日高敏隆の口説き文句


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日高敏隆氏プロフィール
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編集部だより
編者からのメッセージ

小長谷 ここで申し開きをしておきましょう.私たちは日高先生の真正の弟子ではないって.でもご縁はあったんです.
山極 ありましたね.僕は日高さんは不思議な人だと思っていて,顔も体つきもものすごく鮮明に覚えているんです.普通,人についてはそれほど鮮明には覚えていないんだけれど.
小長谷 ゴリラは覚えていても,人間には興味ない(笑).
山極 そう.でも日高さんはあの顔つきと,細めで髪の毛がぺったりしていて顔が小さくて…….
小長谷 すらっとスタイルがいい.
山極 少し猫背で歩く.それはお世辞でなく,マイケル・ジャクソンばりの強烈な印象がありました.つまり軽やかなんです.重力がない.仕草からも,思想からも,そういう印象を受ける.その軽やかさが人を惹きつけ,人々の間の境界をなくし,日高さんの考えを人に伝えた源泉になっている.それは日高さん自身が若い頃から志してきたことだろうと思います.
小長谷 その軽やかさで人をも軽やかにして,たくさんの人と世界を拓いていったわけでしょう.(中略)
 それは結局,いろいろ多角的に褒めるのが癖ってことですよね.一種の「がんばっておやんなさい」ということであって,彼は「育てる」とは言っていないけれど,実はそうやって育てている.呪縛を引き抜いて,その人らしい方向で生きるようにと,何かこう祈りのようなものが常にあったのかな.(中略)
 多分それは私に対してだけでなく,誰に対してもそうしているんだなと思います.つきあいの浅い私でさえ,そういう恩恵を受けているのだから,多分みんなも,本質的には同じでも表面的には異なる言葉で幸せをもらっているに違いない.この際それを全部書いておいてもらいたい.そういう欲望がこの本の企画になったと思います.
山極 まさにそうで,日高敏隆選集も出ているし,直系の弟子たちが全集のようなものは作っていくだろうけれど,日高さんからとても大きな影響を受けて自分の人生や自分のやり方を変えた人たちがいて,彼らがどういうきっかけでそうなったかを,思い出が消えないうちに残しておいてもらいたいと思った.
小長谷 日高さんの生きざまを行動学的に観察しているような感じ.それぞれ人によって言葉も局面も違うけれど,受けた影響の大事さが,メカニズムとして同じ.
山極 原稿を読んでみると,みんな日高さんから「個人的に」影響を受けているわけです.日高さんがあるときふと言った言葉だとか,日高さんが追求しているものだとかに,すごく共振する.
小長谷 一人ではなかなか枠を超えられないけれど,共振して振幅を増やしたら,ぱっと超えられる.(後略)

――「あとがき対談」より


日高敏隆氏プロフィール

日高敏隆(ひだか としたか)
動物行動学者.
1930年2月26日東京生まれ.
1952年東京大学理学部動物学科卒業.
岩波書店に勤務しながら夜間は東京大学で研究を続ける.
東京農工大学講師・助教授・教授(1959〜75),京都大学教授(1975〜93),滋賀県立大学初代学長(1995〜2001),総合地球環境学研究所初代所長(2001〜07).
1982年日本動物行動学会創設,初代会長.
毎日出版文化賞(『チョウはなぜ飛ぶか』),日本エッセイスト・クラブ賞(『春の数えかた』),南方熊楠賞を受賞.
専門書,啓蒙書,エッセイ,翻訳など,著訳書多数.
2009年11月14日没.


編者・執筆者紹介

《編者》
小長谷有紀(こながや ゆき)
文化人類学者.専門はモンゴル・中央アジアの遊牧文化.国立民族学博物館教授.著書に『世界の食文化 3 モンゴル』『昔ばなしで親しむ環境倫理――エコロジーの心を育む読み聞かせ』『モンゴル草原の生活世界』ほか.

