始まっている未来 新しい経済学は可能か

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始まっている未来
新しい経済学は可能か

宇沢弘文,内橋克人

B6判・並製カバー


著者からのメッセージ
内橋克人
 「あとがき」を書いているいま,この瞬間,新しい首相が指名され,新政権が発足した.日本という国と社会が変わらねばならぬ約束事がある.何が変わり,何を変えさせるべきなのか.めざす針路は本書に示し尽くされている.いま「二つの従属からの自立」を新政権は唱える.官僚主導政治からの訣別,対米従属からの訣別である.なぜ,いま日本と日本人は二つの訣別を急務とし,運命として選択しなければならないのか.新政権の政治的意思や意図とは無縁に,しかし,ここに至る「必然と必要の全体」が本書に十二分に,そして明解に示されている.対談において今回の選挙に論及したことは一度もなかった.にかかわらず政治・経済社会を糺す,ぴんと背筋の張った,煮えたぎるほどの熱い論述が,「二つの訣別」に至る長く深い「歪んだ日本のこれまで」をえぐり出した.私たちの生きる社会の背後につづいた暗闇の道に光の刃を投げ,その同じ光を前途へと振りかえることで,視線の先にすでに「始まっている未来」の確かな予兆を探り当てることができた.
(「三つの訣別──あとがきに代えて」より)


著者略歴

撮影:田中みどり
宇沢弘文(うざわ ひろふみ)
1928年,鳥取県に生まれる.1951年東京大学理学部数学科卒業.専攻は経済学.現在,日本学士院会員,東京大学名誉教授.1997年文化勲章受章.2009年,地球環境問題の解決に向けて貢献した個人や団体に贈られる「ブループラネット賞」を受賞.『自動車の社会的費用』,『社会的共通資本』,『地球温暖化を考える』,『日本の教育を考える』,『ケインズ「一般理論」を読む』など著書多数.

撮影:熊木隆
内橋克人(うちはし かつと)
1932年,神戸市に生まれる.1957年神戸商科大学卒業.神戸新聞記者を経て,1967年から経済評論家.2006年宮沢賢治・イーハトーブ賞,2009年NHK放送文化賞受賞.『内橋克人 同時代への発言』(全8巻),『共生の大地――新しい経済がはじまる』,『規制緩和という悪夢』(共著),『悪夢のサイクル――ネオリベラリズム循環』,『共生経済が始まる――世界恐慌を生き抜く道』など著書多数.


目次

第1回 市場原理主義というゴスペル
  二つの世界恐慌/ケインズ=べヴァリッジの時代/市場原理主義と新自由主義/エドワード・テラーとミルトン・フリードマン/フリードマンの市場原理主義/“フリードマン・そっくりさん”の跋扈/日本における社会的共通資本の破壊
第2回 日本の危機はなぜこうも深いのか
  日本を襲った危機の異例の苛酷さ/日本の植民地化と日米構造協議/四つの項目から日本経済を見る/日本における規制緩和の特異な進め方/自治体行政への市場原理の導入/植民地としての日本とパックス・アメリカーナ/ワトキンス調査団と日本の道路/マッカーシズムの嵐のなかで/ローレンス・クラインの歴史的証言
第3回 人間らしく生きるための経済学へ
  本当の学究者とは/下村治と設備投資研究所/歴史的な合宿/血に染まった経済学/経済学の原点から社会的共通資本を考える/経済学はなぜマネーの暴走を止められなかったのか/パックス・アメリカーナを脱するために/二つの『レールム・ノヴァルム』/パックス・アメリカーナ崩壊の先に何があるか
第4回 新しい経済学の息吹
  日本における「新しい経済学」の可能性/「共生経済」と「FEC自給圏」/市場を道具として使いこなす/経済学における地球温暖化/特殊な時代の終焉,新しい時代の息吹
〈補論1〉社会的共通資本としての農の営み
       ――農業と食糧の危機にどう対応すべきか
      (宇沢弘文・内橋克人・梶井功)
〈補論2〉社会的共通資本と21世紀的課題
      (宇沢弘文)
 三つの訣別――あとがきに代えて(内橋克人)



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