調査報告 チェルノブイリ被害の全貌

「死者数約百万人」という衝撃的な被害実態を報告した決定版データ集,待望の翻訳.

調査報告 チェルノブイリ被害の全貌
大惨事から27年,北半球全域を覆った放射能による死者数は約百万にのぼり,その環境被害は今も進行中である――.多年にわたる調査研究と五千以上の文献資料に基づき,被害の全貌を示すデータを系統的に呈示した本書は,衝撃的な真実を告げる警鐘の書であり,フクシマ以後を生きる私たちにとって必携の報告書である.


■訳者からのメッセージ

 1986年のチェルノブイリ原発事故は、北半球全体に膨大な放射性物質を飛散させ、人間と生態系に即時から中長期にわたる放射線被曝をもたらしました。とりわけベラルーシ、ウクライナ、ロシアの被害は深刻で、汚染地では健康な子どもの割合が20%以下になったと言われるほどです。
 しかし、IAEA(国際原子力機関)やWHO(世界保健機関)による「公式」な報告は組織的に事故の影響を過小評価し続けてきたため、被害の実態を知る医師や研究者たちが強く異を唱えるようになりました。それらの声とデータを徹底的に拾い上げたのが、ゴルバチョフの科学顧問を務めたアレクセイ・ヤブロコフ博士とベルラド研究所の創設者であるヴァシリー・ネステレンコ博士が中心になってまとめた本書『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』です。
  「フクシマ以後」を生きる私たちに本書が与えてくれる教訓の1つは、大規模かつ継続的な被曝の影響が甲状腺がんにとどまらず、幅広い疾病や症状として表れることであり、それらに対する適切な監視と手当てを行うには国内外の英知と資源を結集しなければならないことです。


■本書の読み方(訳者より)

・本書は膨大なデータ集ですが、各章冒頭に掲げられた要約、および各部の結論を通して読むことで、被害の実態をおおまかにつかむことが可能です。
また、第15章が本書全体の簡潔な要約となっているので、まずそちらを読んだうえで、それぞれの興味関心に即して各章を読んでゆくのが効率的ではないかと考えます。
 (1)被害の実態に興味がある(「死者100万人」は信じ難い):第3章、第7章、第2部結論
 (2)環境への影響に興味がある:第1章、第8章
 (3)動植物への影響に興味がある:第9章、第10章
 (4)実践的な放射線防護策に興味がある:食品汚染については第12章と第13章、農林水産業における対処については第14章

・「主要用語解説」とウェブ版用語解説をあわせてご参照ください。


■ウェブ版資料(※新規ウィンドウで外部リンクが開きます )

 ・原文テキスト
 ・参照文献リスト
 ・用語解説
 ・IAEAとWHOの間の協定
 ・索引
日本語版序:いま本書が邦訳出版されることの意味(崎山比早子)
まえがき/はじめに/序論 チェルノブイリについての厄介な真実

第1部 チェルノブイリの汚染――概観
 第1章 時間軸と空間軸を通して見たチェルノブイリの汚染

第2部 チェルノブイリ大惨事による人びとの健康への影響
 第2章 チェルノブイリ事故による住民の健康への影響
 第3章 チェルノブイリ大惨事後の総罹病率と認定障害
 第4章 チェルノブイリ大惨事の影響で加速する老化
 第5章 チェルノブイリ大惨事後に見られたガン以外の各種疾患
 第6章 チェルノブイリ大惨事後の腫瘍性疾患
 第7章 チェルノブイリ大惨事後の死亡率
 第2部結論

第3部 チェルノブイリ大惨事が環境に及ぼした影響
 第8章 チェルノブイリ事故後の大気,水,土壌の汚染
 第9章 チェルノブイリ由来の放射能による植物相への悪影響
 第10章 チェルノブイリ由来の放射能による動物相への悪影響
 第11章 チェルノブイリ由来の放射能による微生物相への悪影響
 第3部結論

第4部 チェルノブイリ大惨事後の放射線防護
 第12章 チェルノブイリ原発事故による食物と人体の放射能汚染
 第13章 チェルノブイリ事故に由来する放射性核種の体外排出
 第14章 チェルノブイリの放射能汚染地域で生きるための放射線防護策
 第4部結論

 第15章 チェルノブイリ大惨事の25 年後における住民の健康と環境への影響

日本語版あとがき チェルノブイリからフクシマへ
主要用語解説/後記・謝辞(星川淳)
アレクセイ・V・ヤブロコフ博士
1933年,モスクワ生まれ.ロシア科学アカデミー評議員,ロシア環境政策局創設者.アメリカ芸術科学アカデミー名誉会員,国際海洋哺乳類協会名誉会員,環境政党連合グリーン・ロシア代表.動物学,核問題,農薬問題等の分野で著作多数.

書評情報

日本の科学者 Vol.48 No.8(2013年8月)
週刊読書人 2013年7月12日号
京都新聞(朝刊) 2013年5月25日
ページトップへ戻る