し,その全容が,1867(慶応3)年から1956(昭和31)年までに発刊された,創刊号を中心とした2900余冊の雑誌コレクションとわかるまでには,当初の予測をはるかに超えて,半年以上を費やすことになった.図版の頁で見られるように,そのジャンルの多様さは眺めているだけでも充分に楽しく,稀少性や歴史資料としての価値を除いたとしても,視覚的な魅力を放っている.これらは,1950年代には岩波書店の所蔵になったというが,経緯などについての記録は残念ながら残されていない.多くの表紙に押されている「津田」という認め印や「真誠堂津田書店/神田南神保町七」というゴム印を手がかりにすれば,津田氏の収集が基になっていると思われるが,現時点では,人物についても店舗についても確たる情報は得られていない.
このコレクションには,社会科学,自然科学,芸術,婦人,少年少女,大衆娯楽などの分野とともに,花柳界誌や同人誌などあまり知られることのないものも数多く含まれている.加えて,雑誌1冊の中にも――雑多なことを記載した書物の意を示すとおり――政治経済,文芸,娯楽など様々な内容が盛りこまれ,それ自体,捉えきれない多彩さに色取られている.専門的で個別的な研究が進む昨今にあって,このような混交した状況を一望し,その雑多な味わいを体感できる機会はそう多くはない.そのような機会となることを本展では第一義とし,このコレクションから見えてくる時代性を探り,発行年に従いつつ元号区分に捕われない構成を試みた.
(「創刊の心象――岩波書店コレクションの外観から」より
■うらわ美術館学芸員より
島田有美子
岩波書店の資料室で,このバラエティに富んだ創刊号群に初めて対面したのは昨年秋のことである.森仁史氏(松戸市美術館準備室学芸員)により既に調査の端緒はつけられていたが,冊子自体の脆弱さとその量の多さとから,全冊をただ一瞥するだけでも相当な時間を要し,その全容が,1867(慶応3)年から1956(昭和31)年までに発刊された,創刊号を中心とした2900余冊の雑誌コレクションとわかるまでには,当初の予測をはるかに超えて,半年以上を費やすことになった.図版の頁で見られるように,そのジャンルの多様さは眺めているだけでも充分に楽しく,稀少性や歴史資料としての価値を除いたとしても,視覚的な魅力を放っている.これらは,1950年代には岩波書店の所蔵になったというが,経緯などについての記録は残念ながら残されていない.多くの表紙に押されている「津田」という認め印や「真誠堂津田書店/神田南神保町七」というゴム印を手がかりにすれば,津田氏の収集が基になっていると思われるが,現時点では,人物についても店舗についても確たる情報は得られていない.
このコレクションには,社会科学,自然科学,芸術,婦人,少年少女,大衆娯楽などの分野とともに,花柳界誌や同人誌などあまり知られることのないものも数多く含まれている.加えて,雑誌1冊の中にも――雑多なことを記載した書物の意を示すとおり――政治経済,文芸,娯楽など様々な内容が盛りこまれ,それ自体,捉えきれない多彩さに色取られている.専門的で個別的な研究が進む昨今にあって,このような混交した状況を一望し,その雑多な味わいを体感できる機会はそう多くはない.そのような機会となることを本展では第一義とし,このコレクションから見えてくる時代性を探り,発行年に従いつつ元号区分に捕われない構成を試みた.
(「創刊の心象――岩波書店コレクションの外観から」より
創刊の心象――岩波書店コレクションの外観から 島田有美子
1867-1900年(慶応3~明治33年)――『万国新聞紙』『国民之友』から『太陽』へ
紀田順一郎が読む 総合雑誌ことはじめ
紀田順一郎が読む 少年雑誌の源流
1901-1923年(明治34~大正12年)――女神像の登場
森仁史が読む 戦争を伝える印刷技術
1924-1940年(大正13~昭和15年)――コラージュの時代
浦部信義が読む ラジオ雑誌
森まゆみが読む 活字遊びと恋の転々
紀田順一郎が読む 文芸アンケートの楽しみ
原 武史が読む カフェーと喫茶店
1941-1951年(昭和16~26年)――戦時と戦後のモダン・スタイル
木下直之が読む 古い上着よ,さようなら
美術系雑誌
雑誌としての美術か,美術としての雑誌か 森 仁史
木下直之が読む 敗者の雑誌
飯沢耕太郎が読む プロか,アマチュアか
森 仁史が読む 『潮』と東京高等工芸
雑誌名索引
1867-1900年(慶応3~明治33年)――『万国新聞紙』『国民之友』から『太陽』へ
紀田順一郎が読む 総合雑誌ことはじめ
紀田順一郎が読む 少年雑誌の源流
1901-1923年(明治34~大正12年)――女神像の登場
森仁史が読む 戦争を伝える印刷技術
1924-1940年(大正13~昭和15年)――コラージュの時代
浦部信義が読む ラジオ雑誌
森まゆみが読む 活字遊びと恋の転々
紀田順一郎が読む 文芸アンケートの楽しみ
原 武史が読む カフェーと喫茶店
1941-1951年(昭和16~26年)――戦時と戦後のモダン・スタイル
木下直之が読む 古い上着よ,さようなら
美術系雑誌
雑誌としての美術か,美術としての雑誌か 森 仁史
木下直之が読む 敗者の雑誌
飯沢耕太郎が読む プロか,アマチュアか
森 仁史が読む 『潮』と東京高等工芸
雑誌名索引
書評情報
電通報 2004年11月22日号
週刊エコノミスト 2004年11月9日号
ダ・ヴィンチ 2004年11月号
毎日新聞(夕刊) 2004年9月28日
読売新聞(朝刊) 2004年9月26日
北日本新聞(朝刊) 2004年9月26日
毎日新聞(朝刊) 2004年9月12日
朝日新聞(朝刊) 2004年9月12日
朝日新聞(朝刊)〔西埼玉〕 2004年9月6日
朝日新聞(朝刊) 2004年9月5日
週刊エコノミスト 2004年11月9日号
ダ・ヴィンチ 2004年11月号
毎日新聞(夕刊) 2004年9月28日
読売新聞(朝刊) 2004年9月26日
北日本新聞(朝刊) 2004年9月26日
毎日新聞(朝刊) 2004年9月12日
朝日新聞(朝刊) 2004年9月12日
朝日新聞(朝刊)〔西埼玉〕 2004年9月6日
朝日新聞(朝刊) 2004年9月5日