貧困都政

日本一豊かな自治体の現実

高層ビルが林立する世界都市,東京.その足元で生活が破壊されている.荒涼とする現場から報告する.

貧困都政
著者 永尾 俊彦
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2011/02/18
ISBN 9784000245074
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ 194頁
在庫 品切れ
数兆円に達する予算規模をもち,域内GDPは多くの先進国を上まわる「世界都市」,東京.1999年に誕生した石原都政は,オリンピック招致,新銀行設立,築地移転と耳目を引く施策を打ち上げてきた.だが,この大都会の足元で,貧困と格差が広がっている.奪われる命,削られる福祉,崩壊した家庭と職場――現場からの報告.

■編集部からのメッセージ

数兆円に達する予算規模をもち,域内GDPは多くの先進国を上まわる「世界都市」,東京.多くの大企業の本社などが集まり,その税収などで日本一豊かであるはずの東京都で「年越し派遣村」が現出したのは2008年の年末でした.老人ホームの火災で失われた命,身近な場所から消えていく都立病院,「トップダウン」の掛け声のもとで硬直していく都庁職員…….「勝ち組」と称されもする東京都のもうひとつの現実を,小社の月刊誌『世界』などで書きつづてきた永尾俊彦さんが,1999年から12年間にわたった石原都政の「晩年」にあたって報告します.
 本書のタイトルはすぐに決まりました.貧困や格差が放置され,異議を唱えようとする人を強圧的に押しつぶすような,そういう貧しい都政であっていいのだろうか,そんな問題意識がこめられています.
【編集部:熊谷伸一郎】

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五輪招致失敗,消えていく福祉・病院,増える餓死者,新銀行は破綻寸前…… こんな東京に誰がした? 東京の「失われた12年」を追う渾身のルポルタージュ
まえがき

第1章│福祉炎上
厄介払い/「たまゆら」が頼られる理由/「たまゆら」の人々/捨てられた姥を拾う「神様」/底辺の底辺の状態/「行政の貧困」

第2章│病院が消されていく
ダウン症の娘に育てられる/無形の財産/小児病院は命綱/民営化で患者中心の医療は可能か/裏切り

第3章│将軍様の銀行
「首くくってもおっつかない」責任/中小企業家の声を無視したマスタープラン/一般行員の夢と執行役の「底意」/ノーガードのボクシングのようなスコアリング/責任転嫁する元執行役/「仁司独裁」の謎/「真犯人」/乱脈経営と表裏一体の社内いじめ

第4章│オリンピック招致とは何だったのか
「オリンピックファシズム」/招致経費のごまかし/「オリンピックを買う」/御都合主義と欺瞞/オリンピズムと対極にある姿勢/「石原オリンピック」という破廉恥

第5章│築地市場は誰のものか
産地も消費者も守るせり制度/圧迫と命綱/「官製地上げ」/組合のねじれ/汚染を知りながら土地買収/「サカナなんかやんないでくれよ」/仲卸の統廃合と臨海開発のための移転/自分の首を締める仲卸の豊洲移転/生命の尊厳を脅かす行為/不公平な人選/知事も「ぶったまげた」追加調査結果/元東京ガス労働者の証言/平田健正座長に聞く/データ改ざんの疑い/科学を装い毒を食わせる論理/「液状化」と数々の隠蔽/「便所で握った寿司は食いたくねえ」

第6章│夜間中学からの抵抗
夜間学級の風景/中国人生徒の怒り/不起立「する」ということ/二重の抗議/夜間中学に通う人々と「国旗・国歌」/「盗人猛々しい」/差別・選別という「教育改革」/連なっていく杭

第7章│トップダウンに「自治の花」が咲くものか
石原都政のリアルとバーチャル/市民の知恵で地域の復興を/都民の声を耕す/品と格のある東京を

あとがき
永尾俊彦(ながお としひこ)
1957年,東京都生まれ.東京都在住.
毎日新聞記者を経て,現在,ルポライター.
著書に『干潟の民主主義』(現代書館,第7回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞受賞),『ルポ諫早の叫び』(岩波書店,第5回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞奨励賞受賞),『公共事業は変われるか』(岩波ブックレット)など

書評情報

週刊朝日 2011年5月27日号
読売新聞(夕刊) 2011年4月11日
徳島新聞(朝刊) 2011年4月3日
東京新聞(朝刊) 2011年3月6日
東京新聞(朝刊) 2011年2月23日
愛媛新聞 2011年4月10日
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