必要か,リニア新幹線

東京―大阪間を約1時間で結ぶリニア中央新幹線.この計画をどう見るか.採算,安全などから疑問を提起.

必要か,リニア新幹線
著者 橋山 禮治郎
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2011/02/03
ISBN 9784000245067
Cコード 0036
体裁 B6 ・ 並製 ・ 186頁
在庫 品切れ
東京―大阪間を約1時間で結ぶ,8割がトンネル・地下のリニア中央新幹線.この大規模なプロジェクトをどう見るか.東京湾横断道路,超音速機コンコルドなど国内外の巨大開発の成否を検証してきた著者が,採算性,安全性,環境の視点から疑問を提起.需要・工費の甘い見通しなどを具体的に指摘して,根本的な再検討を主張する.

■著者からのメッセージ

橋山 禮治郎

 2007年に突如JR東海が自己資金でつくると言い出したリニア中央新幹線.東京・大阪間を67分で結ぶという,世界にない超電導磁気浮上方式リニア鉄道である.レールも車輪もなく,全線の8割を深い地下と山岳下のトンネルを走る奇妙な鉄道だが,売り物は最高時速500キロのスピード.超電導技術で世界の鉄道革新を先導する,国民の高速化要求に応えると会社側は意気込んでいるが,国民の関心・理解は未だにきわめて低い.
 本計画が本当に国民や将来の日本に役立つだろうか.計画の目的・必要性と実現可能性を事前評価したのが本書である.戦後の公共プロジェクトでも,東海道新幹線や名神・東名高速道路のような成功例もあれば,東京湾横断道路,成田空港のような失敗例もある.
 筆者は正しい目的と確実な実現手段の双方があれば成功するが,そのどちらかに欠陥があれば必ず失敗するという実証的経験則に照らしてリニア中央新幹線の成否を検証している.世界初かつ最長のリニア地下高速鉄道だけに失敗は許されない.不確実な需要や安全性,三大都市圏偏重の国土利用など問題も多い.経済性,技術性,環境対応性の確保が不可欠である.
 海外ではリニアに対する関心は皆無で,ドイツも3年前に完全撤退した.民間主導の公益事業だが,計画決定権は政府にある.国民の幅広い議論,客観的な政策決定プロセス,誤りなき国家的政策判断が求められているのではないだろうか.
はじめに

第1章 リニア新幹線は夢か幻か
構想から計画へ
問われるべきこと

第2章 実現の条件,成功のカギ
結果で決まる成功と失敗
目的の妥当性と実現の可能性
実現を可能にする3条件

第3章 インフラ投資の成功と失敗
成功・失敗の背後に必ず原因あり
わが国の成功例・失敗例を検証する
海外の成功例・失敗例を検証する
過去の経験から学ぶ

第4章 リニア中央新幹線は成功するか
なぜつくるのか
実現可能性はあるか

第5章 いま何が求められているか
なぜ「リニア」か
どんな効果や成果が期待されているか
計画の再検討に向けて
リニア鉄道の導入は是か非か

あとがき
主な参考文献
橋山 禮治郎(はしやま れいじろう)
1940年静岡県生まれ.慶應義塾大学経済学部卒業.千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了.日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)調査部長,日本経済研究所専務理事,米アラバマ大学招聘講師,明星大学教授等を経て,現在,千葉商科大学大学院客員教授,アラバマ大学名誉教授.著書に『都市再生のニュー・フロンティア』(東洋経済新報社,1990年),論文に「ニュー・フロンティアとアジア」(1962年,日本外政学会賞受賞),「中央リニア新幹線は再考せよ」(「世界」2008年6月号),「リニア中央新幹線の必要性と問題点を考える」(「地域開発」2010年12月号)ほか.

書評情報

山梨日日新聞 2011年6月2日
週刊金曜日 2011年3月18日号
信濃毎日新聞(朝刊) 2011年2月13日
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