文化の「肖像」

ネットワーク型ミュージオロジーの試み

著者が試みてきたさまざまな実践をたどりながら,知の形成装置としてのミュージアムの新たな可能性を提示する.

文化の「肖像」
著者 吉田 憲司
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2013/04/23
ISBN 9784000246705
Cコード 0070
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 246頁
在庫 品切れ
いまミュージアムは,一方的に情報を発信するだけではなく,人びとが相互交流を重ねる中で,新たな文化と社会を構築するフォーラムである装置として見直されている.著者が試みてきたさまざまな実践をたどりながら,知の形成装置としてミュージアムの新たな可能性,ネットワーク型のミュージオロジーの可能性を提示する.

■著者からのメッセージ

フォーラムとしてのミュージアムとは,人びとがそこに集まり,未知なるものに出会い,そこから議論が始まっていく場所という意味である.その後時を経て,間違いなく,博物館は地球規模で,その方向へと大きく動き出している.1997年の「異文化へのまなざし」展から「アジアとヨーロッパの肖像」展へとつながる一連の作業は,このフォーラムとしてのミュージアムの実現の過程であったといってもよい.その実践をたどることで,知の形成装置としての博物館の新たな可能性,ネットワーク型のミュージオロジー(博物館学)の可能性を提示するのが本書の目的である.(本文より)

■編集部からのメッセージ

2008年,国立民族学博物館と国立国際美術館で同時開催された「Self and Other アジアとヨーロッパの肖像」展は,国際共同巡回展としてロンドンやフィリピンなど世界で開催される.筆者はその実現のため,政治の壁,文化の壁,組織の壁と向き合いながら,新たな時代のミュージアムのありかたを問い続けてゆくことになった.そこから見えてきたミュージアムの未来像を明らかにする.
はじめに

第1章 「異文化へのまなざし」展の挑戦
1 三つの「出来事」
2 展示の構想をめぐって
3 実現への試行錯誤
1 フォーラムとしての展示

第2章 「アジアとヨーロッパの肖像」
1 国際共同巡回展の実現へ向けて
2 肖像概念をめぐる葛藤
3 国内での最終準備
4 いくつかの挑戦
5 何が実現できたか――日本での展示を終えて
2 運動体としての展示

第3章 文明の転換点における博物館――文化をつくる装置の今
1 欧米の主要博物館の変貌
2 オリンピックと博物館
3 博物館収蔵品の返還の動き
4 無形遺産とミュージアム
5 文化の担い手と博物館との共同作業
6 自文化展示の動き――コミュニティと博物館
3 潮流

終 章 ネットワーク型ミュージオロジーの提唱

あとがきにかえて
参考文献
吉田 憲司(よしだ けんじ)
1955年京都市生.国立民族学博物館教授・総合研究大学院大学教授.京都大学文学部卒業,大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了,学術博士.大阪大学文学部助手,国立民族学博物館助手,同助教授を経て現職.著書に『文化の「発見」』(岩波書店,第22回サントリー学芸賞受賞,第1回木村重信民族藝術学会賞受賞),『仮面の森―アフリカ・チェワ社会における仮面結社,憑霊,邪術』(講談社,第5回日本アフリカ学会研究奨励賞受賞),『改訂新版 博物館概論』(編著,放送大学教育振興会)など多数.

書評情報

毎日新聞(朝刊) 2013年5月19日
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