山極寿一(やまぎわ じゅいち)
人類学者,霊長類学者.京都大学大学院理学研究科教授.著書に『人類進化論――霊長類学からの展開』『暴力はどこからきたか――人間性の起源を探る『ヒトの科学 1 ヒトはどのようにしてつくられたか』ほか.


《執筆者》
岸田 秀(きしだ しゅう) 評論家.著書に『ものぐさ精神分析』『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』『性的唯幻論序説』『「哀しみ」という感情』ほか.

内田春菊(うちだ しゅんぎく) 漫画家,作家,女優.著書に『私たちは繁殖している』『ファザーファッカー』『南くんの恋人』『ドパミナジック』ほか.

山下洋輔(やました ようすけ) ジャズ・ピアニスト.著書に『風雲ジャズ帖』『ピアニストを笑え!』『ドバラダ門』『山下洋輔の文字化け日記』ほか.

羽田節子(はねだ せつこ) 翻訳家.訳書に『擬態』『霧のなかのゴリラ』『鼻行類』『積みすぎた箱舟』ほか.著書に『キャプテン・クックの動物たち』ほか.

安野光雅(あんの みつまさ) 画家,絵本作家.著書に『ふしぎなえ』『ABCの本』『旅の絵本』『故郷へ帰る道』『繪本 三國志』『絵の教室』『木のぼりの詩』ほか.

赤瀬川原平(あかせがわ げんぺい) 作家,画家.著書に『老人力』『超芸術トマソン』『新解さんの謎』『純文学の素』『千利休 無言の前衛『散歩の学校』ほか.

羽田澄子(はねだ すみこ) 記録映画作家.著書に『早池峰の賦』『安心して老いるために』『映画と私』『終りよければすべてよし』ほか.

保賀昭雄(ほが あきお) 研究調査用特殊機器 HOGA代表.昆虫研究家.共著書に『京都の昆虫』『滋賀県自然誌』,その他自然関連の研究や活動の報告書.

桃木暁子(ももき あきこ) サイエンス翻訳者.京都精華大学非常勤講師.訳書に『ヒューマン・エソロジー』『動物の歴史』『プリオン病とは何か』ほか.

栗林 慧(くりばやし さとし) 写真家,映像作家.著書に『栗林慧全仕事』『アリになったカメラマン』『栗林さんの虫めがね』『虫の目で狙う奇跡の一枚』ほか.

澤近十九一(さわちか とくいち) 元「アニマ」編集長.エス・プロジェクト代表取締役.編著訳書に『生命の時間』『恐竜博物館』『追いつめられた隣人』ほか.

嘉田由紀子(かだ ゆきこ) 環境社会学者,文化人類学者.滋賀県知事.著書に『水辺ぐらしの環境学』『水をめぐる人と自然』『生活環境主義でいこう!』ほか.

今江祥智(いまえ よしとも) 児童文学作家.著書に『子どもの国からの挨拶』『ぼんぼん』『優しさごっこ』『今江祥智の本』『兄貴』『桜桃のみのるころ』ほか.

堀場雅夫(ほりば まさお) 堀場製作所最高顧問.著書に『イヤならやめろ!』『人の話なんか聞くな!』『やるだけやってみろ!』『もっとわがままになれ!』ほか.

中西 進(なかにし すすむ) 国文学者.京都市立芸術大学名誉教授.著書に『日本文学と漢詩』『源氏物語と白楽天』『日本の文化構造』ほか.

梶田真章(かじた しんしょう) 法然院貫主.著書に『京の古寺から 2 法然院』『ありのまま』『古寺巡礼京都 35 法然院』ほか.

松井孝典(まつい たかふみ) 地球惑星物理学者.千葉工業大学惑星探査研究センター所長.著書に『地球進化論』 『宇宙誌』 『宇宙人としての生き方』ほか.

