フィデル・カストロ (上)

みずから語る革命家人生

著名ジャーナリストとの一〇〇時間余におよぶ対話で語り尽くした,稀有な革命家の〈大河的人生〉.

フィデル・カストロ (上)
著者 イグナシオ・ラモネ , 伊高 浩昭
ジャンル 書籍 > 単行本 > 伝記
刊行日 2011/02/03
ISBN 9784000246590
Cコード 0023
体裁 四六 ・ 上製 ・ 442頁
在庫 品切れ
「歴史は私に無罪を証明するだろう」.革命家の誕生から,ゲバラとの運命的邂逅,キューバ革命の勝利,今日に至るアメリカとの長い苦闘の時代まで,歴史に残る貴重な発言を満載.国際政治の舞台に残る最後の〈聖なる怪物〉が,著名ジャーナリストとの100時間余におよぶ火花散る対話で語り尽くした,その〈大河的人生〉.

「はじめに――フィデルとの100時間」より

100時間を超えるインタビューの全過程を通じて,フィデルが質問に制限を設けたことは一度もない.(中略)フィデルは,私と事前に話し合っていたため,彼の友人や敵が作った,キューバ革命に対する非難,批判,留保についてまとめた長い一覧表のなかから,私があれもこれも質問したがっているのを知っていた.知識人であるがゆえに,論争を恐れない.それどころか,論争を必要とし,要求し奨励する.(中略)議論好きのフィデルは,教養あふれる恐るべき論客であり,彼に嫌悪感を抱くのは,悪意と憎悪の持ち主だけだろう.
 はじめに――フィデルとの100時間

第1章 ある指導者の幼少時代
 ビラーンの家/父アンヘル・カストロ/製糖集落/母リーナ・ルス/スペイン内戦/戦争と英雄と/幼年時代の思い出/サンティアゴでの〈搾取〉/マチャード時代

第2章 ある反逆者の鍛造
 女教師の家/洗礼/ラサール校/イエズス会士/授業嫌い/視学官/商人の家/ルーズヴェルトへの手紙

第3章 政治への参加
 エドゥアルド・チバース/バティスタ時代/ハバナ大学/権力抗争/カヨ・コンフィテス/ボゴタソ/マルクス主義/蜂起の着想

第4章 モンカダ兵営襲撃
 蜂起の準備/同志たち/ラウール/軍事訓練/経験の欠如/集結/武器/偽装/シボネイ小農場/作戦/決行/戦闘/退却/仲間の死

第5章 革命の来歴
 独立戦争/奴隷制度/シモン・ボリーバル/アントニオ・マセオ/対米併合主義/国旗の由来/ヘンリー・リーヴ/ホセ・マルティ/死と遺訓/思想と洞察/キリスト者
 第6章 「歴史は私に無罪を証明するだろう」
 捕虜/サリーア中尉/自己弁護/蜂起に成功していたら/革命と反逆の歴史

第7章 チェ・ゲバラ
 出会い/非正規戦争/メキシコでの逮捕/スターリンの過ち

第8章 マエストラ山脈で
 アレグリーア・デ・ピーオ/最初の勝利/喘息の発作/ウベーロの激戦/カミーロとチェ/髭面の由来/ゼネストの失敗/ラス・ビージャスでの合流/敵将の裏切り/ハバナ制圧/勝利の行軍

第9章 ゲリラの教訓
 非正規戦争/ゲリラの原則/テロ戦術/革命法廷

第10章 革命初期の過程と問題
 マヌエル・ウルティーア/分派行動/人民社会党/公開裁判/同性愛者/キリスト教/黒人差別/疎外の文化/女性差別/ピーターパン作戦/革命と司祭

