ポール・ド・マン 言語の不可能性,倫理の可能性


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編集部だより
「読むこと」はできない。ゆえに、「読むこと」は倫理的である。

本書について

 「脱構築批評」を打ち立て,文学批評・哲学・思想の領域に深い影響を与えたポール・ド・マン(1919-83年).本書は,主著『読むことのアレゴリー』(1979年)を中心に,「比喩性」,「機械性」,「物質性」,そして「アレゴリー」という概念を読み解く試みである.「アレゴリー」――それは,「読むこと」はできない,という言語の逃れようのない本質を示している.この視点に立つとき,難解で知られるド・マンの理論は一貫性をもつものとして現れ,そこに「読むこと」の倫理が浮かび上がる.
 第一人者が書き下ろした本書は,ド・マンを主題にした日本人による初めての書物である.


目 次

はじめに

第Ⅰ章 比喩としての言語
はじめに/字義的解釈主義/「比喩的なもの」対「字義的なもの」(Ⅰ:アーチー・バンカー氏の苛立ち/Ⅱ:踊り子と舞踏をどうして切り離しえようか?)/言語の一般的比喩性/メタファー(隠喩)の優位性に抗して
第Ⅱ章 言語の指示性と機械性
二つの批評実践/フランス派記号論への批判/言語行為論への反論/「意図」という概念をめぐって/「機械」
第Ⅲ章 アレゴリーの諸相
アレゴリー/ド・マンによる定義/読みはすべて誤読とならざるをえない/アレゴリーとしての脱構築/「読むこと」を読むことは永遠に不可能である/ド・マンとデリダ
第Ⅳ章 歴史(学)という陥穽
統一的・完結的な歴史観を逃れて/ブルームの反−影響理論/ヒストリーからヒストリオグラフィへ/ド・マンの「歴史」認識/「出来事」の一回性・単独性/「出来事」と機械
第Ⅴ章 文字の物質性
美学イデオロギーに抗して/文字の散文的な物質性/イデオロギーの誘惑/「物質性」対「現象性」/アレゴリーとしての読むこと/自己正当化への懸念
第Ⅵ章 読むことの倫理に向けて
はじめに/倫理とは主体的な意志・意図の問題ではない/倫理とはすぐれて言語的な問題である/アレゴリーとしての倫理/言語分析から政治・イデオロギー分析へ/倫理と読むことの不可能性/ド・マンとナチ問題

文献一覧
あとがき
人名索引


著者紹介

土田知則(つちだ とものり)
1956年 長野県生まれ
1987年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学
現在,千葉大学文学部教授
[専門]フランス文学・文学理論
[著書]『現代文学理論――テクスト・読み・世界(共著,新曜社,1996年),『プルースト――反転するトポス(新曜社,1999年),『間テクスト性の戦略』(夏目書房,2000年),『文学理論のプラクティス――物語・アイデンティティ・越境(共著,新曜社,2001年),『狂気のディスクルス』(編著,夏目書房,2006年)ほか
[訳書]ショシャナ・フェルマン『狂気と文学的事象』(水声社,1993年),バーバラ・ジョンソン『詩的言語の脱構築――第二ボードレール革命(水声社,1997年),ジャン=ジョゼフ・グー『言語の金使い――文学と経済学におけるリアリズムの解体(新曜社,1998年),マーティン・マックィラン『ポール・ド・マンの思想』(新曜社,2002年),ジャック・デリダ『そのたびごとにただ一つ,世界の終焉』(共訳,岩波書店,2006年)『読むことのアレゴリー――ルソー,ニーチェ,リルケ,プルーストにおける比喩的言語(岩波書店,2012年)ほか




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