原 ひろ子(はら ひろこ) 文化人類学者.城西国際大学客員教授,お茶の水女子大学名誉教授.著書に『子育ては母親だけの責任か』『ジェンダー』ほか.

坂田 明(さかた あきら) 音楽家.著書に『ジャズ西遊記』『瀬戸内の困ったガキ』『ミジンコの都合』『クラゲの正体』『ミジンコ道楽――その哲学と実践』ほか.

今森光彦(いまもり みつひこ) 写真家.成安造形大学客員教授.著書に『今森光彦 昆虫記』『里山物語』『湖辺みずべ』『カラー版 里山を歩こう』ほか.

亀崎直樹(かめざき なおき) 海亀学者.神戸市立須磨海浜水族園園長.著書に『ウミガメの旅』『イルカとウミガメ』『現代を生きるための生物学の基礎』ほか.

山岡亮平(やまおか りょうへい) 化学生態学者.京都工芸繊維大学名誉教授.著書に『びっくり害虫図鑑』『アリはなぜ一列に歩くか』ほか.

尾池和夫(おいけ かずお) 地震学者.国際高等研究所所長.著書に『中国の地震予知』『活動期に入った地震列島』『俳景』『変動帯の文化』ほか.

養老孟司(ようろう たけし) 解剖学者.東京大学名誉教授.著書に『唯脳論』『からだの見方』『バカの壁』『運のつき』『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』ほか.

湯本貴和(ゆもと たかかず) 生態学者.総合地球環境学研究所教授.著書に『昆虫を誘い寄せる戦略』『屋久島』『熱帯雨林』『食卓から地球環境がみえる』ほか.

黒田末寿(くろだ すえひさ) 霊長類学者.滋賀県立大学人間文化学部教授.著書に『ピグミーチンパンジー』『人類進化再考』『自然学の未来』ほか.

松林公蔵(まつばやし こうぞう) 老年医学者.京都大学東南アジア研究所教授.著書に『インカの里びと』『長寿伝説の里』『登山の医学ハンドブック』ほか.


目次

まえがき対談 小長谷有紀×山極寿一
  I
フランスにおける日高行動学 岸田 秀
マウンティング 内田春菊
どうせ動物行動学で全部説明されている 山下洋輔
氏の語学力はつとに有名である 羽田節子
「拝啓リュリ様」 安野光雅
高敏隆の櫛と鏡 赤瀬川原平
 II
映画『もんしろちょう』の日高敏隆 羽田澄子
師に学ぶ 保賀昭雄
人間という生き物を知る 桃木暁子
昆虫写真家の誕生 栗林 慧
雑誌「アニマ」の時代 澤近十九一
「未来可能性」という口説き 嘉田由紀子
 III
高先生のお洒落 今江祥智
「文化生命科学者」との出会いから 堀場雅夫
チョウはどこまでカミか 中西 進
きみは今,椿なの.僕は今,人間だよ. 梶田真章
人類はどこへ行くのか 松井孝典
「生のかたち」への視点 原 ひろ子
 IV
すがすがしい口説き方――『動物と人間の世界認識――イリュージョンなしに世界は見えない』読み直し 坂田 明
動物行動学者の喜び――『チョウはなぜ飛ぶか』読み直し 今森光彦
美しい批判――『エソロジーはどういう学問か』読み直し 亀崎直樹
ネコの世界でももてたかな――『ネコたちをめぐる世界』読み直し 山岡亮平
高さんに学ぶ――『ぼくにとっての学校――教育という幻想』読み直し 尾池和夫
感覚で学べ――『大学は何をするところか』読み直し 養老孟司
地球環境学という口説き――『子どもたちに語るこれからの地球』読み直し 湯本貴和
高さんの自由さと人間論――『人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論』読み直し 黒田末寿
高先生のかたり――『プログラムとしての老い』読み直し 松林公蔵
 
あとがき対談 山極寿一×小長谷有紀




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