第11章 陰謀の始まり
 農地改革/協同農場/外国人チェ/経済路線の対立/ラウールとチェ/破壊活動/暗殺の陰謀/ルイス・ポサーダ=カリレス/米国への期待

第12章 ヒロン浜侵攻事件
 社会主義宣言/捕虜の扱い/勝利こそ褒賞/「汚い戦争」/エスカンブライ/防衛体制/ケネディ

第13章 1962年10月危機
 核戦争の瀬戸際/海上封鎖/偵察機撃墜/往復書簡/ソ連の退廃/侵略の危機/米ソ相愛/自前の革命/ケネディ暗殺

第14章 チェ・ゲバラの死
 第三世界外交/米州版マーシャル計画/革命支援/性急だったチェ/アンゴラ遠征/「別れの手紙」/ボリビア遠征/レジス・ドブレ/有害な確執/崇高な模範

第15章 キューバとアフリカ
 アルジェリア/国際主義医師団派遣/アハメド・ベン・ベラ/アフリカ支援/コンゴ遠征/ポルトガル帝国解体/南アの核兵器/カルロータ作戦/ソ連との関係/段階的撤退/スンベの戦闘/撤退の中止/革命の命運をかけて/和平協定/隠された偉業/キューバ人2077人戦死/アンゴラの教訓
フィデル・カストロ=ルス(Fidel Castro Ruz)
1926年8月13日キューバ・オリエンテ州(現オルギン州)マヤリー市ビラーンに生まれる.45年9月ハバナ大学法学部入学.50年6月同大学を卒業し弁護士を開業.53年7月26日モンカダ兵営を襲撃し失敗,10月ピノス島の刑務所に収監される.55年恩赦で釈放されメキシコに亡命.56年11月25日メキシコの港をグランマ号で出航,12月2日キューバ島東部に上陸し革命戦争開始.59年元日革命戦争に勝利.反乱軍(国軍,後の革命軍)最高司令官に就任.2月26日首相に就任.61年4月16日社会主義革命を宣言.17-19日ヒロン浜で米傭兵部隊を撃破.63年社会主義革命統一党第1書記に就任.65年10月共産党発足とともに第1書記に就任.76年国家評議会議長(元首)兼閣僚評議会議長(首相)に就任.79年非同盟諸国首脳会議の議長に就任.95年12月初めて訪日,2003年3月2度目の訪日.06年7月26日腸内出血で倒れ,権限を実弟ラウール・カストロ副議長らに委譲.9月非同盟議長に再び就任するが,ラウールが代行.08年2月ラウールに正式に権限を委譲.11年4月16-19日開催予定の第6回共産党大会が第1書記として迎える最後の党大会になるもよう.

イグナシオ・ラモネ(Ignacio Ramonet)
1943年5月5日スペイン・ガリシア州ポンテベドゥラ県レドンデラに生まれる.内戦で敗れた共和派だった父が家族とともに48年モロッコのタンジュールに移住,ここで少年時代を過ごす.仏ボルドー大学を卒業しモロッコに戻るが,72年パリに移り,ジャーナリズムと映画評論を始める.パリの社会科学高等学院で文化史博士号を取得.パリのデニディデロー大学のコミュニケーション論教授を経て,パリ大ソルボンヌ校で教鞭を執る.90年から2008年まで月刊紙ルモンド・ディプロマティックおよび隔月刊誌マニエール・デ・ヴォワールの編集長を務めた.同紙に97年執筆掲載した一連の論説記事は,ATTAC(市民支援のため投機金融取引に課税する協会)の創設につながる.09年以後は同紙スペイン語版編集長.「世界社会フォーラム」(FSM)創設に貢献するなど,より良いもう一つの世界創造を目指す「アルテルムンディズモ」の旗頭の一人.著書多数.

訳:伊高浩昭(いだか ひろあき)
1943年東京生まれ.ジャーナリスト.元共同通信記者.67年からラテンアメリカ全域を取材.04年からNGOピースボート船上講師.05年から立教大学ラテンアメリカ研究所「現代ラ米情勢」担当講師.著書に『Cuba―砂糖キビのカーテン』,『キューバ変貌』,『ラ米取材帖』など.訳書に『フィデル・カストロ後のキューバ』,『ベネズエラ革命』など.
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