それでもボクは会議で闘う

ドキュメント刑事司法改革

映画『それでもボクはやってない』の監督が,法制審議会・特別部会の委員に.論争の行方,舞台裏の真実とは?

それでもボクは会議で闘う
著者 周防 正行
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2015/04/08
ISBN 9784000237291
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 254頁
定価 1,870円
在庫 在庫あり
場違いなところに来てしまった――映画『それでもボクはやってない』で刑事裁判の闇を描いた監督が,思わぬ縁で法制審議会・特別部会の委員に.不祥事のあとも一向に懲りない司法関係者の発言に愕然,もってまわった役人話法に苦戦しながらも,「改革への一歩」を模索する.はたして「密室での取調べ」に光は差し込むのか?


■著者からのメッセージ
 2011年,僕はとても長い名前の会議――「法制審議会 新時代の刑事司法制度特別部会」の委員になった.
 3年間,30回におよんだ会議に出席して,最終的な取りまとめ案が承認されたあと,記者会見で口をついて出た言葉は,「民主主義は大変ですね」だった.
 もともとは郵便不正事件という,検察の不祥事をきっかけに開かれた会議であったはずなのに,自らの組織の非を認めようとしない人たちを相手に,改革の必要性を訴える日々は,虚しさに満ちていた.それでも,最後まで諦めずに言葉を尽した.「民主主義は大変ですね」のひとことは,達成感ではなく,徒労の果ての「やれやれ」だった.
 「10人の真犯人を逃すとも,1人の無辜を罰するなかれ」――僕はかつて,監督した映画の冒頭にこの法格言を掲げた.
 日本の警察が,検察が,裁判所が,弁護士が,えん罪をつくり出さないために,どんな制度が必要だったのか.会議のスタートから,僕たちがようやく「小さいけれど,確かな1歩」を踏み出すまでを描いたこの本を読んで,改革の「これから」に注目する人が,1人でも増えてくれたらうれしい.


■編集部からのメッセージ
 本書は『Shall we ダンス?』『舞妓はレディ』など,話題作を世に送り出してきた映画監督の周防正行さんがつづった,「闘いの記録」です.
 どんな闘いなのか.
 監督は,痴漢えん罪事件を扱った映画『それでもボクはやってない』の取材をきっかけに,「99パーセントの有罪率」「人質司法」「密室での取調べ」等など,日本の刑事裁判の不条理に衝撃をうけ,映画の公開後も,えん罪をなくすための改革を訴えてきました.
 「職業柄なのか性格なのか,好奇心には抗えない」と法制審議会・特別部会の委員を引きうけたものの,刑事司法改革への抵抗は予想以上に大きく,葛藤の日々がはじまります.
 それでも,足利事件,布川事件,PC遠隔操作事件と,深刻なえん罪があとをたたない状況に黙ってはいられないと,監督がよりよい着地点を模索する様子が,手に汗握るタッチで描かれています.
 法制審議会の委員が,みずから会議をふり返って語ることは異例のことです.法律・裁判に興味のある方はもちろん,「取調べの可視化」ってなに? というあなたにも,“法律の素人”の苦闘を,ぜひ見届けていただければと思います.
はじめに――刑事裁判にこだわり続ける理由

第I部 会議は踊る,されど……
1 委員デビューの日
2 特別部会“最大の使命”――取調べの録音・録画を考える
3 証拠の全面開示は不可能なのか――法曹界の「常識」への挑戦
4 身体拘束への想像力――人質司法は存在しない?
5 五人の非法律家委員,動き出す

第II部 巻き返せるか? 官僚式取りまとめ
6 袴田事件の衝撃
7 「可視化」の仕組みをつくる――役人話法との悪戦苦闘
8 最高検「依命通知」で急展開――「可視化」の仕組みをつくる(2)
9 一つ先の案を求めて――「可視化」の仕組みをつくる(3)
10 二つのテーマ,一歩前進なるか――証拠開示・人質司法の着地点は

第III部 大きな改革への「第一歩」として
11 なぜボクは妥協したのか

おわりに――民主主義は大変だ

巻末資料――法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」資料URL一覧
法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」委員等名簿
「新時代の刑事司法制度特別部会 取りまとめに向けての意見」
「新時代の刑事司法制度特別部会 取りまとめに向けての再意見」

カバー・中扉イラスト 内澤旬子
周防正行(すお まさゆき)
1956年東京都生まれ.映画監督.立教大学文学部仏文科卒業.
作品に『ファンシイダンス』(1989),『シコふんじゃった.』 (1992),『Shall we ダンス?』(1996),『それでもボクはやってない』(2007),『ダンシング・チャップリン』(2011),『終の信託』(2012),『舞妓はレディ』(2014)ほか.
著書に『「Shall weダンス?」アメリカを行く』(文春文庫,2001),『それでもボクはやってない――日本の刑事裁判,まだまだ疑問あり!』(幻冬舎,2007),『周防正行のバレエ入門』(太田出版,2011)など.

書評情報

自由と正義 2015年10月号
週刊現代 2015年6月27日号
サンデー毎日 2015年6月14日号
中国新聞(朝刊) 2015年6月14日
しんぶん赤旗 日曜版 2015年6月7日
週刊東洋経済 2015年5月30日号
週刊朝日 2015年5月29日号
東京新聞(朝刊) 2015年5月24日
読売新聞(夕刊) 2015年5月23日
岩手日報 2015年5月10日
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